星野リゾートが町づくり再生事業にも進出、星野代表が語った山口県長門市の計画から「星のやバリ」開業まで

旅館やリゾートの運営に特化し、再生事業を行なってきた星野リゾートが、温泉街の再生としてまちづくり計画を行なう。山口県長門市の「長門ゆもと温泉まちづくり計画(仮称)」の一環として、長門市から温泉街の活性化を目的としたマスタープラン策定を受託したもの。星野リゾートが温泉街全体の再生を担うのは初めて。

2016年4月13日のプレス向け定例発表会で、代表の星野佳路氏は「非常に魅力のある場所。うまく表現できれば必ず目的は達成できる」と自信を示した。また、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の進出もコミットした。

長門湯元温泉街は音信(おとずれ)川沿いにある山口県最古の温泉街で、「川の流れる景観と情緒ある街並みが魅力」(星野氏)。しかし、その中心を成していた老舗の「白木屋旅館」「白木屋グランドホテル」「堂上福永旅館」が倒産し、その跡地を長門市が取得していた。

長門湯元温泉の景観:星野リゾート提供

星野氏は、長門湯元温泉の課題として「地方都市における都市型ホテルへの需要のシフト」、「成長セグメントのインバウンドがリーチしない」の2点を提示。これらは日本の他の地域でも見られるものとし、「観光業界にとっての大きな課題」でもあると指摘。「受託範囲にこだわらず、本当の意味で集客できる温泉街にするためにすべきことをゼロベースで考えていく」考えだ。

マスタープラン策定に向け、すでに地元旅館組合や地域住民との意見交換を実施。温泉街の歴史的背景や文化の成り立ち、自然や地形など潜在的な魅力を把握した上で、街中のそぞろ歩きができる回遊経路や施設などを考えていく方針。目指すのは、「全国人気温泉ランキングの現状86位から10以内にあげること」、「インバウンドを長門に呼ぶ」という“インパクトのある計画”で、マスタープランは4月25日に中間報告、6月下旬に最終報告を行なう予定。


星野リゾートの今後の展開と戦略

このほか2016年4月13日のプレス向け定例会では、旭川で新たに受託した都市型ホテルの運営案件の発表や、7月に開業予定の「星のや東京」の概要、開業が待たれる「星のやバリ」の状況などの説明がされた。ここで語られた現在の動向と今後の方針のうち、いくつかのトピックをまとめた。

当日発表された「星のや東京」についてはこちら。

1. 旭川グランドホテルの運営を受託 -都市観光ホテルの再生

北海道旭川市の「旭川グランドホテル」について、星野リゾートリート投資法人が取得し、星野リゾートが運営することが発表された。運営開始は2017年春の予定。

星野氏は同ホテルについて「旭川を代表する都市ホテル」と説明。星野リゾートでは以前から、地方都市のビジネスホテルやシティホテルに観光需要の大きなマーケットがあるとし、「観光市場でシェアを取る」ために取り組みを強化してきたが、今回はその地方都市における都市観光ホテルへの再生として最初のトライアルになる。

星野氏は「これまでは商用客のサービス設計だが、観光客のニーズに沿ったサービスのあり方を模索したい」との考え。具体的な取り組みについては、今後検討していくとする。


2.インバウンドへの取り組み -本物の観光の力をつける時

発表会スライドより

星野リゾートの訪日外国人の取扱状況は全プロパティで2割に満たない。訪日外国人の訪問先が上位10都道府県で8割を占めるように偏りがあるなか、星野リゾートでも場所によって大きく異なり、例えば外国人利用比率の高い「星のや京都」では37%、「星野リゾート トマム」では今冬は約5割まで高まったが、「界 津軽」ではわずか2%に留まるという。

星野氏は「成長セグメントの1つとして取り組むのは大切」としつつ、「今の観光=インバウンドという風潮は問題。インバウンドが3000万人になっても日本の観光の大半は国内需要」と強調。「海外に日本や星野リゾートの魅力をしっかり伝えたい」としながらも、「そのためにはまず、日本人に支持してもらうこと。日本の旅館やリゾートとして本物であると日本人に認められることが、結果的にインバウンドにもアピールする」との考えだ。

現在、海外向けマーケティングは星野リゾート全体として取り組んでおり、市場別では欧米マーケットへの情報発信を重視する考え。「世界の旅行トレンドは欧米から発し、中国マーケットもそこに行きたがる。長期的観点で重要」というのが理由。タヒチの「星野リゾート キアオラ ランギロア」で8割弱を占める欧米系の利用客なども新しいチャネルとして期待しているという。


3.「星のや バリ」2016年11月にオープン(予定)

星のやバリ イメージ:星野リゾート提供

「星のや」ブランド初の海外拠点となる「星のや バリ」については、2016年11月の開業予定であることが発表された。これまで、2014年9月の開業予定以降、5回の開業予定日が発表されたが、今回は2016年5月に工事が一通り終了する見込みで、「確実に11月に開ける。絶対来年に持ち越さない」(星野氏)と力を込めた。

現在のスケジュールは、2016年11月がパーシャルオープン、2017年3月にグランドオープンの予定。


4.「界 アルプス」改築へ -新築に踏み切るタイミング

長野県大町市の「界 アルプス」は2016年3月31日をもってクローズし、改築を行なう。新たな建物で営業開始するのは2017年11月の予定。

界 鬼怒川の中庭:星野リゾート提供

すでに星野リゾートでは昨年11月に「界 鬼怒川」をオープンし、12月に「界 加賀」を改築して新装オープンするなど、新築・改築に大規模な投資をしている。星野リゾートとして運営施設数と取扱高が右肩上がりで順調に推移するなか、「建設コストは上昇しているが、収益を生み出す仕組みを考えた時、今こそ新築に踏み切るタイミング」というのが理由だ。

このほか「星のや京都」や「界 日光」「リゾナーレ熱海」、「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」など、各施設のリニューアル情報などが発表された。また、ゴルフでの宿泊需要に着目し、温泉旅館に滞在するゴルフ旅を訴求する取り組みも開始。「界」ブランドでゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」と提携し、ゴルフプレーのクーポン付宿泊プランを販売する専用サイトも立ち上げた。

界の温泉ゴルフ旅・専用サイト

記事:山田紀子(旅行ジャーナリスト)

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