古民家を再生して観光資源に、一棟貸し民泊「ホームアウェイ」らが取り組む新プロジェクトを取材してきた 【画像】

集落丸山は1794年に水守として移住してきた人たちが始まり。

一棟貸し民泊(バケーションレンタル)のプラットフォーム世界大手のホームアウェイ(HomeAway)社と古民家再生ブロジェクトを展開するノオト(NOTE)社がパートナーシップを締結した。ノオトが手がけた兵庫県丹波篠山の「集落丸山」と兵庫県養父市の「大屋大杉」の古民家を9月1日から、一棟貸し物件としてホームアウェイのリストに掲載されている。※冒頭写真はノオト代表取締役の藤原岳史氏(左)とホームアウェイ日本支社長の梅澤亮氏。

両社がタッグを組むこの取り組みを現地で取材してきた。見えてきたのは、古民家が観光資源となる可能性だ。

ノオト代表取締役の藤原岳史氏は、集落丸山で行われた会見で「設立8年目を迎えるノオトにとって今年はターニングポイント。金融機関からの借り入れを完済することから、今後は第二次開発として運用益をインバウンド市場に投資していく」と説明。その一環として世界中にネットワークを持つホームアウェイとの提携を決めた。

一方、193カ国でおよそ120万の物件を扱っているホームアウェイとしては、インバウンド市場拡大の目玉として古民家の一棟貸しに注目。日本支社長の梅澤亮氏は「古民家は外国人にとってユニークな体験。『一軒まるごと貸し切り、家族や仲間と最高の休日を』というホームアウェイのコンセプトにも合致する」と今回の提携の経緯について説明した。

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ノオト、国家戦略特区を活用して古民家再生

集落丸山は6世帯25人ほどが暮らす静かな山里。ノオトは再生プロジェクの第一弾として築約150年の古民家二棟を再生した。古民家のつくりはそのまま残し、水まわりや内装をモダンにリノベーションし、2009年11月に開業。ノオトがファイナンスを含む再生事業を手がけ、運営は集落の住民が行っている。

事業推進にあたっては、国家戦略特区の旅館業法適用除外と古民家等の活用のための建築基準法の適用除外を活用。集落丸山のほかに、篠山市内で複数の古民家のフロントを一元管理する「篠山城下町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」を開業した。ニッポニアは、一棟貸しのバケーションレンタルではなくホテルとして運営しているため、ホームアウェイでの取り扱いはない。

藤原氏によると、現在全国に点在する古民家などの歴史的建造物は約149万軒。そのうち国や行政が保存や保護に取り組んでいるものは1万5,000軒ほどしかなく、残りの約147万軒が活用に困っている状況だという。現行法下では、この活用方法で問題点が多く、「現行法の前に建てられた古民家も、宿泊施設やレストランなどに用途変更をすると、現行法が適用されるため、それにかかるコストを考えると取り壊さざるを得ないケースも多い」と指摘する。

また、全国に110ヶ所ほどある歴史的建築物保存地区では、補助率9割で外観を再生することは可能だが、事業者が入らないため、テーマパークのような外観だけが残り、地域活性にはつながらず、結局人口減になってしまっているという。ノオトでは、そうした地域での事業にも注力していく考えで、「今年末くらいからは、他の地域でもニッポニアのプランドを展開できるのではないか」と見通す。

集落丸山の再生された古民家のひとつ「明かり」。ノオトが篠山市内で展開するNIPPONIA。フロントとレストランを備える「オナエ」のほか町中に3棟が点在。4棟合わせてひとつのホテル。

国も地方創生事業として注目、目標は3万軒の再生

国でもノオトの取り組みに注目している。今年6月4日の閣議決定でも、国家戦略特区の推進として、国家戦略特区を活用して実現した歴史的建造物(古民家)の事業が認められ、これを全国に広めていく方針が示された。

約147万軒の歴史的建築物のうち修正・再生可能な物件は約30万軒。ノオトではそのうち10%にあたる3万軒が3〜5年以内に民間資本で収益化可能と試算しており、それを再生プロジェクトの目標と定める。

内訳はホテルなどの宿泊施設が1万軒/2万9,000室、ショップや住宅などの賃貸・転売が2万軒。「歴史的建築物は負の遺産になっているが、実はそこに宝がいっぱいある。単なるラグジュアリー感だけで見ると、海外の別荘にはかなわないが、その土地の暮らしや文化を含めて古民家には高い価値がある」と藤原氏。ノオトは、箱物を新たに作る観光開発ではなく、あるものを再生してその土地を「体験」する拠点づくりをさらに加速させていく考えだ。

古民家再生で集落に活気、インバウンドにも前向きに

古民家再生プロジェクトのキーワードのひとつが「地域の活性化」。地域に旅行者を呼びこむことで経済を循環させ、雇用を創出する。集落丸山の運営を担っているNPO集落丸山代表理事の佐古田直實氏は「ノオトから最初に再生の話をもらった時は疑心暗鬼だった」と明かすも、「今では古いものが資産になると気づいた。集落のみんなが自分たちでもやれると自信を深めた」と話す。

集落丸山で提供される食事は集落の人たちの手作りだが、地元の蕎麦屋の監修を受けるなど、このプロジェクトによって「地域のなかの横のつながりも生まれている」とコミュニテイー効果も実感しているという。

また、佐古田氏は外国人旅行者の受け入れについて、「語学など環境面で不安はある」と口にしつつも、「ノオトとは信頼関係ができている。環境整備についてはノオトと協力してやっていきたい」と前向きだ。いずれにせよ、「村人はこれまでどおり。日本人であろうと外国人であろうと、同じ気持で対応していきたい」考えだ。

再生古民家「ほの穂」の洋室ベッドルーム。このほか、洋室1室、和室3室、ダイニングルームがある。地元の食材を使った村人手作りの朝食。

ホームアウェイ、一棟貸しプラットフォームとして古民家を強化

ホームアウェイが取り扱う日本国内物件数は約4,500軒。そこに新たに古民家が加わることになった。ホームアウェイの梅澤氏は、ノオトとパートナーシップについて、外国人にユニークな宿泊体験が提供できることのほかに、国家戦略特区での取り組みであること、空き家対策であること、地方創生につながること、地域に雇用が生まれることをポイントとして挙げた。来春には民泊新法ができる予定だが、あくまでもルールに則ってビジネスを展開していく方針。

古民家については、今後もリスティングを増やしていき、サイト上に古民家特集や篠山特集などを展開することで、外国人向けにマーケティングを強めていきたい考え。集落丸山でもモニターツアーとしてマレーシアから家族を招いたが、「非常に好評だった」と手応えを示し、同社のインバウンド事業でもインパクトのある物件になると自信を示す。

また、昨年末にはエクスペディアの傘下に入ったことから、航空券やレンタカーなども取り扱う同社との相乗効果にも期待を寄せる。

ホームアウェイは、民泊のプラットフォームだが、部屋貸しではなく、一棟貸しのバケーションレンタルに特化している。プラットフォームとして、ホストが登録する際には、一棟貸しであるかどうかなどを含めて審査。掲載の方法によって予約率も変わってくるため、使用する写真や情報などのコンサルティングも行っている。また、掲載情報と実際の物件が違うなどのトラブルにも対応し、ホストに改善を求める取り組みも行っているという。

ホームアウェイは全世界で月間4,400万人のユーザーを送客。アジア太平洋地域での利用実績では、平均滞在日数4日間、平均滞在人数4人、平均支払額1滞在あたり6万1,000円だという。

「明かり」のリビングもモダンにリノベーション。土間にはアイランドタイプのキッチン。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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