市町村が「キャッシュレス化」で中国人旅行者を誘客、中国大手決済会社とモデル事業を開始へ、自治体Payも参画

全国573市町村が参加する「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合」は、宮城県名取市を拠点に地域創生事業をプロデュースする「ワンテーブル」と中国の大手電子決済プラットフォーム「ラカラジャパン」と共同で『インバウンド×キャッシュレス地域経済活性化最先端モデル事業』を開始する。訪日中国人をターゲットとし、現在課題となっている支払い方法を解決することで、地方への誘客を進めていく。来年1月〜2月にかけて各自治体向けに研修を行い、モデル事業参加自治体を募集。当初は20市町村ほどで来年春からの稼働を目指す。

モデル事業のスキームは、首長連合とワンテーブルが提携し、ワンテーブルが全体のプロデュースを担当。ラカラジャパンは、地域の事業者に対して、専用機や静的QRコードなどキャッシュレス決済に必要なツールを無償で提供する。さらに、ラカラ社は、WeChat内の同社アカウントフォロワー数千万人に向けて事業参加市町村の観光情報を配信することで誘客を支援していく。

このほか、地域で実際に使用された中華系決済の売上のうち0.1%を自治体あるいは地域の企業や団体に還元。一般社団法人キャッシュレスグッドが「ラカラ基金」を設立し、活動予算を運用するほか、ラカラのアカウントフォロワーへの情報配信費用や売上還元の管理を行う。

ラカラ社は、中国におけるネット、デジタルウォレット、モバイルでの大手決済代行会社。2017年のQRコードでの決済回数は1日2500万回におよび、2018年の決済総額は約72兆円に達すると見込まれている。現在のところ、ラカラ端末で対応可能な決済ツールはAlipayやWeChat Payなどの中華系決済のみだが、2019年2月末には日系QRコード、春にはクレジットカード、6月にはフェリカ系電子マネーにも対応していく計画だという。

首長連合の会長を務める新潟県三条市の國定勇人市長は、発表記者会見で、首長連合立ち上げの背景に触れたうえで、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、東京と同時に日本に注目が集まる。地域としてもそこで得られる果実を逃すわけにはいかない」と話し、2020年は訪日外国人誘客による地域活性化の大きなチャンスとの認識を示した。また、各地域はそれぞれの地域資源の魅力を認識しているが、「それをどのように発信していくノウハウや人脈がない」との課題を指摘したうえで、キャッシュレスに加えて、モデル事業のメリットのひとつとしてラカラによる情報発信に期待感を示した。

新潟県三条市の國定勇人市長

また、ワンテーブル代表取締役の島田昌幸氏は、自身の拠点となる東北を「未来の課題解決先進地域」と位置づけ、ラカラ社のキャッシュレスの仕組みを無償で店舗に提供することで、支払いの課題を解決していくとした。このほかの課題解決では、モデル事業に参加する協力企業がサポート。言語では、スタートアップ企業のWelltoolが、QRコードをスマートフォンで読み取るだけで瞬時に100カ国語に自動翻訳される多言語HP作成ツール「Wellpage(ウェルページ)」を提供する。

通信では、香港環遊友隣日本支社との連携で中国人旅行者向けにWi-Fiサービスを提供していく。島田氏は「この事業は、単純なキャッシュレスの仕組みではなく、インバウンド旅行者を受け入れるための総合的なソリューションで、2020年に向けてだけでなく、その以降の持続可能な取り組みになる」と付け加えた。

ワンテーブル代表取締役の島田昌幸氏

このほか、モデル事業には地域通貨「自治体Pay」を運用する「フェリカポケットマーケティング」も参画。地域に流入する観光客に地域ポイント、地域商品券、地域通貨(チャージ型マネー)で構成される「自治体Pay」を提供していく。同社社長の納村哲二氏は「地域通貨では、地元店舗で円よりもお得に買い物ができ、円では買えない特典もある。なによりも地域内でお金を回すことが重要」と話し、地域経済とコミュニティの活性化にもつながる効果を強調した。

自治体Payについて説明する納村氏と協力企業の代表者

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