2006年11月に日本語サービス「Expedia.co.jp」を開設したエクスペディア。今年で日本進出20周年を迎える。その間、海外旅行、国内旅行、訪日旅行それぞれのマーケットで存在感を高めてきた。世界大手OTAとして、日本市場の現状をどう見ているのか。2026年の旅行のトレンド、注力するAI戦略とあわせてエクスペディア・ブランド・グローバルゼネラルマネージャーのトレイシー・ウェーバー氏に聞いてきた。
※編集部注:このインタビューは、米国・イスラエルによるイラン攻撃の発生前に実施したものです。
訪日市場の興隆と海外旅行市場の回復
ウェーバー氏は、日本での20年を振り返り、まず訪日市場の興隆について語った。特に、エクスペディアの主戦場である米国からの訪日客が大幅に増加したことに触れ、2024年のデータでは米国からの訪日客の50%がエクスペディアを利用した計算になると自信を見せた。そのうえで、「日本の観光産業へのコミットメントが強まっている」と評価した。
また、近年の旅行トレンドについても言及。エクスペディアが発表した2026年の旅行トレンド「Unpack ’26」で検索増加率で沖縄が2位に入ったことを例に、大都市以外の旅先(セカンダリーシティ)の注目が高まっているとし、「リピーターや複数都市での滞在に向けたプロモーションを展開するチャンスが生まれている」と話した。こうした動向にあわせて、同社では複数都市への周遊を促す手段として、複数ホテルの予約に対して割引特典を提供している。
一方、依然として回復途上にある日本人の海外旅行については、円安や物価高などの経済状況はあるものの、「すべての発地市場で言えることだが、旅行市場には回復する力がある。旅行をしたいという欲求は止まることがないからだ」と将来に向けて楽観的な見方を示した。
また、海外旅行のインスピレーションを得る新たなアプリ内ツールとして「フライトディール(Flight Deals)」を日本でも2月にリリースした。このツールは、 エクスペディア独自の機械学習技術を用いて、毎日数百万便のフライトと価格に影響を与える要因を分析し、その情報を旅行者と共有することで意思決定を支援するものだ。具体的には、地図上で、例えば日本から行ける場所と航空会社の料金プランを検索前に確認することができる。このことから、ウェーバー氏は「検索ボックスに入力する前の段階で、それまで思い浮かばなかったような旅行先に気づくかもしれない」と話し、日本人の海外旅行の新たな動機付けにも役立つとの考えを示した。
海外旅行市場の活性化策については、エクスペディアがハワイ州観光局(HTJ)およびVisaとの協業でハワイ旅行を支援するキャンペーンを2026年1月26日~2月28日にかけて展開したことを紹介した。クーポンコードを利用して、ハワイの対象ホテルまたは対象の「航空券+宿泊」のセットをVisaで支払うと割引が受けられるというものだ。
キャンペーンを通じて、課題となっているハワイでの滞在費を支援するとともに、エクスペディア・ブランドとして、より質の高い旅行者をハワイに誘客していく考えがあるという。ハワイは日本の海外旅行のベンチマークとなるマーケットだけに、ハワイとのパートナーシップは今後も継続していく方針だ。
「まとまった休暇が取れれば、モルディブに行ってみたい」と話すウェーバー氏
2026年の旅行トレンドは?
また、ウェーバー氏は、2026年の旅行トレンドとして「これまであまり知られていない場所に行きたいという需要が高まっている」と指摘。Unpack ’26の調査結果では、検索増加率トップが米モンタナ州のビッグスカイになった。ウェーバー氏は「こんなに注目されていたとは思いもしなかった」と驚きを隠さない。
さらに、注目トレンドとして挙げたのが「スポーツツーリズム」だ。2026年は、ミラノ・コルティナ冬季五輪、ワールドベースボールクラシック(WBC)、FIFAワールドカップとビッグイベントが続く。また、日本人にとっては、LAドジャースの大谷翔平選手の訴求力は依然として高い。Unpack ’26での調査でも、日本人旅行者の51%が「自分が住んでいる地域では見られないスポーツを観戦したい」と答えた。
エクスペディアでは、Unpack ’26の結果を受けて、地元のスポーツイベントや文化体験に参加し、単に試合を観戦するだけでなく、そのコミュニティや伝統を感じることを目的とした旅行が伸びると予想している。
さらに、「コンサートツーリズム」の需要もさらに高まると予測。いわゆる「推し活」は、大きな旅行のモチベーションになると見ている。
ウェーバー氏は、「人々の生活や人生へのアプローチ、そして旅行に対する考えは根本的に変わってきている。エクスペディアは、それについて考えなければならない。Unpack ’26で新たなトレンドも見えてきた。こうしたトレンドを前進させていく」と強調した。
進化するAIと、拡大するOneKey
エクスペディアは、生成AIの導入に積極的に取り組んできた。2024年5月には旅行プランニングを支援するAIアシスタント「ロミイ(Romie)」をローンチ。2025年には、ChatGPTにエクスペディア・アプリを直接統合する仕組みも取り入れた。
ウェーバー氏は、「エクスペディアのAIは、旅行者に代わって、旅程を計画し、行きたい場所、興味のある旅行先、あるいは希望する旅行を迅速かつ容易に考えてくれる」と自信を示す。また、旅行計画だけでなく、膨大なレビューの要約、カスタマーサポートでもAIを導入し、ユーザーの利便性を高めている。
今後については、AIが旅行計画から予約までをシームレスに繋げていく仕組みの構築を実現していく考えだ。
そのうえで、ウェーバー氏は「AIがいくら進化しても、重要なのは旅行者との信頼関係を築いていくこと。特に、日本市場ではそれが大切」との見解を示した。
このほか、エクスペディア・グループの特徴である「OneKey」についても説明した。「OneKey」とは、エクスペディア、Hotels.com、バーボ(Vrbo)の3つのブランドの顧客IDを統合したロイヤルティ・プログラム。予約でOneKey Cashを貯めることで、次の旅行でそのCashをホテルだけでなく、航空券、レンタカー、アクティビティなどでも利用することが可能になる。日本人会員については、コロナ禍後の国内旅行が活発なことから増加傾向にあるという。
ウェーバー氏は、「(OneKeyも含め)日本には多くのチャンスがある。引き続きローカライズしたアプローチを徹底し、最高の価値を提供していく」と力を込めた。



