世界2大オンライン旅行会社「プライスライン・グループ」社の副社長に聞く、日本展開からモバイル対応まで

2014年の予約総額は503億ドルーー。エクスペディア社とともに、世界の2大OTAグループとして存在感を増すプライスライン・グループ企業サイトのトップページには、そんな数字が誇らしげにおどる。そして、プライスライングループのコーポレート・ディベロップメント担当シニアバイスプレジデントのエイドリアン・キュリー氏の目線の先にはOTAが「またまだ成長の余地ある」という未来が見えている。

キューリー氏は、買収を通じてプライスライングループを世界最大級のオンライン旅行会社に育て上げた中心人物のひとり。13年の在籍期間中に、Booking.comのCFO、Agoda.comの会長、Rentalcars.comのディレクターなどなど、グループ各社の要職をつとめてきた。そんな同氏にグループのビジネス展開、日本市場の展望、オンライン市場の未来について聞いてみた。


数々の買収劇で一大企業に -グループで一貫した旅のサービスを提供

プライスライングループは、プライスライン・ドットコムを起点として数々の買収を通じて事業を拡大してきた。まず2005年にヨーロッパを中心にホテル予約事業を展開していたブッキング・ドットコム(Booking.com)を買収。2007年にはアジアを主戦場にするアゴダ(Agoda.com)、2010年にレンタカーを取り扱うレンタルカーズ・ドットコム(rentalcars.com)、2013年に旅行メタサーチのカヤック(KAYAK)、そして、昨年にはレストラン予約を扱うオープンテーブル(Opentable)を傘下に置いた。現在、6ブランドでグローバル展開している。

「私たちのコンセプトは、グループ会社でありながら、各社独立性を持ってビジネスを行うこと」。キュリー氏は、プライスライングループのビジネススタイルをそう説明する。ただ、それぞれ独自の知識やスキルを持っているため、ビジネス横断的なアプローチも可能なため、「たとえば、ブッキング・ドットコムでホテルを取り、レンタルカーズ・ドットコムでレンタカーを、オープンテーブルでレストランを予約するなど一貫した旅のサービスを提供できることがグループとしての強みにもなっている」と強調する。

プライスライングループの最大のライバルはエクスペディアだ。「いいライバルとして、お互いにビジネスを発展させてきた」とキュリー氏。一方、グループ各社は独自にビジネスを展開していることから、「それぞれに目的を持った特定の顧客が集まる。そのニーズに応えるため、プロダクトの選択肢も多い」と自信ものぞかせる。

WIT登壇時のキュリー氏(右)。左はグループ企業「KAYAK」のメルニック社長。

中核のブッキング・ドットコム、日本でも訪日を含めた積極展開をスタート

プライスライングループの中核となるブッキング・ドットコムは、すでに日本語サイトを立ち上げており、日本からのアウトバウンド旅行と国内旅行で存在感を高めつつある。東京、大阪、福岡、札幌にオフィスを構え、海外OTAとして珍しく自前のコールセンターを東京都内に置いていることからも、日本市場を有望視している姿勢が伺える。

キュリー氏は「日本でもFITが増加し、従来型のパッケージツアーが主流だった市場環境も変化している」と指摘。「テクノロジーの発展とともに、個人で旅行するほうがより快適になっている」として、OTAのさらなる成長を予測する。ブッキング・ドットコムでは、「ホテルなどのサプライヤーとの関係を重視する(キュリー氏)」方針から、日本人スタッフも多く雇用し、仕入力を高める取り組みに力を入れている。

ブッキングドットコムの日本語サイト 
http://www.booking.com/

グローバルにビジネスを展開するプライスライングループは、ローカリゼーションを成功のカギのひとつとして見ている。たとえば、「同じ英語でもイギリス英語とアメリカ英語の違いにも気を配る」ほどのこだわりようだ。

日本についても「できるだけ日本の消費者にとって使いやすいサイトにしていく必要がある。たとえば、日本ではヨーロッパよりも地図を重宝する傾向にあるが、そうしたニーズに応えていくことが大切」と話す。

また、訪日市場も急拡大していることから、海外から日本への送客も大きなビジネスチャンスと見ている。「日本は素晴らしい観光素材にあふれている。私たちのサイトでも数年前までは日本への旅行の中心は欧米だったが、最近では東南アジアや中国などが急増している。今後も訪日市場は拡大していくだろう」と将来への期待は大きく、「日本の旅館には通常のホテルは異なるサービスも多い。外国人にはできるだけシンプルに分かりやすく内容を伝えていきたい」と意欲も示す。

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新たなアプリで急速なモバイル化に対応 -モバイル化で間際予約の需要高まり

ブッキング・ドットコムでは2015年1月に間際予約に特化したアプリ「booking.now」をアメリカとカナダで先行リリース。日本でも2月にリリースした。その背景には「旅行検索・予約の急速なモバイル化と間際予約の需要の高まりがある」(キュリー氏)。また、プライスライン・ドットコムとブッキング・ドットコムでは、アップルウォッチ向けのアプリの提供も始めている。

「booking.now」の日本語アプリ(iPhone スクリーンショット)

キュリー氏は「あらゆるサービスでモバイル化は確実に拡大していく。特に旅行サービスではさらに加速するだろう」と将来を展望したうえで、「幅広い選択肢、ベストプライスを提供し続けていくとともに、革新的なアプリの開発にも取り組んでいきたい」との考えを示した。

ブッキング・ドットコムでは、モバイル対応だけでなく、新しいサービスにも積極的に取り組んでいる。2015年4月にはビジネス出張に特化した「Booking.com for Business」のサービスで開始した(日本語にも対応)。「旅行は1兆5000万米ドル市場と言われている。昨年の私たちの取引額は約500億米ドルで、たった3%にしかすぎない」。急速に拡大するオンライン旅行事業。「まだまだ成長の余地はある」とキュリー氏は先を見据える。

  • 取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹
  • 編集:トラベルボイス編集部

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