宿泊施設の予約トレンドを読み解くコツは、「セグメント」「チャネル」「アカウント」

こんにちは。ホテルコンサルタントの堀口です。

ビジネスの基本として、「現在自社が置かれている状況を把握して将来の作戦を立てる」という流れがあります。そしてそれはホテル業・旅館業においても同様です。

その時にまず考えるべきことは「何を持って自社の状況を把握するか」という点です。

状況把握のための分析項目には様々な観点が考えられますが、最低でも分析したほうが良いのが次の3つの観点です。

  1. どのようなお客様がいらっしゃったかを把握する「マーケットセグメント」
  2. どのような手段でお客様が予約したかを把握する「チャネル(経路)」
  3. 特定のお客様の動向を把握する「アカウント」

 

どのようなお客様がいらっしゃったかを把握する「マーケットセグメント」

マーケットセグメントとは「お客様を共通の傾向で分類したもの」のことです。

マーケットセグメント(以下セグメント)毎に作戦を立てるのが、マーケティング活動の基本となっており、セグメント毎に以下の観点を検討します。

基本的なマーケットセグメント

  • どんな商品が求められるか(商品:Products)
  • どの程度の価格なら購入してもらえるか(価格:Price)
  • どこで販売すれば購入してもらえるか(販売経路:Place / Channel)
  • どのように伝えたら知ってもらえるか(広告宣伝:Promotion)

※この4つの観点を「マーケティングミックス」と言います。

共通の傾向で分類することが要件ですので、分類の仕方はそれぞれの企業で違ってきます。同じような観点で分類している業界もあれば、独特の観点で分類し、競合他社と異なる戦略を立てることで成功した企業の事例もあります。

宿泊産業に目を向けると、大きく3つのタイプに分類できるようです。

宿泊産業で用いられる主なセグメント

  • 目的型:お客様の利用目的で分類する
  • 価格帯型:お客様が利用する価格によって分類する
  • 経路型:お客様が利用する予約経路によって分類する

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※実際には、上記の観点に複合的な要素を加えて細分化していることが多いようです。

価格帯型・経路型はどちらもセグメントをもとに戦略を検討するマーケティングミックスに「価格」「経路」の観点が含まれていることから、検討の観点を減らすことになってしまいます。

一方で、セグメントは戦略の検討単位・状況の把握単位として最初に扱われるものですから、「パッと見てわかる」ことを優先するという考え方もあるでしょう。

お薦めしたいのは、「目的型」をベースに「お客様の居住地(主に国内・海外)」や「ホテル側が在庫や料金をコントロールできるか」の観点を加えたものです。

また、レベニュー・マネジメントを実践する上では、予約動向や販売戦略が異なり、現象リスクの管理の必要性が大きい「団体」を個人と分離することが強い推奨となっています。

どのような手段でお客様が予約したかを把握する「チャネル(経路)」

セグメントが(共通の傾向をベースにした)お客様の種類を表すものだとすると、チャネルは「お客様がどこから予約したか」を把握するための観点です。

これは、主に手数料の観点から分類されることが主流となってきているように思います。

チャネルによる分類

  • 直接予約:手数料はかからない
  • OTA(ネット予約):手数料は若干低め
  • 旅行会社:手数料は若干高め

この時、自社サイトを直接予約とOTA(ネット予約)のどちらに分類するかが分かれています。直接予約に分類する場合は手数料を中心に、ネット予約に分類する場合は担当業務を中心に分類しているようです。

直接予約のなかの小項目として、「広告宣伝」の要素を加えているところもあります。ただし、電話予約がネット予約に置き換わるに伴い、「何をもとにしてそのホテルや旅館を知ったか」という情報をお客様から引き出しにくくなってきており、下火になってきています。そのため、広告宣伝の効果把握はウェブのアクセス解析に置き換わってきているようです。

特定のお客様の動向を把握する「アカウント」

マーケットセグメントは「お客様を共通の傾向で分類したもの」ですが、これで特定のお客様の利用動向を把握できるかというと、それは不可能です。

マーケットセグメントを目的型でとった場合、Aさんが出張で利用すれば「ビジネス利用」と分類され、出張の際に気に入ったから家族と利用したとなれば「レジャー利用」と分類されてしまうからです。

経路型でも「OTAから予約することもあれば旅行会社から予約する」人もいらっしゃいます。

そこで、「特定のお客様の利用動向」を把握するために使用するのが「アカウント」の観点です。個人で考えることもあれば、法人や旅行会社など送客元も把握します。

※国産の宿泊管理システムでは旅行会社を「エージェントコード」で把握し、個人や法人の利用動向は「顧客情報」として把握する仕様となっています。

分析の観点はシステム選定にも影響する

自社の状況を把握するための分析は多角的に行える方が良いといえますが、一方で大勢に影響しない分析をひたすら行えるほど余裕がある企業は少数派です。

そうなると費用対効果の高い項目に絞って分析する方が良いのは明白でしょう。

その意味で、「マーケットセグメント」「チャネル(経路)」「アカウント」の3つの観点は最低限の分析の観点として望ましいものです。

一方で、国産の宿泊管理システムは「料金は固定でどこに売れば良いかを考えるだけでよかった」古い時代の分析観点がまだ強く残っており、3つの観点の中で「チャネル」しか分析項目を持たないものが(安価なシステムほど)多い傾向にあります。

システムの能力を考慮せずに自社の状況を把握しようとすると、手作業での集計作業などが増えて、現場に不要な負荷をかけてしまうことにつながってしまう恐れもあります。

分析による増収期待を優先するか、少額投資を優先するかは企業の選択ですが、「安くなんでもできる」というのが難しいことを把握しておいた方が良いでしょう。

まとめ

宿泊部門の分析は最低でも次の3つが必要です。

  1. どのようなお客様がいらっしゃったかを把握する「マーケットセグメント」
  2. どのような手段でお客様が予約したかを把握する「チャネル(経路)」
  3. 特定のお客様の動向を把握する「アカウント」

どのような分析を行えるかはシステムに依存するため、システム選定はとても重要なのです。

堀口 洋明(ほりぐち・ひろあき)

堀口 洋明(ほりぐち・ひろあき)

ホテルコンサルタント。長崎大学卒業後、国内のリゾートホテル、シティホテル、ファンド系ホテルチェーン本部勤務を経て2007年に株式会社亜欧堂を設立。国内系・外資系、シティホテル・ビジネスホテル・リゾートホテルといったホテルの業態を問わない経験を持ち、「ホテルマネジメントをサポートする」をコンセプトに、国内ホテルを中心にコンサルティングを提供中。著書に「ホテルの売上倍増実践テクニック100(オータパブリケイションズ)」など。

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