首都圏空港の機能強化で中間とりまとめ、再検証で羽田・成田ともに増枠可能に

2013年11月1日以降、2014年6月6日まで計5回にわたって首都圏空港の機能強化についての議論を重ねてきた「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」は、このほど2020年東京オリンピック・パラリンピック、さらにはその先を見据えた羽田・成田両空港の空港処理能力拡大方策について、技術的な選択肢の中間取りまとめを行った。



▼羽田空港、運用再検証で年間3.9万回の発着枠増加が可能

オリンピック後は滑走路増設の案も

羽田空港について、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに実現できる方策として、既存の滑走路処理能力の再検証を提示。現在の滑走路運用および飛行経路においても、最大時間値83回を確保することが可能とした(現在の時間値は80回)。

また、特定時間帯(6:00〜8:30の到着、20:30〜23:00の出発)での未使用回数が少ないため、その活用についても検討する必要性を指摘した。しかし、相手国の時間帯の関係や外航の場合には羽田の駐機時間が長くなることなどから、出発・到着とも特定時間帯を活用するダイヤの設定は実用性に乏しいとした。

一方、到着または出発一方のみを特定時間帯で運航する場合ついては、到着では北米および東アジアを除き利便性の高くなり、また出発では北米およびオセアニアで利便性が高くなると報告。いずれの場合も、特定時間帯の活用には、隣接する昼間時間帯に利用できる枠の確保が必要とした。

このほか、滑走路運用・飛行経路の見直しでは、北風時の出発経路見直しによって、北風時および南風時の出発機数を増加させることが可能となり、出発・到着機数の組み合わせが増加する。

こうした取り組みを通じて新たに創出される発着枠については、滑走路処理能力の再検証の拡大効果で約1.3 万回/年(約35回/日)、滑走路運用・飛行経路の見直しによる拡大効果で約2.6万回/年(約72回/日)、合計3.9万回/年の増加が可能と試算。この拡大が実現するためには、対応する駐機場やターミナルビルなど地上施設の整備が必要になるとの見解を示している。

2020年東京オリンピック・パラリンピック以降の方策としては、滑走路増設案を報告した。


▼成田空港、管制機能の高度化などで増枠が可能

オリンピック後はB滑走路の延長も

成田空港については、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに実現しうる方策として、2014年度から、より高い精度での航空機監視が可能になるWAN(管制機能の高度化に必要な監視装置)の導入によって、最大時間値68回が可能になったことを明らかにした。また、A・B滑走路で高速離脱誘導路を整備することで、滑走路占有時間の短縮が可能となり、WANの導入と合わせると、最大時間値72回も可能とした。同時に、その場合には、駐機場の増設、固定駐機場を備えたターミナルビルの整備が必要との見解も示している。

また、地域との合意形成が前提となるが、カーフュー時間帯の短縮や22時台の便数制限の緩和も空港処理能力の拡大策のひとつとして挙げた。2020年東京オリンピック・パラリンピック以降の方策としては、B滑走路の延長を加えている。


▼首都圏空港を最大限有効活用するために各種案を提示

国内線枠を国際線枠に振替、羽田国内路線の成田への移管なども

このほか、両空港を最大限有効活用するための方策として、発着枠の使用方法の見直しについても言及。日系航空会社が使用している一部の国内線発着枠の国際線発着枠への振替、羽田の国内路線の成田への移管をその方法として提示した。しかし、国際線発着枠の設定については、相手国との関係で、回収した執着枠を相手国にも配分する必要があり、羽田の国内路線、特に便数の少ない地方路線については、航空会社や地元の理解を得る必要があると指摘している。

さらに、羽田の発着枠の使用方法の見直しでは、航空会社による自発的な成田への移管を促すためのインセンティブの付与(スロットの競売など)にも触れているが、発着枠の財産権的位置づけ、二次売買の扱い、資金力のある航空会社による発着枠の独占・寡占や入札コストの運賃転嫁の可能性などの課題もあると指摘している。

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