国土交通省は、「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会」で議論されてきた成田空港の将来像と具体的な施設整備の方向性を示す「最終とりまとめ」を公表した。現在進められている滑走路の新増設等に伴う年間発着容量50万回への拡大を見据え、旅客取扱施設、貨物取扱施設、および鉄道アクセスの抜本的な機能強化に向けた全体像が示された。
検討会は、日本の国際競争力の確保と国際ハブ空港としての成田空港の競争力の維持・強化を進めていくため、今後の成田空港の施設面での機能強化について、学識経験者や関係事業者などと検討してきた。以下に最終とりまとめの内容を整理した。
年間発着50万回時代に向けた最終とりまとめ
成田空港は現在、B滑走路の延伸およびC滑走路の新設を柱とする「更なる機能強化」事業が進められている。これが実現すると、年間発着容量が現在の34万回から50万回へと飛躍的に増加する。これに伴い、50万回時には年間旅客数が7500万人(2025年度実績は4077万人)、貨物取扱量が300万トン(同194万トン)に達すると予測されている。
一方で、既存施設のままではこの膨大な需要増に対応できず、特に鉄道アクセスにおいては2030年代に主要路線のピーク時混雑率が150%を超えるなど、深刻な容量不足が懸念されていた。
この事態を受け、国土交通省は2024年9月に学識経験者、航空事業者、鉄道事業者、空港会社、関係自治体等からなる検討会を設置。2025年6月の「中間とりまとめ」を経て、関係機関での協議を深め、今回「最終とりまとめ」に至った。
この最終とりまとめは、成田空港が国際競争力を有する東アジアのハブ空港として地位を確立するため、ハード・ソフト両面での段階的な整備方針を示したもの。2026年度以降から本格化するマスタープラン策定に向けた重要な指針としての位置づけを持つ。
集約ワンターミナル化と滞在価値の最大化
旅客取扱施設については、現在の複数ターミナル体制から、「集約ワンターミナル方式」による新施設の整備を目指す方針が明確に打ち出された。段階的な移行を想定しており、2030年代に予定される「ステップ1」では新ターミナルの一部供用を開始し、既存の第1~第3ターミナルも活用しながら一体的かつ柔軟な運用をおこなう。
新ターミナルは、航空旅客の通過点ではなく、商業施設、オフィスなどの都市機能を持たせた空間とする。これは成田空港周辺地域を巻き込んだ新たな都市圏構想「SORATO NRT(ソラトナリタ)エアポートシティ」の連携拠点として機能し、インバウンド旅客にとって日本のローカル文化を体感できる質の高い滞在空間を提供する。
また、世界最高水準の乗継利便性を確保するため、新旧ターミナル間および新ターミナル内にAPM(自動旅客輸送システム)などの新たなモビリティの導入を検討する。さらに、「Face Express」による顔認証技術の拡充や自動手荷物預け機の導入など、DX推進による手続きのシームレス化と生産性向上も図る。
羽田空港直通を見据えた鉄道アクセスの改革
発着容量拡大によるアクセス需要の急増に対応するため、鉄道網の強化も大きな柱となっている。成田スカイアクセス線を高架・複線化し、現在の東成田駅付近に「高架新駅」を整備して新ターミナルと直結させる方向性が示された。同時に、JR線についても、既存の京成線を改軌する形で空港第2ビル駅〜成田空港駅間の複線化とホーム増強をおこなう。空港敷地外でも、京成線・JR線それぞれの単線区間の複線化や、印旛日本医大駅〜新鎌ヶ谷駅間における有料特急専用の新線整備(複々線化)が進められる予定だ。
都心および羽田空港方面へのアクセス向上策としては、京成電鉄が新たに導入する「新型有料特急」の計画が明記された。第1フェーズとして2028年度に押上駅への乗り入れを開始する。さらに第2フェーズとして、技術的・運用的な課題(ホームドア規格や車両規格の整合等)の解決を前提に、2030年代には京急線品川駅、さらには羽田空港第1・第2ターミナル駅までの直通運転の実現を目指すとしている。
道路アクセスに関しても、圏央道等との接続強化や、空港構内道路の分岐や信号を減らした一方通行の周回道路への再編がおこなわれる。
今後は、国、成田空港会社、航空・鉄道事業者、地元自治体などの関係機関が連携し、2026年度からのマスタープラン策定を経て、2030年代の各施設供用開始に向けた動きが本格化していく。

