タビナカ業界を席巻しはじめた「グーグル」、次の起きることと競争に勝つためにすべきことを考えた【外電】

私は、現地ツアーやアクティビティ、アトラクションを扱うビジネスの産業構造について、尋常ではないほどの時間をかけてチェックしている。5~10年を新しいプラットフォーム構築に費やしてきたので、自分のやり方が間違っていないか、いつも気になって仕方がないのだ。

かつては、ホテル予約(またはホテルと航空券のセット予約)に強いOTAが、タビナカ分野でもいずれ勝利すると予想していた。エクスペディアやトリップアドバイザー(最近ではブッキングやエアビーアンドビー)などの大手OTAサイトには、ホテルや航空券の広告を表示し、大勢を呼び込むビジターフローがすでに出来上がっているので、その顧客の一部は、さらにツアーやアクティビティも予約するだろう。

だが大手各社は、せっかくの有利な立場を最大限に利用していない。少々、慎重すぎる。私は次第に、大手OTAが勝利するという見方にあまり自信がなくなってきた。将来、大手各社は2014~2018年を振り返り、なぜ自分たちが先行者利益をしっかり固めておかなかったのかと後悔するのではないか。

※この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

最近、私にとっての注目株は、ゲットユアガイド(GetYourGuide)、クルック(Klook)、エアビーアンドビー(Airbnb)など、「垂直型」に事業を拡大している企業だ。すなわち彼らは、消費者への予約・販売から実際に体験を提供するところまで、一貫して自社ブランドで展開していて、その強みはイノベーションを迅速に進められる点にある。(対するOTAは、まずサプライヤーを誘致し、次にサプライヤーの了解を取り付けながら、予約システム対応を進めていかねばならない)。タビナカ分野に関する限り、私は垂直型の展開に一票を投じたい。もっとも、タビナカ体験を手掛けるサプライヤー各社にとっては面白くない状況かもしれないが――。

先ごろ発表されたグーグル/アンドロイドによる新サービスが、旅行リテールにおける変化をさらに加速することは明らかだ。以下に紹介する動画のうち、2つ目を見ると、同社プロトタイプによる予約フロー(ここではレンタカー)が分かる。

今回導入したテクノロジーにより、グーグルは大規模小売業を効率化し、コモディティ化してしまった。グーグルが実現した無駄のないユーザーエクスペリエンスは、次回もまた利用したいと思わせるのに十分だ。

タビナカ予約バウチャーのオンライン化を手掛けるリディーム社(Redeam)のリース氏は、ツイッター上で危機感あふれるコメントを投稿している。

それでもまだ脅威を感じないというリテーラーがいるなら、グーグルが開発中のもう一つのサービス「Googleで予約(リザーブ・ウィズ・グーグル:Reserve with Google)」サービスはご存じだろうか。タビナカ体験を提供するサプライヤーやOTAは、グーグルの「コミッション率0%」の好待遇と引き換えに、自社の重要なデータをグーグルに渡している。

一見するととても魅力的な話だ。誰だって、事業をもっと大きく育てたい。

  • サプライヤー各社は、OTAに対する間違った警戒感から、非オンライン旅行会社との取引を増やすべきだと確信している。そこでグーグルに頼ってしまう。
  • ベンチャーキャピタル(VC)に支援されているOTAは成長を急ぐ。なぜならVCは成長率で評価する。

「商品の代金は要らないと言われたら、あなたが(お客様ではなく)商品ということ」というフレーズがまさにぴったりな状況ではないか。グーグルが我々をどこに導いていくのか、興味深く拝見するとしよう。

「リテールデータで防御を固める」という神話

サプライヤー各社が予約システムを整えるようになり、OTA側は、現地ツアーやアクティビティの在庫確認や予約がスムーズになった。だが同時に、サプライヤーのデータがリテール側に筒抜けになり、情報のガードは脆弱になった。例えば、プロダクトの契約担当チームと開発担当者が12カ月を費やして、タビナカプランのサプライヤーの予約システムに接続できるようになったら、もうそこで“壁”はなくなったのと同じだ。

決して簡単なことではない(航空会社やホテルチェーンは、こういう時、パートナー企業の力を借りる)。しかし有能なチームと百万ドル規模の資金があれば不可能ではない。

データによる防御壁がなくなっている状態で、さらにグーグルがローカルツアーサプライヤーのメタリテーラーとして動き出せば、これまでのようなリテール戦略に勝ち目はない。勝者はグーグルだろう。


トラベル分野で次に起きること

今後の展開を左右するポイントを挙げてみよう。

  • 新しい発見:人手によるキュレーションでもAIを使ったマシンラーニングでも構わないが、顧客に対するキュレーションや提案力を磨くこと。成功に欠かせないのは、大量の顧客データ(例えば前回、同じ都市に旅行したとき、どんな体験が気に入ったのか。逆に、気に入らなかったことや、その理由など)。旅行先での現地ツアーやアクティビティというのは、しょっちゅう購入するものではないので、こうした情報は重要だ。時代遅れかもしれないが、個人的には、バイアターが採用していたキュレーション・モデルは良かった。

  • 体験を作り出す:自立走行の車両を活用したツアーのプラットフォーム運営会社、オーツアー(Autoura)で、私が最も力を入れていることだ。我々は、デジタル技術とモビリティ・プラットフォームを生かし、今までになかったタビナカ体験を作り出している。同様に、クルック、ゲットユアガイド、エアビーアンドビーなども、自社ブランドを冠した独自のツアーや体験を商品化している。このマーケットセグメントが今、一番活発だ。

現地ツアー&アクティビティ体験のサプライヤーが、顧客との間でトラブルが発生するたびに悩んでいることは何か。

  • 悩みはウーバーのドライバーと同じ?:独立して営業しているが、特定のブランド傘下にあり、そのマーケットプレイス経由で、同じ基準を守ったサービス提供を義務付けられている。

  • あるいはレストランと同じような悩み?:少なくとも、ある程度の予算がある利用者は、シェフによるクリエイティブな料理を期待しているが、予約プラットフォームは、コモディティを扱う仕様にしかなっていない。

こうした難題について、幅広い視点から検証することが、次の一手を考える上で不可欠だ。

  • サプライヤー(およびサプライヤー向け予約システム会社):これまでのテクノロジー開発プロジェクトはすべて、リテール業務の改革に重点が置かれていた。その一方で、現地体験やツアーそのものを変革し、これまでにないものを創り出すイノベーションは皆無だ。旅行者がリアルに体験していることは、実はほとんど変わっていない。

  • 非グーグル系リテーラー:キュレーションにもっと力を入れる方向に戻るのか。顧客ベースの内容は、同じようなタイプが多く、キュレーションの効果が期待できるか。キュレーションの後に続くプロダクトは“万人向け”のものか、それともマネジメントしやすい5万件の体験ツアーを取扱い、それなりの数の予約を、それぞれの契約各社に届けられるのか。

ホテルや航空券を扱う一般的なOTAの場合、答えはこうなる。抱えている顧客の嗜好はバラバラなので、プロダクトのキュレーションが成果を上げる可能性は薄い。結局、万人向けのプロダクトを中心に扱うことになり、キュレーションは表面的なものに留まる――。これはグーグルがまさに参入しようとしている領域だ。もし、ここにいるなら要注意だ。

グーグルとの競争に備えるために、やるべきことは?

「グーグルとの競争」という話題になった時に私が常に意識しているのは、グーグルの強みについて考えること。そして、彼らの弱点についてもしかりだ。

  • データを密かに貯め込むこと:グーグルの手に渡ったデータは、代金を払わない限り、入手することはできない
  • グーグルはアグリゲーターであり、キュレーターではない:彼らはすべてのデータを集める。より好みはしない。
  • 思い出に残るかどうか、ではなく「できるかどうか」:実際に対応できること(例:営業時間)にフォーカスしたコンテンツを提供するのが重要。最高の旅にするために何をするべきか、という切り口は必要ない。
  • サービスではなくプロダクト中心:だからグーグルは、プライベートツアーのガイドより、アトラクション施設の方が扱いやすい。
  • 人的サービスよりAI:ただし、グーグルは位置情報を活用することで、地元に詳しい人たちが提供する現地ネタや交通情報を案内する「ローカルガイド」サービスにも対応可能。人間参加型のマーケットプレイスも部分的には活用している。
  • カスタマーサービスはなし:AIによる対応を除き、グーグルはカスタマーサービスを提供しない
  • ローカルよりグローバル:(政治的な制約がない限り)すべてのサービスが、すべてのグーグルサービスをサポートしている

基本的に、大手リテーラーにとって、グーグルとの競争が問題になるのは、同じ現地サプライヤーのプロダクトを扱っている場合だ。ユーザー本人や、過去の旅行についての情報量では、グーグルにかなわない。同じ土俵に立つのはいかがなものか。

これに対し、垂直型に事業展開している各社(ゲットユアガイド、クルック、エアビーアンドビーなど)の方が、これから始まるであろうグーグルの猛攻撃に対する防御の壁は、多少は堅牢と思われる。だが、そのほかのリテーラーはどうなのか。

デジタル技術によって可能になった、新しい旅行の楽しみ方を世界中に届けてみたいというリテーラーや旅行各社とともに、私自身も引き続き検討していきたい。

※編集部注:この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」に掲載された英文記事を、同編集部との提携に沿って、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:It’s nearly over for tour & attraction retail and we were just getting started


著者:アレックス・ベインブリッジ(DestinationCTO 創設者 兼 オーツアー(Autoura)最高経営責任者(CEO))

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