世界の消費者トレンド予測2019、注目すべきトップ10は「原点回帰」「おひとりさま」など ―英ユーロモニター

国際的な市場調査会社、ユーロモニターインターナショナルは、2019年の消費者傾向を展望する予測レポート「2019年 世界の消費者トレンドTOP10(Top 10 Global Consumer Trends)」を発表した。

各業種担当の専門家チームによる調査をベースに、全体に通じる消費者の価値観や購買動向の変化を10項目にまとめたもの。消費トレンドごとに、その背景や、具体的な企業の取り組み事例も紹介している。概略は以下の通り。

消費トレンド1:年齢は関係ない(Age Agnostic)

健康管理や美容ケアの進歩に伴い、「高齢」を理由に、人生に受け身になる必要はないと考えるエイジレス派が増えている。この傾向は特に先進国で強く、世代的にはベビーブーマー(1946~1964年生まれ)で最も顕著。年寄り扱いを何より嫌い、ミレニアル世代と同じように新しいアプリやスマートデバイスへの関心が高く、できる限り、今まで通りのライフスタイルを続けたいと考えている。

シニア世代は、他の年代と比較して、所得に余裕がある消費者が多いので、別荘、高級時計、栄養サプリメント、美容ケアまで、富裕層向けプレミアム商品やサービスのターゲットとして有望視されているが、加えて「自らの消費行動を通じて社会をポジティブに変えたい(ベビーブーマー世代回答者の46%)」という能動的な姿勢も特徴だ。フライトセンター・ニュージーランド社によると、同年代の旅行需要は「自分で旅程を決めて、自分で車を運転する」「フード&ワイン」「リバークルーズ」など体験型を好むほか、単なるラグジュアリーではなく、自分の価値観や感情を揺さぶるような経験を求めているという。

消費トレンド2:原点回帰(Back to Basics for Status)

地元産のものしか食べない「ロカヴォア(locavore)」、ラグジュアリーとエコが融合した「グランピング」、クラフトビールや手作り化粧品―。かつてはワイン用語だった「テロワール(土壌、土地の個性)」が、消費全般でキーワードとなっている。グローバル化による大量生産でモノがあふれた生活への反動から、その土地ならではのユニークさに、より高い価値を感じる消費者が増えている。使われている材料や、価格設定などの透明性も重視される。特に食や美容プロダクトでは、地産地消は栄養面、地元への経済効果でメリットが大きく、環境への負荷も低いという理由から世界的にますます支持が高まるだろう。

旅行関連では、エアビーアンドビー(Airbnb)が2016年から開始したエクスペリエンス事業もこうした流れの一環と言える。モーリシャスなどのリゾート地でも、定番ツアーとは違うエコ・トラベル体験や島の文化や食事を楽しんでもらう旅行が登場している。

消費トレンド3:意識高い消費者の台頭(Conscious Consumer)

自分の消費行動がもたらす結果まで考え、なるべく負のインパクトを環境や社会に与えない選択肢を求める人が増えていく。周囲の人だけでなく、自然環境、動物への負荷など、配慮する対象は幅広くなっている。2018年は、先進国を中心に「アニマル・フレンドリー」の視点が拡大。例えば食生活において、自分の健康だけでなく、食肉産業における動物への虐待を問題視し、動物製品を一切使用しない「ヴィーガン」を選ぶ人が増えている。人気セレブやSNSの影響も大きい。

とはいえ、一食だけ、あるいは一週間だけヴィーガンにするなど、取り組み方は柔軟で、個人によって千差万別というのも最近の傾向だ。ファッションや化粧品なども、動物由来の素材、皮革製品や毛皮を避け、植物を活用したものが好まれる傾向が強まっている。今後、さらに幅広い消費財へと、同じトレンドが広がっていくだろう。

消費トレンド4:デジタルで広がる輪(Digitally Together)

高速インターネット接続とモバイル端末の普及により、遠く流れた家族や友人、さらに知らない人ともリアルタイムでコミュニケーションすることが、もはや日常的になりつつある。

海外旅行の増加や、家族と離れて外国で暮らす人が増えるなか、こうしたコネクティビティはますます重要に。プライバシー問題の懸念はあるものの、ソーシャルメディア利用は引き続き活況を呈し、ビデオチャットでは、例えばフェイスブックが発表したスマートディスプレイ「ポータル(Portal)」のように、自宅でのくつろいだ雰囲気のまま、会話ができる製品が増えていく。同ポータルは、カメラが会話している人を自動的に追いかけて映し出す機能や、一緒に歌ったり、子供に本を読み聞かせできるなど、より自然な形で交流できるところが支持されている。

デジタル技術を使ってデートも楽しめるようになった。

Match.comが登場した当初、懐疑的な見方もあったが、今や米国では結婚したカップルの3分の1以上が、お付き合いが始まるきっかけはデジタル交流となっている。アジア市場でも、同じようなバーチャルデートの市場開拓が始まっている。韓国のoksusuは、自分のアバターがバーチャル空間で他人のアバターと交流し、友達になるVRゲーム。人気動画を使った英語学習アプリ「Super Fan」(韓国)やeスポーツ「Douyu」(中国)も人気だ。VRやAR技術の向上で、ますます魅力的になったゲームが、今後、離れた場所にいる見知らぬ人同士をつなぐ場となり、様々な境界線を崩していく。人と人をつなぐデジタル技術は、さらに多機能化し、便利になり、医療、音楽など、様々な分野で活用される。

消費トレンド5:誰もがエキスパート(Everyone’s an Expert)

かつて商品に詳しいエキスパートといえば、販売店やブランド各社だったが、今では、売り手側と、買い手である消費者の立場が逆転してしまった。消費者どうしが商品情報をシェアするようになり、品質や価格のアドバイスをやり取りする。売り手側は、常時、商品の刷新や価格の見直しを迫られている。

「クチコミ」の威力が増し、消費者は情報の受け手から提供者となり、フォロワー数が多いインフルエンサーには宣伝依頼が殺到。消費者は、複数の情報ソースを使って商品を選ぶようになった。

アマゾンが支持される理由の一つは、消費者からのレビューが豊富に掲載されているためで、一方的な価格設定や、透明性に欠ける対応をする売り手は長続きしない。同時にレビューに対する目も厳しくなり、フォロワーや「いいね!」を不適切な手法で増やすケースなどが問題視されている。米国では、利用者間のレビュー情報だけを取り出すアプリ「マッセ」など、クチコミの精度アップに取り組む動きが増えている。

消費トレンド6:「つながらない喜び」の探求(Finding my JOMO)

「JOMO(Joy of Missing Out、つながらない喜び)」の充実が、ネット時代における究極のパーソナライゼーションになる。

SNS拡大の弊害は、プライベートな時間と、ソーシャルな時間の線引きがあいまいになったことで、常に何か楽しいことをしたり、気の利いた返信をすることが、いつしか義務のように感じる「息苦しさ」にある。誰ともシェアしない時間を確保し、自分のリアルな生活を充実させることが、メンタルヘルスのためにも重要だ。あえてWiFi接続不可としているカフェも登場している。ネット接続に起因するストレスは、特に韓国、オーストラリア、米国で高くなっている。

こうした状況への反動から、米国では2017年、紙の本の売上が5%増となる一方、電子書籍は17%減に。英国の書籍販売チェーン「ウォーターストーンズ」でも同年、2009年以来の黒字業績を達成した。インドのオベロイ・ホテルチェーンでは、「デジタルデトックス」と名付けた宿泊パッケージを販売している。

消費トレンド7:自分のやり方で解決する(I Can Look After Myself)

ダイエット、美容、アレルギー、メンタルケアから部屋の片づけまで、自分の抱える問題を解決するとき、ブランド商品のラベルにある「うたい文句」やメーカーの広告宣伝、有名ブロガーの成功体験に頼るのではなく、自分で考え、自分に本当に必要なものを見極めようとする消費トレンド。自分が使っている製品の材料や製造法なども確かめるという点では、前述の「意識高い」消費者像とも共通点がある。自分を甘やかすのではなく、問題解決を成功させるシンプルな手法を探し出すという姿勢だ。

例えば英国の「スプーン・グル(Spoon Guru)」は、自分のダイエット嗜好に合わせたレストランやレシピを探し出してくれるアプリ。カナダの「テルスペック(Tellspec)」は、手のひらサイズのスキャナーで、食品にかざすと、含まれている栄養素を教えてくれる。有名ブランド広告やインフルエンサーの話よりも、こうした便利ツールを活用し、自分にぴったり合った生活を賢く組み立てていく。

消費トレンド8:プラスティックごみとの決別(I Want a Plastic Free World)

昨年はプラスティック廃棄物への問題意識が大きく高まった一年だった。太平洋の一角に大量に滞留しているゴミのベルト地帯、海洋生物がプラスティックごみで窒息死した姿などの映像が拡散され、プラスティックに大きく依存する現代社会を変えようと、消費者が動き出した。このうねりは、2019年もさらに拡がっていくだろう。

ユーロモニター調査によると、食品、飲み物、化粧品、ホームケア、ペットケア製品の包装容器では、現在、世界全体の63%がプラスティックを使用している。リサイクル利用もあまり進まず、西欧諸国のプラスティック廃棄物の大半は、中国に輸出されて再加工されていたが、2018年、中国政府が同取引を終了したのに伴い、リサイクルの必要性が高まっている。2015年と2017年で比較すると、エコ素材やリサイクル可能な素材で代替するための値上げなら賛成する人は増えている。スウェーデンのIKEAでは、2020年までに石油系プラスティックを全廃し、リサイクル素材に替える方針を打ち出している。

ただし、医療、建設、交通などの分野では、重要な役割を果たしているプラスティック素材もある。「プラスティック」ではなく「プラスティックごみ」をゼロにするサーキュラー・エコノミーを目指すべきだ。

消費トレンド9:今すぐ欲しい!(I Want it Now!)

忙しく活動する現代の人々は、待ち時間ゼロ、行列や手間もなしで、効率的に提供してくれるサービスを求めている。アプリを活用することで、ユーザーの個人情報や嗜好まで考慮したサービスを瞬時に展開することも可能だ。

若年世代は、上の世代よりもアプリ利用への抵抗感が薄く、銀行アプリ利用は3倍、ライドシェアは倍にのぼる。効率的な時間の使い方を重視する消費者は、都市部で特に顕著だ。また2017年、中国では回答者の53.7%、インドでは同60%が、時間を節約できるサービスであれば対価を払うと答えた。

この分野で先頭を走るのはアリババやサムソンだが、利用者がますます増加するなか、新しいデジタルプレイヤーも台頭してくるだろう。米国シアトルとシカゴにオープンした「アマゾンGo」は、コンビニエンスストアよりもさらに短時間で、並ばずに買い物できるサービスを打ち出した。今のところ、最もよく売れているのは、ランチタイムの食べ物で、急いでいる人に好評だ。

効率的に必要なサービスを提供するには、顧客データ分析が重要になるため、短期的には、ウィーチャット(WeChat)、LINE、インドネシアの「Go-Jek」といった“スーパーアプリ”が有利だ。一方、ニッチ市場を狙って台頭する新興企業もある。例えば高齢者にターゲットを絞ったライドシェア「Go Go Grandparent」など。

消費トレンド10:おひとりさまライフスタイル(Loner Living)

世界全体でも、今後10年間で、おひとりさま世帯の増加率の上昇が予測されており、必要な商品も変わり始めている。

50歳以上になると、配偶者との死別や離婚で一人暮らしが増えるが、ベビーブーマー世代も離婚率が高く、さらに若い世代では、結婚や、他人との共同生活を最初から否定する人も。例えば住宅では、子育て環境が良い郊外の住宅より、一人暮らしに便利な都市部が好まれる。

また、おひとりさま世帯は、有名ブランドへの関心は低く、個人的な嗜好へのこだわりが強い。「耐久性がある」「高品質」「トレンド」「ナチュラル」といった要素への関心も薄く、ブランドのロイヤルティ・プログラムへの関心は低い一方、「便利」「お手頃価格」が好き。財政的な安定が最も重要なので、シンプルで機能的なものが好まれる。アメリカ西海岸に暮らすベビーブーマー世代のおひとりさまは、ペットのケアに大金を投じることで知られるが、こうした傾向は最近、香港でも顕著で、過去10年間でペット保有者は72%増。出生率の低下、晩婚化、高齢化社会などが要因だ。

おひとりさまが困るのは外食だが、オープンテーブルでは、一人で外食する人同士をペアリングしたり、グループにまとめる新しいプログラム「オープンシート」を考案、テスト運用を開始している。

「50歳以上の旅行者向けエアビーアンドビー」と称される「フリーバード・クラブ」は、貸し手も借り手も50歳以上。ホストとゲストが交流する場を用意することが必須条件になっていて、同世代ならではの共通話題で盛り上がるという趣旨。家族が減って、部屋やスペースが余りだす高齢世帯の家を活用するエンターテイメントビジネスとも呼べる。一生添い遂げる相手を見つけるのではなく、人生の各ステージに応じて、ペットや旅行の友など、様々な形で「仲間」を見つける。こうしたライフスタイルをつなぐプラットフォームにも今後、需要がありそうだ。

詳細レポート(日本語)は以下からダウンロードできる。

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