楽天トラベルが今年の戦略を発表、新経営体制で取り組む3軸の開発や新テクノロジーへの方針など

楽天トラベルは2017年2月13日、宿泊施設を対象にした2017年度の戦略共有会「新春カンファレンス」を東京で開催した。2017年1月1日にライフ&レジャーカンパニーのトラベル事業長に就任した髙野芳行氏をはじめ、トラベル事業部の新たな経営陣を紹介するとともに、2017年の戦略を発表。楽天トラベルが目指す「ベストマッチング」の実現に向け、データ活用やテクノロジー開発、品質向上を深化させる方針を説明した。

データ活用で開発推進

髙野氏は17年の戦略として、4つのキーワード(1)プロモーション、(2)ブランド、(3)ビッグデータ、(4)クオリティを提示。このうち、ビッグデータに関しては「楽天は日本で最もデータを保有する企業の1つ。ユーザー像をより理解でき、最適なマッチングが可能になる」と話し、目指すベストマッチングのキモであることを強調した。

また、開発責任者である執行役員ライフ&レジャーカンパニーCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)の星野俊介氏は、データに関して3つの軸で開発に取り組んでいることを説明。(1)情報の届け方、(2)データの見せ方(ベストマッチング)、(3)宿泊施設に対する分析データの提供で、このうち、「見せ方」についてはユーザーエクスペリエンスも考慮。その一環として、ユーザーの検索結果に表示する「宿クーポン」機能を開始した。このクーポンは宿泊施設が独自に設定可能で、「今年のキーワードになる」として注力している。

また、サイト上の人気(ひとけ)の演出として、現在のサイト閲覧数や過去24時間の予約数などを表示する機能の実装や、「分析データの提供」では、宿泊施設の管理画面で世界250社のOTAのデータを基にしたレビュー分析を、サイト別、カテゴリ別、競合施設別の比較で見られるようにした。

さらにデータは営業部門でも活用。今年から国内のみならず海外の営業も統括するトラベル事業副事業長営業統括ディレクターの羽室文博氏によると、宿泊施設の顧客属性や平均単価、競合比較といった各種データについて、宿泊施設の営業担当であるITCが宿泊施設にとってわかりやすい形で提供する。それにより、ITCの質の向上も図るという。なお、宿泊施設の運用サポートとして、サポートデスクに対して要望の多かった管理画面のリモートサポートサービスを年内に開始する予定だ。

発表した新機能

楽天ブランドのグローバル化でインバウンド強化

戦略共有会の冒頭、楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏はビデオメッセージで、2017年が楽天グループ20周年の節目の年であることを説明。その上で楽天トラベルについて「新経営陣でAIやビッグデータ、創造的なマーケティングを織り交ぜながらサービス向上と国際化を実現し、インバウンドを送客できるようにする」と、テクノロジー活用に加え、インバウンドを強化する方針を語った。

これは、グローバル化に力を入れる楽天グループの方針に沿うもの。楽天では今年1月から、世界規模での認知向上を目的に、世界トップレベルのプロサッカークラブ「FCバルセロナ」とグローバル・パートナー契約を締結。これについて髙野氏は、かつて楽天が日本のプロ野球への新規参入で一気に知名度を上げたことを引きあいに、旅行のインバウンドでも「世界の人を集める」と、その効果に自信を示した。

2016年のインバウンドの取扱は、前年比86%増と大幅に伸長。ただし、国内全体のビジネスと比較するとまだ割合が小さいとし、2017年はかなりの経営資源を投下し、成長させる方針だという。

なお、戦略共有会と同日に行なわれた楽天の2016年度通期及び第4四半期決算発表で、三木谷氏はFCバルセロナのグローバル・パートナーを基盤に、世界での楽天ブランドの浸透と統合を目指す方針を発表。日本のプロ野球参入時は、楽天のブランド価値が167位から32位に跳ね上がったといい、スポーツの影響力の大きさを示している。

楽天では既に、ネット通販関連サイト「EBATES」や無料通話&メッセージ「Viber」など世界で展開している6つのブランドがあり、これらグローバルの会員数は11億人に達する。しかし現在は、「9割はそのブランドが楽天グループであることを知らない」という。これらのブランドを“楽天化”し、日本でのエコシステムをグローバルにも浸透させるのがグローバル戦略の狙いだが、旅行インバウンドで見ればグローバル経済圏にそれだけの潜在客があることを示唆しているのだろう。

楽天の未来の旅行サービス

80697_03さらに髙野氏は「ネクストステップ」として、未来の楽天トラベルについて言及。今後、ベストマッチングを推進するなか、さらなるAIなどのテクノロジーの進化とビッグデータの蓄積で、より正確なマーケティングが可能になる。

ユーザーの好みをより理解した上でマッチングできるため、「ユーザーが宿泊施設の利用後に期待と違うと思うことが少なくなり、施設の満足度が上がることになる」と、説明する。

つまり、ベストマッチングの追求によって、「多数のユーザーを集める場ではなく、宿泊施設にとって各施設を好きになってもらえるユーザーを集める場になる」と、将来の楽天トラベルの姿を説明。宿泊施設の参加者に対して「一緒に未来の旅行サービスを作っていきたい」と呼びかけた。

なお、同戦略共有会は、全国9会場で順次開催。2月13日の東京会場には首都圏、北関東、甲信越、伊豆・箱根地区の宿泊施設を中心に、約1100人が参加した。

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