総務省が創設を目指す、ふるさと住民登録制度の社会実装を支援する目的で2025年9月に設立された「ふるさと住民応援コンソーシアム」は、同制度ならびに地域居住をテーマとした「首長サミット2026」を開催した。サミットには、全国から「ふるさと住民登録制度」に積極的な26自治体の首長が参加。先行する地域の事例や課題感を共有した。
同コンソーシアム代表の鳥海彩氏(楽天グループ コマース&マーケティングカンパニー地方創生事業 ヴァイスマネージャー)は「2050年には約半分の自治体で人口が半減するとも言われている。定住・移住人口だけではなく、関係人口こそが地域の支える第2の住民になりえる。コンソーシアムは会員の知見やリソースなどを通じて、持続可能な地域を生み出していく」と挨拶した。
コンソーシアムに参画する京都府京丹後市の中山泰市長は「日本の地方創生にとって欠かせないのは何と言っても『人』。人の活動をどう確保していくかが大切になってくる。志のある民間企業とタッグを組みながら、官民公民の力を合わせて、関係人口を生み出す『ふるさと住民登録制度』を開拓し、広げていく取り組みはとても重要」と強調した。
「首長サミット2026 LG30」には26自治体の首長が参加
首長サミットでは、総務省が進める「ふるさと住民登録制度モデル事業」に取り組む北海道上士幌町、山梨県小菅村、徳島県鳴門市が、その進捗と事例を発表した。いずれも既存の関係人口施策や地域外人材とのつながりを生かし、来訪者を継続的に地域に関わる「担い手」へとつなげようとしている。一方、具体的な仕組みは、それぞれの地域課題やこれまでの取り組みに応じて異なる。
北海道上士幌町:楽天との連携で接点づくり
上士幌(かみしほろ)町では、人口が2030年までに4400人まで減少すると推計されているなか、農業や観光をはじめとした地域産業で担い手活動の不足や繁忙期の人手確保が課題となっている。
そのなかで、二地域居住者など移住の一歩手前にいる人や、町外の応援人口との継続的な関係づくりに向けて、顔の見える関係を構築する仕組みとして「ふるさと住民登録制度」を活用していく方針だ。
制度の活用に向けては、地域ポータルサイト「かみしほろスマートPASS」や楽天の「集まれ! 未来のふるさと住民」ページを整備し、町との接点づくりを開始した。現在、担い手活動「ほろ活」を11件、「ほろ活」に参加しやすくする「ほろ活サポート」を5件掲載している。
また、制度を広げる目的で、4月から町内商工事業者196社、農家135戸、宿泊施設11軒に対してヒアリングやアンケートを行い、地域の受入態勢づくりを進めている。
7月1日からは、担い手活動の受付を開始した。また、住民登録制度専用のInstagramを開設し、サミット開催時点で登録者数は69人、首都圏を中心にした広告配信では約10万5000人にリーチしていることから、今後も登録者数は増加すると見込んできる。
今後の展開としては、11月から始まる楽天市場の特設ページ「集まれ! 未来のふるさと住民」第2タームに向けて、楽天トラベルクーポンの拡充や交通支援施策など掲載コンテンツを拡充させていく。このほか、上士幌町独自の特設サイトやInstagramなどのSNS に加えて、首都圏でのリアルイベントでのPR活動を通じて認知度の向上を図っていく計画だ。
山梨県小菅村:「未来型共生モデル」を構築
人口620人、高齢化率40%超の山梨県小菅村は、 住む人だけではなく、関わる人や訪れる人とともに村をつくっていく「未来型共生モデル」の構築を推進している。
その取り組みの一つが関係人口を「2分の1村民」として登録する「こすげ村人ポイントカード」事業。現在、2分の1村民は4500人になっている。この基盤を「ふるさと住民登録制度」のプレミアム制度登録と連動させることで、「担い手として動く」関係へと進化させていく考えだ。
2026年度には、企業の森を再整備する森林整備ボランティア、地元クラフトビール会社の新商品製造を支援するボランティア、伝統芸能の継承を支える神楽祭典のボランティア支援を試行した。特徴は、実施主体をそれぞれ地域団体や事業者に置き、役場は運営のサポートに回る設計にしたことだ。この結果、2分の1村民の全体の10%に当たる473人が年6回以上、来村した。
今後については、3つの試行イベントで参加者データを蓄積していく。並行して、プレミアム登録と村民ポイントカードのインセンティブを連動させる設計を進め、2027年度には担い手活動の認定、制度化、体系化を目指す。
また、国に対して、外部の地域おこし協力隊制度とは別枠で、地域内でコーディネーターとなる人材育成を支援するプログラムや財政的な枠組みの検討を要望した。
徳島県鳴門市:おてつたびとの連携で持続的な関係人口を
徳島県鳴門市も、人口減少、若者の流出、担い手不足という共通の課題を抱える。2025年の人口はピークだった1995年比で22%減、生産年齢人口はさらに大きく33%減。加えて、0歳から14歳の人口は44%減と減少に歯止めがかかっていない。
そうした背景のもと、人材マッチングサービス「おてつたび」との連携を2024年7月から開始。農業を中心に観光、福祉、食品製造などで人材を受け入れている。また、移住起業アカデミー「NARUTO BOOT CAMP」を立ち上げ、スタートアップの誘致も進めている。
3年間で、その参加者は延べ127人。全国から幅広い層が参加した。応募数は募集数の5倍を超えていることから、来訪が叶わなかった応募者との関係構築が課題になっているという。延べ活動日数は1933日。約2週間の滞在で受入先との交流や経済効果が生み出され、おてつたび参加者による移住起業につながった例もある。
一方で、参加者の受け入れには、市が宿舎の準備やオリエンテーション、送迎、滞在中のフォローなどを担っていることから、受け入れを拡大していくには限界もある。民間事業者との協力体制の構築や新たな滞在拠点の整備に課題があるという。
また、「ふるさと住民登録制度」の運用開始後、自治体間で過度のサポート施策競争になる可能性について懸念を示した。




