オーストラリア政府観光局、訪豪市場は2019年比99%に回復、2035年に観光消費7.8兆円へ、ATE2026で新戦略

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オーストラリア政府観光局(TA)は、アデレードで開催された観光産業B2B商談会「Australian Tourism Exchange(ATE)2026」で、訪豪インバウンド市場の最新動向と今後10年の成長戦略「Tourism 2035」を明らかにした。2026年1月にTA総局長に就任したロビン・マック氏(写真)は、記者会見で、訪豪市場がコロナ前の水準にほぼ回復していることを紹介するとともに、2035年に向けて高付加価値旅行者、航空供給、AI時代の情報接点、サステナビリティを重点領域に据える方針を説明した。

ATEは今回で46回目の開催となり、バイヤー(旅行会社)とセラー(観光事業者)の参加組織数で過去最大規模となった。4日間の会期中に、業界関係者による商談件数は5万5000件超に達する。TAは国内旅行ではなく、国際市場からの訪豪誘客に特化しており、今回のATEには世界32市場から代表者を招いた。マック氏は、TAの重点16市場にとどまらず、より広範な国・地域からオーストラリア観光への関心が高まっていることを強調した。

訪豪客数は年間910万人、消費額は6.3兆円

マック氏が示した最新統計では、2026年3月までの過去12カ月の訪豪客数は前年同期比10%増の910万人。これは2019年比で99%の水準に相当する。訪豪客による宿泊を伴う消費額は6.3兆円(560億豪ドル)で、前年比14%増。観光産業が生み出す雇用は、2025年12月四半期時点で73万6000人となり、前年比5%増加した。

訪問目的別では、レジャー目的の訪問者が前年比約10%増の710万人。市場別では、中国が前年比21%増、香港が同24%増と大きく伸びた。英国は、2025年に過去最高の実績を記録し、同19%増となった。日本は同9%増、ドイツは同8%増、カナダは同7%増など主要市場の多くで回復・成長基調が続いている。

訪豪市場にとって航空座席の供給量は、重要な前提となる。マック氏は、現時点の世界各地からのオーストラリアへの航空座席数について、2026年は季節変動や中東情勢による影響を受けながらも、暦年を通じて前年を上回る見通しだと説明。需要創出だけでなく、実際の来訪につなげる供給環境の確保が不可欠であるとの認識を示した。

中東情勢など不確実性への対応では、航空座席、消費者信頼感、業界の状況を継続的に把握し、市場ごとの活動を調整しているとした。マック氏は「データを見て、業界が何を経験しているか、航空座席がどこにあるか、消費者信頼感がどうなっているかを把握し、それに応じて市場での戦略や活動を適応させている」と語った。

「Come and Say G’day」動画は、世界で計7億4300万回再生

TAの需要喚起策では、グローバルキャンペーン「Come and Say G’day」が引き続き中核に位置づけられている。マック氏によると、世界各市場で配信された動画広告の総再生回数は7億4300万回に達した。各市場向けにローカライズした広告展開により、オーストラリアを「次に行きたい目的地」の候補に入れることを狙う。

マック氏は、消費者が常に複数の旅行先を比較検討しているとし、「旅行者は一度におよそ3つのデスティネーションを考えている。私たちは、そのトップ3にオーストラリアが入るようにしたい」と述べた。さらに、認知・憧れの醸成に加え、実際の予約につなげる転換施策の重要性を指摘した。

その柱となるのが、旅行会社向け教育プログラム「オージースペシャリスト・プログラム」だ。同プログラムの認定エージェント数は世界100カ国で4万人に達し、過去最高となった。直近12カ月で新たに7000人の認定エージェントが加わったほか、オンライン研修の修了コース数は初めて10万件に到達した。

マック氏は、自身も旅行会社でキャリアを始めた経験を踏まえ、「デスティネーションを実際に体験すれば、自信を持って販売できる」と述べ、エージェント教育と実地体験の重要性を強調した。TAは世界各地で対面研修も実施しており、その対象者は5万人に及ぶという。

また、オージースペシャリストをオーストラリアに招く「G’day Australia」は2026年10月にダーウィンで開催される予定で、約300人の参加枠に対し、900件の応募があった。マック氏は、この応募状況を「需要があることを示している」と説明した。

パートナー連携も重視する。TAは現在、24の航空会社、112の主要流通パートナーと協業している。パートナーにはオンライン旅行会社、リテール、ホールセールなどが含まれ、「Come and Say G’day」のブランドを各市場向けに統合・ローカライズし、消費者の予約行動に近い接点で訴求を強めている。


2035年に消費額7.8兆円へ

TAが新たに掲げる「Tourism 2035」では、今後10年のミッションとして「すべての旅行者が夢見る最初のデスティネーションであり、最終的に選ばれるデスティネーションになる」ことを掲げた。

対象とする旅行者について、マック氏は「高消費旅行者」と表現しつつ、それは富裕層だけを指すものではないと補足した。レジャー旅行者、ワーキングホリデー、ビジネスイベント参加者のそれぞれが、異なる形で観光経済に価値をもたらすためである。ワーキングホリデーは1日当たりの消費額は小さくても滞在期間が長く、ビジネスイベント参加者は滞在日数が短くても1泊当たり消費額が高い。

市場別の成長見通しでは、現在の主要市場が2028年時点でも大きな市場であり続けるとみており、中国、英国、米国、ニュージーランドが重要な位置を占める。一方で、ASEAN、インド、東南アジアにも充分な成長の機会があるとした。

航空面では、2035年の消費額目標に到達するため、世界各市場からオーストラリアに向けて国際線座席を440万席追加する必要があると試算した。マック氏は、24の航空会社との共同マーケティングを通じて、航空供給と需要転換の両面に取り組む考えを示した。

今後の重点領域としては、まず「人間と機械に向けたマーケティングで勝つ」ことを挙げた。AIの進化により、デスティネーションは消費者の心に残るだけでなく、検索やAI上の情報接点でも想起される必要がある。マック氏は「顧客の心をつかむ必要がある一方で、AIの進化に伴い、デスティネーションとしてトップ・オブ・マインドであり、検索でも上位にいる必要がある」と語った。

次に、食や飲料など、オーストラリアの幅広い魅力の訴求を強化する。来訪後に評価が高まる分野について、来訪前から認知させることが課題となる。さらに、2032年ブリスベン五輪・パラリンピックに向けた大型イベントの活用も重点となる。2027年のラグビーワールドカップ、T20クリケットなど、世界の注目が集まる機会を旅行意欲の喚起につなげる。

ラグジュアリー市場も重点領域となる。マック氏は、オーストラリアのラグジュアリーは独自性があるとし、「ラグジュアリー旅行者に何を約束するのか、より明確に、より的確に表現できる」と述べた。

2035年の見通しは、消費額7.8兆円(690億豪ドル)へ

「Green is our Gold」、責任ある旅行を業界全体の合言葉に

マック氏は最後に、TAが推進する「Green is our Gold」について説明した。これは、オーストラリアの観光産業が「責任ある旅行」を受け入れ、さらに前進させるための合言葉である。旅行者の選択において、サステナビリティや責任ある旅行が重要な要素になっているとの認識が背景にある。

マック氏は「人々は責任ある旅行、サステナビリティを求めている。それはデスティネーション選択の重要な要因だ」と述べた。開催地であるアデレードの会場についても、EarthCheckの認証や食品廃棄物管理の取り組みを例に挙げ、オーストラリアはこの領域で高い実践力を持つと説明した。

「Green is our Gold」は、まず業界向けに展開されており、事業者が参画し、取り組みをさらに進めるためのツールキットも用意されている。TAは業界団体やネットワークと連携し、既存事業者だけでなく、新たに取り組みを始める事業者も支援していく。

今後は、世界の旅行会社やパートナーに向けた展開にもつなげる。旅行者に対しては、地域社会を称えること、文化を受け入れること、場所を守ること、野生動物を尊重することを来訪時の行動原則として訴求する方針である。マック氏は、この取り組みについて「デスティネーションとしてオーストラリアを差別化する助けになる」と述べた。

訪豪市場は量的回復から、より高い消費と持続可能な成長を目指す段階に移りつつある。ATE2026で示されたTAの戦略は、航空供給、旅行会社教育、AI時代の検索・情報接点、大型イベント、ラグジュアリー、そして責任ある旅行を組み合わせ、2035年に向けてオーストラリア観光の競争力を高めるものとなる。

※豪ドル・円換算は、1豪ドル=113円でトラベルボイス編集部が算出

取材・文: 鶴本浩司

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