インバウンド地方誘客のカギは「食・自然・体験」、日本政府観光局の調査で市場別ニーズの違い鮮明に

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日本政府観光局(JNTO)は、世界22市場の旅行者を対象とした「VJ重点市場基礎調査(2024年)」の結果を公表した。この調査は、新たな訪日マーケティング戦略を策定する際に基礎データとして活用されたもの。2020年4月以降に航空機を利用した国外旅行の経験者(欧米豪などでは中長距離旅行者)が対象となっている。

同調査のなかから、「国外旅行の目的と訪日旅行で体験したい価値」「地方エリアの認知度・訪問意向・経験」「地方部滞在で求められる要素」に焦点を当て、各市場の傾向や今後の地方誘客へのヒントを読み解いた。

旅行の目的、上位はテーマパーク、ガストロノミー

国外への旅行の主目的と訪日旅行に求める価値 国外旅行の主な目的となるものを22市場全体で見ると、「テーマパーク」(36.4%)、「ガストロノミー・美食」(34.8%)、「アート鑑賞(美術館巡り等)」(34.6%)が上位を占めた。

しかし、市場エリア別に見るとその傾向は大きく異なる。東アジアおよび東南アジア地域では「ガストロノミー・美食」の選択率が高く、東アジアでは55.0%、東南アジアでも46.0%に達している。一方で、欧米豪・インド・中東地域では「アート鑑賞」(36.2%)や「ラグジュアリーホテル」(31.6%)が上位に挙がり、文化的な体験や上質な滞在環境への関心が高いことがうかがえる。

また、訪日旅行において「必ず体験したい価値」についても地域差が浮き彫りとなった。東アジアおよび東南アジア地域では、「豊かな自然風土に根ざした食文化を楽しむ」「古来から続く温泉・湯治を楽しむ」が多く選択された。特に「食文化」への関心は全地域共通で高く、欧米豪・インド・中東地域でも46.7%とトップとなっている。同地域ではそれに次いで「自然を楽しむアウトドア・アクティビティ」(35.0%)、「受け継がれる日本の信仰に触れる」(34.7%)などへの関心も高く、日本の自然・アウトドアや精神性への深い興味が示されている。

日本政府観光局「VJ重点市場基礎調査(2024年)」より

アジアで高い地方の認知度

次に、日本の三大都市(東京、大阪・京都)以外の「地方エリア」に対する認知度や訪問意向を見ていく。

東アジアおよび東南アジア地域では、地方エリアの認知度は総じて高く、台湾や中国では9割を超えている。特に北海道エリアの存在感が際立っており、東アジアで約6〜8割、東南アジアでも約5〜7割という極めて高い認知度を誇る。次いで、韓国や香港では九州エリア、台湾では沖縄エリアの認知度が高い。

訪問経験率についても、東アジア地域の3〜4割が北海道エリアを訪れたことがあると回答している。一方で、両地域ともに、中国・四国エリアの認知度や訪問意向・訪問経験は総じて低い結果となった。

一方、欧米豪・インド・中東地域では、東アジアなどに比べると日本の地方エリアの認知度自体がやや低く、6〜7割前後の市場が多い。国別に見ると、豪州や中東地域では北海道エリアの認知度が相対的に高く、インドや米国では中部エリアの認知度が比較的高い傾向にある。

欧州地域(英国、フランス、ドイツなど)では、北海道や沖縄に加えて関西エリアの訪問希望率が相対的に高い。ただし、同地域における実際の地方エリア訪問経験を見ると、北海道が突出しているわけではなく、関東エリアや中部エリアの訪問経験率が相対的に高くなっており、認知度・訪問意向と実際の訪問先にやや乖離が見られる。また、これらの地域でも関西以西の訪問経験率は低く留まっている。

日本政府観光局「VJ重点市場基礎調査(2024年)」より

地方へ足をのばす理由、求められる体験

訪日旅行者が都市部だけでなく地方部へ足を運ぶ理由についても調査している。結果によると、直近の訪日旅行で地方部に滞在した層、および都市部にのみ滞在した層のいずれにおいても、地方部への訪問理由(または今後の訪問理由)として「過去の訪日旅行で都市部を堪能でき、地方部も訪れてみたかった」という回答が最も多かった。旅行者が訪日回数を重ねる中で、滞在先を都市部から地方部へと広げていくという実態を裏付けている。

また、「過去に地方部で実施したこと(体験、食事等)が良かった」との回答も多く、一度の地方訪問における満足度が、その後のリピートに直結しているようだ。

「地方部だからこそ体験できると思うこと」については、地域ごとに求める価値観の違いが明確に表れた。東アジア・東南アジア地域では「ゆっくり過ごして日頃の生活で疲れた心身を癒やす」(東アジア40.9%、東南アジア32.9%)を選択した人が多かった。特に、東南アジアでは「その地やその季節でしか味わえないような旬な体験」(39.4%)への期待値も大きい。

対照的に、欧米豪・インド・中東地域では「その地の歴史や文化を深く知る」(44.7%)、「その地の人との交流を楽しむ」(44.3%)、「ディープな日本(地域に根付く生活様式)を味わう」(37.0%)といった項目が多く選択された。同地域の旅行者は、単なるリラクゼーションや観光を超えた、地域社会との繋がりや知的好奇心を満たす体験を地方部に求めているという結果になった。

日本政府観光局「VJ重点市場基礎調査(2024年)」より

日本政府観光局「VJ重点市場基礎調査(2024年)」(PDF)

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