日本遺産とは? 創設の背景から今後の展開まで

ツーリズムEXPOジャパン2015では、文化庁文化財部記念物課長の加藤弘樹氏によるセミナー「日本遺産(Japan Heritage)について」が行われた。2015年度から認定がスタートした日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じ、日本の文化・伝統を伝えるストーリーを象徴する文化財群。初年度の認定件数は18件で、文化庁では2020年までに約100件の認定を目指し、インバウンド誘致や旅行商品の造成にもつなげたいとしている。



日本遺産とは? -地域に点在する「単品」の遺産を「面」でつなぐ

「日本遺産は今までの文化庁行政にはない、新しい考え方から生まれた」。

セミナーの冒頭で加藤氏はこのように述べ、 従来型の文化財行政について 「文化庁ではさまざまな文化財を一つ一つ保存・活用してきたが、それぞれが『点』としてバラバラに存在しており、地域の魅力を十分に伝えることができなかった」と語った。

「地域の文化財をより効果的に保存・活用するためには、世界文化遺産のように文化財を総合的に把握し、一定のテーマやストーリーの中でとらえることが有効」として、こうした考えが日本遺産の創設につながったという。「地域に点在するさまざまな遺産をストーリーで結んで『面』で見せることで、地域のブランド化や地域アイデンティティの創出につなげたい」と述べ、日本遺産を通じて地方創生とともに、観光業界と協力して国内外に発信することでインバウンド誘致にも寄与したいと意欲を見せた。


2020年までに約100件の認定目指す ー観光立国アクション・プログラムにも明記


日本遺産のロゴ

初年度にあたる2015年度は18件の日本遺産を認定しており、「来年度も同じくらいの数を認定したい」と加藤氏。文化庁は、2020年までに全国で100件程度の認定を目指している。

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「この目標は、政府の各計画にも盛り込まれている」として、2015年6月に政府が閣議決定した「日本再興戦略 改訂2015」や、観光立国推進閣僚会議が決定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」に「日本遺産の認定を、2020年までに約100件程度行う」という一文が入っていると説明。文化庁が単独の省庁として打ち立てた目標ではなく、省庁の枠組みを超えた横断的な取り組みであることを強調した。


旅行商品化へ動き -クラブツーリズムや名古屋鉄道が始動

名鉄の報道資料より

旅行業界では、既に日本遺産の商品化やキャンペーンの動きがあることも述べられた。東京新聞旅行は福井県小浜市・若狭町の日本遺産「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 ~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~」を組み込んだ2泊3日のツアーを造成し、9月27~29日に催行。クラブツーリズムは熊本県人吉市をはじめとした10市町村の日本遺産「相良700年が生んだ保守と進取の文化 ~日本でもっとも豊かな隠れ里―人吉球磨~」と観光列車「田園シンフォニー」を組み合わせた1泊2日のツアー催行を、2016年2月28~29日に予定している。

名古屋鉄道では岐阜県岐阜市の日本遺産「『信長公のおもてなし』が息づく戦国城下町」に連動した「岐阜まち歩きキャンペーン」を9月12日~12月13日まで実施。日本遺産に認定された文化財群をまち歩きコースに組み込み、期間中はスタンプラリーやハイキングイベントなどが行われる。

このほか楽天トラベルでは、2015年度に認定された日本遺産18件を特設サイトに掲載しており、全日空は鳥取県三朝町の日本遺産「六根清浄と六感治癒の地 ~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~」を掲載した機内パンフレットを7月に発行したことが紹介された。


2016年度予算要求は倍増の16億円 -新たにプロモーション事業費も付加

文化庁文化財部記念物課長の加藤弘樹氏

文化庁では日本遺産魅力発信推進事業の来年度予算として、今年度の8億200万円の倍額にあたる16億500万円を要求したことも明らかにされた。

「プロモーションが重要と考え、日本遺産プロモーションという8000万円の新規事業についても要求した」と加藤氏。日本遺産プロモーション事業の予算内訳はシンポジウムなどの開催2300万円、地域活性化イベントへの参加3000万円、アドバイザー派遣事業2700万円。

「プロモーションには人材が大事。アドバイザー派遣事業の予算は多言語化のためのネイティブの翻訳家派遣などに活用いただきたい」としている。

取材・記事: ライター 井上理江

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