絶景をバーチャル体験できるアプリで旅行者へアプローチ、チリ観光局のデジタル活用を聞いてみた

チリ観光局がデジタル技術を活用した旅行者増加を目指している。バーチャルリアリティ(VR)で仮想の旅行体験ができるアプリを配信。360度パノラマで、現地を訪れたような感覚を体験できるアプリだ。このほど、チリ現地より来日した同局アジア太平洋地区マネージャー、パブロ・ハビエル・レタマル氏がその狙いを語った。


IMG_8194チリは、北部のアタカマ砂漠から南部のパタゴニアの氷河、モアイ像で有名なイースター島など様々な観光素材がある。同氏は、現代の旅行者が「新しいこと、体験を求めている。その体験があるのがチリ」と自信を見せ、今後は自然・文化を活かした「体験」を提案し、「高品質な素材」「知人に伝えたくなるようなストーリー」「ラテン文化」をアピールしていく方針だ。

パブロ氏によると、チリへの世界からの旅行者は5年連続で増加。2010年の280万から、2014年は360万人に成長している。日本からの旅行者については、2012年が最高となる1万5000人を数えてから微増と微減を繰り返し、2014年は2012年とほぼ同程度だった。今後は、日本も世界同様に「継続した増加を目指す(パブロ氏)」。

こうした旅行者増加への活動のひとつとして2014年11月に発表したのが、スマホの360度パノラマ画像でヴァーチャルな旅を体験できるアプリ「Chile Experience」だ。アタカマ砂漠、イースター島など5つの絶景観光をiOS(iPhoneやiPad)対応のアプリで用意した。同年5月に欧米市場の町中で行った絶景画像のプロモーションが効果的であったことから開発され、仮想ではあるが個人のスマホで絶景を「体験」できるものに仕上げた。

アタカマ砂漠の1場面イースター島のモアイ像も。VRでは、巨像が大地に忽然と建つ雰囲気が味わえる。

パブロ氏によると、チリの観光観光促進予算は2012年の280万ドルから2015年は1500万ドルに大幅に増加した。それでも、世界的には「多いとは言えない(パブロ氏)」として、合理的な予算活用を見極めているところ。チリ観光局は、在外の現地観光局を持たずに世界への情報発信を行っているといい、VRアプリの公開は合理的な活動の一環といえるだろう。「絶景」がソーシャルメディアで拡散し、1枚の写真を起点に観光地が賑わうというトレンドにあったプロモーションだ。

スマホをはめ込んでVR体験できる機材も用意している。

一方、こうしたデジタル活用は「決してメインの活動ではない(パブロ氏)」という。日本では、1年に1~2回の旅行業界向けのセミナー・商談会のイベントを実施。また、日本語の旅行会社用の資料も用意しており、デジタルでダウンロードできるようにしている。こうしたBtoBへのアプローチとあわせて展開していくことで、パブロ氏は微増微減を繰り返す日本市場で、安定した増加曲線をつくっていく考えだ。

(トラベルボイス編集部:山岡薫)

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