来年始まる「ITB南北アメリカ版」、35か国を網羅した、新たな見本市開催を決めた理由を責任者に聞いてきた

2026年に新たに開催されることになった旅行・観光見本市「ITBアメリカス(ITB Americas)」の詳細が徐々に明らかになってきた。メッセ・ベルリンが2026年11月10日~12日にかけて、メキシコのグハリスコ州都・グアダラハラで開催するもので、欧州最大の観光産業見本市として長い実績を誇るベルリン国際ツーリズム・マーケット(ITBベルリン)の南北アメリカ(米州)版となる。

このほど来日したメッセ・ベルリンの旅行&ロジスティクス担当上級副社長・経営諮問委員会メンバー、デビッド・ルエツ氏(写真)に、開催を判断した理由やポテンシャル、ITBとしての考え方などを聞いてきた。

南北米州35か国をすべてカバー

メッセ・ベルリンでは、2008年にシンガポールで「ITBアジア」の開催をスタートしたのを皮切りに、アジア太平洋市場の開拓に力を入れてきた。現在は、中国とインドでも、それぞれのマーケットに特化したITBを開催している。ルエツ氏は「世界の観光産業の成長を牽引するアジアに注力してきたが、これがひと段落した今、次のマーケットとして南北アメリカに着目した」と話す。

もちろん米州でも、すでにUSトラベル・アソシエーションによる米国の「IPW」や、ブラジルの「WTMラテンアメリカ」など、有力な旅行見本市・会議は存在する。ただし、メッセ・ベルリンがおこなった市場調査からは、いずれも開催国の観光産業について発信することに重点が置かれているイベントであり、南北アメリカ全体を網羅したよりグローバルな観光イベントであれば、欧州の大手旅行会社などからの関心は高いことが分かった。また、出展企業についても、ITBベルリンには参加していないところが多く、商機はあると判断した。

「我々のITBの特徴の一つは、真に国際的な旅行見本市であること。パタゴニアからカナダまで、南北米州の35か国をすべてカバーする観光見本市・会議になる」と同氏は強調する。

これまで開催してきたITBと同様、開催地はローテーションしない方針だ。メキシコ第二の都市、グアダラハラを選んだ理由については、北米からも南米からもアクセスしやすいこと、物価が米国より手ごろであること、参加者が訪問ビザを取得する必要がないこと、交通渋滞がないことを挙げた。メッセ・ベルリンと比べても遜色ない規模と質の高さを持つコンベンション施設、「エクスポ・グアダラハラ」も決め手の一つだった。

前後に参加者向けのポスト・プレツアー

グアダラハラは「西部の真珠」とも呼ばれるハリスコ州の州都で、植民地時代からの歴史的建造物やテキーラの産地で知られる。太平洋岸のビーチリゾートへのアクセスも良く、欧州やアジアなど、米州外からやってくる参加者にとって、魅力的なデスティネーションであることから、ITBアメリカスの開催前後には、参加者向けのポスト・プレツアーも用意する考えだ。

ITBアメリカスの初回となる2026年の参加者については、全体の8割を南北米州、残り2割が欧州や日本などアジアからになると見込んでいる。「ITBアジアと同じく、まずは小さくスタートし、それから徐々にグローバルなイベントに育てていく」(ルエツ氏)方針。初開催時の参加者は、バイヤーとセラー、それぞれ500人ほどだったITBアジアだが、現在はビジター総数1万8500人の規模へと拡大、このうちアジア以外からの参加者は4割を占めている。

ITB開催において重視している原則として、ルエツ氏は「コンタクト」「コンテンツ」「コマース」の3つのCを挙げ、「まず、参加者どうしのつながりを促すために、様々なイベントを用意している。次に、観光・旅行産業にとって有益なコンテンツの提供。そしてB2Bへのフォーカスだ」。かつてITBベルリンでは、週末に一般消費者の入場を受け入れていたが、2019年以降、これをやめて参加者がビジネスに集中できる環境を優先している。

またカンファレンスのプログラムでは、参加企業のプレゼンテーションに終始する内容は避け、ITBの調査チームがまとめたレポートからの考察を充実させるなど、バイヤーに役立つ内容を提供することで、ライバルとの差別化を図っている。ITBアメリカスの参加料金は、他と同様、航空チケットやホテル、ランチを組み合わせた3段階で設定する。

一方、旅行マーケットにおける注目分野には、「テクノロジー」「LGBTQ」「ラグジュアリートラベル」の3つを挙げた。

このうちラグジュアリートラベルについて、自身の著作もあるルエツ氏は「快適なホテルに泊まるのがラグジュアリーではない。本物であること、パーソナルであること、セレンディピティがあること」と話し、今回の訪日では、自身が訪れた神奈川県にある小田原文化財団の江之浦測候所での「実に日本らしい、静謐な時間」を例に挙げた。

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