ホテルや旅館が直面している人手不足。多言語対応が可能な人材の確保は、特に困難を極めている。これを補おうと、最新のAIやテクノロジーを駆使した多様なサービスが開発されているが、コニカミノルタは新しい観点で多言語通訳サービス「KOTOBAL」(コトバル)を開発した。宿泊業のスタッフが言語の壁を感じずに安心して接客ができるようにする、いわば、人のおもてなしを最大化する“エンパワーメント”を目的にしたものだ。
KOTOBALを導入した「ANAホリデイ・イン東京ベイ」では、少人数運営への寄与に加え、ゲストの満足度向上を実感しているという。KOTOBALとはどのようなサービスか。コニカミノルタと同ホテルに話を聞いてきた。
翻訳ツールに留まらない、人の接客対応をいかすためのサービス
KOTOBALは、コニカミノルタが開発したAI活用の多言語通訳サービスだ。光学機器や複合機などハードウエア開発のイメージが強い同社だが、最新テクノロジーで社会課題の解決を目指す事業部で、KOTOBALを含む4つのAI SaaSソリューションを提供している。なかでも多言語通訳サービスの実績は長く、2016年から医療機関向けに提供を開始。その運用技術やノウハウを応用し、自治体や宿泊施設向けのKOTOBALを開発した。現在、対応言語は英語、中国語、韓国語を含む33言語にのぼる。
KOTOBALのプロダクトプランナーであるコニカミノルタの中村祥子氏は、この事業について「AIで人を支え、社会課題を解決することを目的に、自社技術にこだわらず、他社の技術や知見を取り入れたサービス開発に取り組んでいる」と説明する。KOTOBALの開発では「宿泊施設のスタッフが、どんなゲストに対しても安心して接客できる環境を提供すること」を使命に掲げたという。
AIの進化に伴い、スマートフォンで手軽に使える翻訳サービスは増えた。しかし、宿泊施設の接客で求められるのは、おもてなしを邪魔しないシームレスなコミュニケーションだ。「ゲストとスタッフの双方が、お互いの話す内容をリアルタイムで把握でき、その場でスムーズに意思疎通できる体験を実現した」(中村氏)。
KOTOBALではゲスト側に透明ディスプレイを用意。タブレットに代えて使用することも可能翻訳内容は、タブレットに加え、宿泊施設のフロントになじみやすい透明ディスプレイに映し出される。ゲストが話した音声がAI翻訳され、即時に日本語でスタッフ側のタブレット画面に表示される。スタッフは日本語で発話すれば、その翻訳内容がゲスト側のディスプレイ画面に表示される仕組みだ。
やり取りが双方のディスプレイ画面に連動して映し出されるので、会話の流れを振り返りながら話をすることもできる。ゲストにとっては、ディスプレイ越しにスタッフと視線をあわせて会話することでコミュニケーションの実感が得られ、接客側もゲストの表情や反応を見ながら対応できる点が、大きな特徴だ。
さらに、2026年2月には、固定電話での通話を文字化するKOTOBAL AI電話通訳サービスも開始した。外国語でかかってきた通話音声を、即時に日本語に訳してPCのモニターやタブレットの画面に文字で表示するサービスだ。スタッフが日本語を話せば、即時に相手の言語に翻訳されて画面上に表示される。それをスタッフが、相手の言語で読み上げることで、円滑な電話応答ができるのだ。
「宿泊施設に話を聞くと、真っ先にあがる要望が『固定電話にかかってくる海外ゲストへのスムーズな対応』だった。この課題を、何とかしなければと考えた」と、中村氏は説明する。
コニカミノルタジャパン ICW事業統括部 KOTOBALプロダクトプランナー 中村祥子氏
訪日インバウンド80%、少人数運営を支える「安心感」
KOTOBALを導入したANAホリデイ・イン東京ベイは、2025年4月に開業した132室のホテルだ。天王洲アイル駅に直結し、羽田空港やお台場へのアクセスも良く、客室からは東京湾を眺望できる。IHGホテルズ&リゾーツのブランドの一員として世界中からゲストが集まり、インバウンド比率は80%を超える。特に米国からの宿泊客が最も多く、国内宿泊客の約2倍に達していることから、多言語対応は必須だ。
しかし、多言語対応ができるホテル人材の確保は困難を極めている。同ホテル宿泊部支配人の今木重光氏は「募集をかけても、必要な人材が集まらない。英語に苦手意識のあるスタッフにも躊躇せず、自信をもって活躍してもらうためにも、何らかのソリューションが必要だった」と説明する。
そこで、同系列の「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」で利用実績のあったKOTOBALを導入した。
その結果、「導入は大成功だった」と今木氏は喜ぶ。「当ホテルのフロントは、基本的に2人体制。言語対応で別のスタッフがサポートに入ると、お客様をお待たせする時間が増え、フロント機能が一時的に止まる。KOTOBALによってこの事態を回避できるようになり、お客様への印象は良くなったはずだ」(今木氏)。
現場の評判も良い。フロントのリーダーとしてKOTOBALの使用を推進する竹原昂弥氏は「スタッフが英語対応で、1人で完結できるメリットは大きい。他のスタッフの手を借りずに対応ができ、かつ対応時間も短くなるため、業務効率化にもつながっている」と話す。加えて「互いに不慣れな英語でのやり取りの場合、不安が残ることもあったが、KOTOBALは33言語対応なので、その不安は解消された。ゲストから『言語が通じて良かった』と喜ばれることが増えた」と、手ごたえを感じている。
ANAホリデイ・イン東京ベイ 宿泊部支配人 今木重光氏
固定電話へのAI電話通訳サービスが求められる理由
同ホテルは、KOTOBALの固定電話向けAI電話通訳サービスの最初のユーザーでもある。約2カ月の実証テストに協力し、現場視点でフィードバックなどもおこなった。
コニカミノルタが開発で心掛けたのは、導入も使用も簡単であること。導入は、固定電話とPCの間にアダプターを設置するだけ、作業は数分程度で完了し、すぐに利用できる仕様とした。利用時は、入電後にブラウザを立ち上げるだけで翻訳サービスが稼働する。「対面ではボディランゲージも使えるので、言葉の壁があってもなんとか対応できるが、電話は音声のみなので本当に苦労する。独特のなまりがあると、英語が得意なスタッフでも聞き取りが難しいことも多い。KOTOBALを使うことで、スムーズに要望を理解することができるので、コミュニケーション展開の糸口につながる。そういう意味で、欠かせないツールになっている」(竹原氏)。
AI電話通訳サービスでは、PC画面に通話内容をテキストで表示。日本語で回答を入力すると同時にその英語訳も表示される現在、AI電話通訳サービスの対応言語は英語のみだが、大きな戦力となっている。今木氏は、こんなエピソードを明かしてくれた。「実証テストの終了後、一時期、サービスを撤収した期間があった。それだけで心細く、サービスのありがたみを実感したスタッフが多かった。サービスがあるのとないのでは、電話を受ける心構えが全く違うようだ」。
コニカミノルタの中村氏は「ウェブにも固定電話にも通じるサービスは意外と少ない。実現させるため、固定電話に詳しい事業者を探し、共同でサービスを開発した」と話す。そして、「今後もホテルの固定電話にかかってくる電話は一定数あり、ゼロにはならないと思う」と見ている。
会話を「見える化」する力、データの活用にも期待
同ホテルの竹原氏は、KOTOBALの対面と電話の両サービスに共通する利点として「会話の“見える化”による安心感」をあげた。「相手の話が視認できれば、会話をしながら回答を準備でき、対応に余裕が生まれるので、心のゆとりができ、ストレス軽減にもつながっている。加えて、会話のテキスト履歴が記録として残せるので“言った言わない”のトラブル対処がしやすくなる」(竹原氏)。
ANAホリデイ・イン東京ベイ 宿泊部スーパーバイザー 竹原昂弥氏今木氏は、会話の履歴の活用を視野に入れている。「やりとりの多い会話の内容や適切な対応の例を、新人研修の材料にすることもできるのではないか」。さらに、人材確保の面でもプラスの効果を期待する。ホテルの現場では、外国語対応へのストレスが、離職につながるケースもあるからだ。
「インバウンドが増え続けるなか、これからは今まで以上にKOTOBALを使いこなすことが不可欠。ホテル滞在を楽しんでもらうためのコミュニケーションなど、積極的に活用したい。また、KOTOBALの利用を通じ、スタッフの語学力や接客力が向上することも期待している」と、今木氏は話す。
コニカミノルタもKOTOBALに限らず、宿泊施設の課題解決に貢献するサービス開発を強化する方針だ。中村氏は「訪日インバウンドの増加とともに、環境もニーズも変化している。これからも新しい価値を市場に問い、観光産業の一員として、各事業者のパートナーとなっていきたい」と力を込めた。
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問い合わせ:コニカミノルタジャパン株式会社 KOTOBAL事務局
- 問い合わせフォーム
- Eメール kotobal_info@konicaminolta.com
記事:トラベルボイス企画部




