ユニークベニューを仲介する新しいMICEビジネス、重松CEO「平日の結婚式場はガラガラ」

有休スペースの有効活用を提案

「スペースマーケット」社CEO重松氏

「そうだ、古民家で会議しよう」———。ユニークなスペースの貸し借りをマッチングさせ、これまでにないイベントの開催をサポートとしているスペースマーケット社。旅行業界では常識のMICEやユニークベニューという概念も「あとから知りました」と代表取締役CEOの重松大輔氏(右写真)は話す。しかし、結果的に国内や訪日のMICE市場にもつながるビジネスとなった。スペースマーケットが見据える将来とは?

▼発想の原点は場所の力とスペースの有効活用

「平日の結婚式場はガラガラ。もったいないなあと感じましたね」

スペースマーケット、サイトのトップ画面

スペースマーケットの発想は、重松氏が大手通信会社を経てイベント写真のオンライン販売を手がけるフォトクリエイトに参画したときに生まれた。「年間4万件あまりに携わっていましたが、東京マラソンなどユニークな場所の写真はよく売れたんです。場所の持つ力を感じましたね」と振り返る。

その後、ウェディング事業にも進出。結婚式の写真をネット販売するビジネスをゼロから立ち上げたとき、「平日の結婚式場はガラガラ。もったいないなあと感じましたね。このスペースを有効活用できる方法はないものか」と思い至る。場所の力とスペースの有効活用、この2つの着想が、有休スペースを持っている法人とそれを探している法人とをマッチングさせるスペースマーケットを造り上げた。

2014年1月8日に会社を設立。4月には100スペースを集めてサイトをローンチした。最初は、オフィスの空きスペースの流通を考えたが、「あまりおもしろくない」(重松氏)。ユニークな宿泊を提案するAirbnb(エア・ビー・アンド・ビー)も、旅館業法など規制が多い。先行する競合他社との差別化を図るため、ユニークベニューを思いついた。日本にそうしたベニューを検索するサイトがなかったのもひとつの理由だ。

▼ユニークベニューで楽しさや驚きも提案

「平日の活用方法を提案すると『その手があったか!』と喜んでくれました」

WS000211現在、サイトで紹介している物件には、古民家、映画館、お化け屋敷、野球場、寺、相撲部屋など、これまでイベントスペースとしては認知されていなかったベニューが並び、それがスペースマーケットの強みにもなっている。MICEが盛んな海外では、城、テーマパーク、美術館、歴史的遺産などをイベントスペースとして使用するケースも多いが、日本ではまだ「楽しさや驚き」を場所に求める発想は少ない。

立ち上げ時は営業をかけて有休スペースを獲得した。「銀座のカラオケなども夜の7時以降でないとなかなか埋まらない。こちらから平日の活用方法を提案すると『その手があったか!』と喜んでくれました」。最近では貸主から売り込みも来るようになったという。スペースマーケットは、貸し借りのビジネスを展開することで、ユニークベニューという概念の認知度向上にも貢献している。

「貸し」が増えるとともに、「借り」でも実績を重ねている。たとえば、食材の宅配ネットスーパー『オイシックス』は増上寺を貸し切って社員総会を開催。また、ソーシャル旅行サービスの『トリッピース』は鎌倉の古民家で経営会議を開いた。現在提供しているスペースのキャパシティーは最大300名から最小10名ほどと幅広い。利用者はネット系の会社が多いという。

▼ビジネスモデルは成約手数料、コミッション率は平均25% ―多言語展開、自治体との連携など新たなチャレンジへ

スペースマーケットは、成約ごとに貸主からコミッションを受け取るビジネスモデルで事業を展開している。コミッション率は20〜40%、平均25%ほど。貸し出すスペースの利用頻度、希少性、ネームバリューなどによってコミッション率は変わってくる。

借り主は、スペースマーケットで望みの場所の空き状況を確認した上で申し込み。貸主が利用審査を行ったのち、借り主はスペースマーケットに料金を支払い、その後スペースマーケットは、コミッションと決済手数料を除いた利用額を貸主に支払う。貸主の掲載料は一切かからない。基本的に掲載内容の編集はスペースマーケットが行う。クレーム処理については原則的にはオーナー(貸主)とカスタマー(借り主)とのやりとりだが、スペースマーケットもケースによっては介在していく方針だ。


IMG_5774現在掲載されているスペースは東京あるいはその近郊が中心だ。「今後は、大阪、名古屋、京都などにも広げていきたい」と重松氏。東京でも歴史的建造物などの有効活用で苦労していることから、「自治体とうまく組んでやっていければ」と話す。

また、国も観光政策のひとつとして海外からのMICE誘致に積極的に取り組んでいることから、多言語化も視野に入れる。「訪日MICEの入口になれればと思っている。ユニークベニューを紹介して、旅行会社などのMICEパートナーに橋渡しができればおもしろい」と意欲的だ。


さらに、ユニークベニューはMICEのなかでもEに親和性が高いことから、広告代理店などともパートナーを組み、ベニューからイベントのアイデアなどを提案していくビジネスも考えている。「コンシュルジュ的なサービスですね。しかし、あまりイベントの内容に足を突っ込み過ぎないようにする。そこはやはりイベント会社の仕事ですから」。

餅は餅屋。スペースマーケットの餅はユニークベニュー。「これからもおもしろいと思ったところにアプローチをかけて行きたいですね。エッジの効いたベニューはまだまだある」。たとえば、国宝の古城を借りて「お城で経営会議」といった奇想天外なコンセプトも現在進行中だ。

▼目標は3年で5000スペースへ ―ベニューの視点から「記憶に残るイベント」を

event upサイト

日本には、変わったウェディングを紹介する『クレイジーウェデイング』、小スペースを仲介する『軒先.com』、貸し会議室やパーティー会場を仲介する『TKP』など、スペースマーケットと重なる先行ビジネスがある。

なかでも、重松氏がこのビジネスを立ち上げるにあたって参考にしたのはアメリカの『eventup』というサイト。立ち上げ2年で5,000スペースを確保し、月5億円の流通を実現させているという。「3 年でこのボリュームまで持って行きたいですね」と重松氏は今後の展望を話す。「そうなれば、広告モデルも可能になるだろうし、ビジネスがさらに広がる」。ベニューの視点から「記憶に残るイベント」を仕掛ける重松氏の挑戦には今後も注目だ。

なお、スペースマーケットは2014年7月17日・18日(金)に開催された「B Dash Camp 2014 Summer ピッチアリーナ」で優勝。このイベントは福岡で開催されている先駆的事例、成功事例等に関する講演・セッションだ。

  • 取材、文/トラベル・ジャーナリスト 山田友樹
  • 取材、編集/トラベルボイス編集部

 

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