WiT Japan 2019、起業家コンテストの最終審査に進む3社決定、ニッチ市場に特化が進む傾向に

「WiT Japan & North Asia 2019」初日の2019年7月4日、恒例の旅行系スタートアップピッチが開催された。今年は11か国から30社以上がエントリー。このうち事前審査を通過した8社の代表者が登壇し、審査員や参加者にプレゼンテーションを行った。

いずれもすでに実績をあげているビジネスが揃い、例年以上にニッチ市場への特化が進む傾向も見られた。一方で、特定地域や市場での成功をベースに、ビジネスを今後どう拡大するのか、グローバル市場で大手ライバルと対峙する際の戦略、他社との差別化など、審査員から鋭い質問や指摘が続いた。ファイナリストは、In the Hood(日本)、AmuseTravel(韓国)、Flymya(シンガポール)に決定。同3社は、5日のメインカンファレンスで最終審査に臨む。

スタートアップピッチに登壇した8社は以下の通り(プレゼン順、※印がファイナリスト3社)。

Adventoro Travel(マレーシア)https://www.adventoro.com/

アドベンチャーツーリズムに特化したオンライン・プラットフォーム。東南アジアの中小オペレーターのプロダクトを専門的に扱い、世界中の旅行者に小規模だが良質のアドベンチャーツアーを提供するのがミッション。現在、1300以上のプロダクトを扱っており、コミッションは平均15%。各種スポーツに加え、歴史・文化遺産や自然なども対象としている。

AmuseTravel(韓国)※ https://amusetravel.com/

2016年創業。今年6月のGMV(総売上高)は45万ドル。障がい者や高齢者など、介助サービスが必要な人向けの旅行事業に特化して成長、韓国では同分野でナンバーワン。手話などのスキルを持つ専門ガイドの育成や、アクセシブル・ツーリズムに特化した現地・交通情報の提供、同ツーリズムに関するデータ収集も行っている。アクセシブル・ツーリズム市場がアジアで最大規模の日本への進出を計画している。また距離的にも近い日本と韓国を組み合わせたツアー造成、小さな子供連れ旅行など、顧客対象の拡大も視野に入れている。

Flymya(シンガポール)※ https://www.flymya.com/

新興市場、ミャンマーに特化したOTA。ミャンマー国内線航空券を中心に扱いながらビジネスを拡大し、現在は航空券を中心に、年間20万件以上の予約を取り扱う。クレジットカードやネット利用率が低く、外資にとって参入しにくいミャンマーだが、こうしたビジネス環境が奏功。グローバルOTAなどライバル企業の参入がないうちに、予約ソフトウェアのスタートアップとして創業し、国内顧客のデータベースを着々と構築。現在はエンジニアやデザイナーなど300人を抱える。ミャンマーの場合、海外よりも航空券コミッション率がまだ高いなどのメリットもある。

In the Hood(日本)※ https://www.kaguaruoo.com/ja/profiles/426

大手ホテルチェーン出身者やエアビーアンドビーのホストが集まって創業、東京を中心に120室を主にエアビー経由で提供している。客室の施設だけでなく、周りの地域の雰囲気や、ゲストどうしの交流の有無が、思い出に残る旅には不可欠との考えから、地元の商店街や居酒屋を案内したり、ゲストどうしが出会う会を設る。ホストとゲストのコミュニケーションに力を入れる一方、効率化できるサービスは自動化している。収益は、不動産投資と手数料。エアビーだけではなく、自社サイト経由での流通にも力を入れていく。

N-Tuple(韓国)http://www.nntuple.com/

IT時代の旅行業における最大の問題、コネクティビティを解決するべく、同社が開発したのがクラウドベースのSaaSソリューション「Sync Tree」で、異なるプラットフォームやオンラインサービスをつなぐことができる。既存のレガシーシステムの刷新や、複雑なAPI開発も不要。韓国の旅行会社、タイドスクエアにもサービスを提供している。セキュリティ対策では特許を取得したデータ送信プロトコルを利用。ターゲット市場は、旅行業の他、金融、IoT。

Shuffly(香港)https://www.facebook.com/shuffly123/

旅行者と「ベストフレンドのように」コミュニケーションしながら要望を聞き、現地の情報案内や予約・手配を行う。アプリ不要。テキストメッセージで旅行者とコミュニケーションをとる。ネット検索に疲れた旅行者に、AIを活用しながら効率的で迅速なサポートを提供。顧客とのやり取りデータは、リピーター獲得にも活用している。台湾の現地情報が中心だが、五輪を控えた東京は、特に力を入れているデスティネーション。10%のサービスフィーをサプライヤー側から受け取るビジネスモデル。旅行者からのチップも可。

reifrontire(日本)https://www.rei-frontier.jp/silentloganalytics/

スマートフォンを使い、顧客の位置情報を約5秒に一度という精度で把握、匿名化した行動情報をリアルタイムで分析するプラットフォーム「SilentLog Analytics」を開発。歩幅や速度、行動パターンから、性別や年齢なども推察できるので、ペルソナ作成も可能。SilentLog SDKを自社アプリに組み込むことで、こうしたデータ収集が可能になる。データの管理・運用には三菱UFJ信託銀行のデータバンクを利用している。

StayList(日本)https://stay-list.com/ja/

2019年2月に営業開始したばかりのバケーションレンタルのメタサーチ・サービス。日本のほか、韓国、中国、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナムで事業を展開。アジア最大のバケーションレンタル・メタサーチが目標。2021年には660億ドルの市場規模が見込まれる分野だが、エアビーアンドビーにブッキングドットコムなど取扱いOTAが増えているため、メタサーチが必要と考えた。利用件数は今年3月と6月を比べると10倍、KPIも毎月倍増している。

なお、今年の優勝者には、2019年10月14~16日にシンガポールで開催される WiT Singaporeの参加チケットと、今回初の試みとして、10万ドル(約1100万円)の賞金を贈呈。賞金は、柴田啓氏(ベンチャーリパブリックCEO)、柴田健一氏(同COO)、三島健氏の3氏が個人のエンジェル投資として提供する。優勝者がこの3名に交渉し、双方が合意した場合に実行されるという。

WiT Japanの実行委員長でもある柴田啓氏は今回の取り組みについて、「Wit Japanでは過去7年にわたってスタートアップコンテストを展開し、多くの受賞者を創出し、多くの実績を残してきた。トラベル・テクノロジー分野のスタートアップとしてキャリアを培ってきたわれわれ3名は、今回の優勝者に対し、『その先』の成長を支援していきたいと考えている」と語っている。

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