高級宿泊予約「一休」、高級スパの即時予約機能を導入へ、宿泊・飲食のユーザー動向やヤフー傘下入り後のシナジー効果も聞いてきた

高級宿泊予約サイト一休は、「一休メディアカンファレンス2018」を開催し、宿泊、レストラン、バケーションレンタル、スパ各事業の現況を説明した。一休は、宿泊予約『一休.com』に加えて、『一休.comスパ』『一休.comレストラン』『一休.comバケーションレンタル』を次々に立ち上げるとともに、2016年にYahooの傘下に入ることで事業を拡大してきた。

レストラン予約、10年前の急速な旅行のEC化と似た状況に

一休社長の榊淳氏は、同社の事業特徴を「尖ったビジネスで成長している」と表現。ターゲットを富裕層にしぼり、国内宿泊については全国約8万4000施設のうち約5%の約5000軒、国内レストランは81万店のうち約1%の約7000店のみの高級施設を扱い、「尖ることとビジネス規模を両立させてきた」と説明した。ターゲットを明確にすることで取扱高も2011年から再成長、ヤフー傘下に入った2016年から2017年にかけては45%増となり、「EC分野ではかなりの成長率を残せた」と自信を示した。

宿泊事業については、ボリュームゾーンとなる一人あたりの年間利用金額20万〜39万円で、2017年の総利用金額は2010年比で2.7倍に拡大。さらに年間200万円以上の層も10倍に伸びた。榊氏は、その背景を「モノではなく、過ごす時間や空間に価値をおく旅行者が増えてきている」と分析した。また、富裕層とは必ずしも高所得者ではなく、「たとえば、共働きでなかなか休暇を合わせられない夫婦が月に一度、年に一度、贅沢な宿泊を楽しみたいという層も増えている」とした。

レストラン事業については、オンライン予約はまだ全体の3%ほどしかないが、「今後大きな成長が見込まれる」とし、約10年前の急速な旅行のEC化と似た状況が起こりつつあるとの認識を示した。2018年の一休の取扱高も2013年比で約5倍に増加。今後の急成長を見込み、東京、大阪、名古屋、福岡に続き、今年10月19日には京都と横浜にも支社を開設。さらに北海道での展開も視野に入れるなど、『一休.comレストラン』のラインアップ増強に注力していく方針だ。

Yahooとのシナジー効果については、販売流通は別々のオペレーションながら「M&Aでやりたかったことができている」と評価。今後は、Yahooのログインで一休を予約する客層の傾向を掴むために、「データの連携を強めていきたい」考えも示した。

このほか、榊氏は予約動線についても言及。現在、スマートフォンの『一休.comレストラン』の訪問者数は全体の80%にのぼるが、予約率は60〜70%にとどまり、宿泊については、訪問者数、予約率ともレストランよりも10%ほど低くなっていると説明した。レストランでのスマホ率が高い理由については、「若い世代の利用が多いため」とした。

一休の現況を説明する榊氏

宿泊ダイヤモンド会員数右肩上がり、バケーションレンタルでは古民家再生も

宿泊予約の『一休.com』の説明では、宿泊事業本部長の栗山悟氏が「国内ほぼすべての高級ホテルと旅館を取り扱っている」と紹介。そのなかでも国内OTAとして独占販売している「一休Plus+」を特長として挙げた。また、平均利用額が年100万円から2000万円のダイヤモンド会員の数が右肩上がりで増加。部屋のアップグレード、ウェルカムギフト、レイトチェックアウトなどの特典で「特別感」を加えることで、他のグレード会員との差別化を図っていると説明した。

ファインダイニングのみを取り扱う『一休.comレストラン』についてはレストラン事業本部長の巻幡隆之介氏が説明。「ネット予約のため24時間好きなタイミングで予約できること」を強みとして挙げた。また、顧客の分類として、取扱高ベースで平均8000円のディナーが中心となる「記念日カップル」が全体の34%で最大、ついで6000円のディナーの「グループ食事会」が31%、3400円ランチの「マダムグループ」が27%、7000円ディナーの「おじさまグループ」が8%と紹介した。

そのうえで、ヘビーユーザーの特性として、とりあえず予約を入れて誰と行くかは後で決める「予約先行型」、予算ではなく探す時間をコストと考える「予約コストパフォーマンス型」、美味しさの先にある映えや斬新な調理法など求める「イノベーティブ」に分かれると説明。イノベーティブでは「レストランは食事の場ではなくエンターテイメントの場になっている」と指摘した。

今年で立ち上げ2年目になる『一休.comバケーションレンタル』では、バケーションレンタル・チームリーダーの森隆氏が「従来の宿泊施設とは異なる新しいニーズがある」と説明。同サイトの利用実績については、1棟あたりの平均利用人数が3.6人、4人から10人の利用が全体の45%を占め、1棟あたりの平均利用単価は5万円になっているほか、レビュースコアが5点満点で平均4.6と高く、ダイヤモンド会員の利用も全体の12%にのぼると紹介した。

一休では、旅館業法と住宅宿泊事業法双方の物件を取り扱っており、2018年10月時点での掲載数は600施設。地方の古民家再生にも携わるなど、さまざまなカテゴリーで高級バケーションレンタル事業を拡大していく考えだ。

『一休.comスパ』は10月25日に大幅にリニューアルする。これまでは予約サイト上でクーポンを購入後電話で予約を入れる必要があったが、新たに24時間いつでも予約が可能になる即時予約機能を導入する。取り扱う対象は全国に約1000軒ある高級ホテル・スパ、デイスパ、上質リラクゼーションサロン。スパ事業部長の平澤未紀氏は、「高額なスパを用意しているため、選択の手助けをする情報をしっかり出していきたい」と意欲を示した。リニューアル後は店舗情報をさらに増やし、特にラグジュアリーなスパ体験ができる20〜30店舗を「ラクジュアリースパコレクション」として特集していく。

(左から)榊氏、栗山氏、巻幡氏、森氏、平澤氏

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