グレタ効果で、旅行サービスも価格よりカーボン排出量で選ぶ時代に? 「グリーン・トラベル・ポリシー」は主流になるのか【外電】

2020年に入り、私たちは全く新しい10年を迎えることになる。企業の出張、旅行業界だけでなく、一般の旅行者も気候変動の影響で日常生活での行動の仕方も変える10年になるだろう。

過去10年のなかでも、昨年ほど二酸化炭素排出やカーボンオフセットというニュースの見出しが続いた年はない。「グレタ効果」が世界中を席巻し、「フリュグスカム(Flygskam)」「飛び恥(flight shame)」「グリーンウォッシング(greenwashing)」「カーボン意識(carbon consciousness)」といった言葉がメディアの表舞台に突然現れた。

一方で、過去10年の間にコーポレートトラベルの世界では新しい動きも出てきた。「注意義務(duty of care)」「旅行者中心(traveler-centricity)」「旅行者の福利厚生」などという言葉は、過去10の前半のうちは真新しい考えだったが、今では意識の高い旅行において当たり前のこととなった。この進歩に基づくと、2020年代の終りには、「グリーントラベル・ポリシー」という考えを普通に持つのが当たり前になるかもしれない。

私たちの現在地は? 新しい規制や管理のあり方への現実的な期待や予測とは? そして、私たちが将来のために開発し実用化しなければならない新しいサービスやソリューションとは?

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

基準の確立

どのような優れたプログラムや政策も、基準をしっかりと特定することから始まる。ここでは、私たちが置かれた現状と、将来のプログラムを測定し、進化させるために必要となる選択について考えてみたい。

IATAはここ2年で、いくつかの基本的な事実と基準を積み上げ、信頼性の高い「グリーントラベル・ポリシー」 の枠組みの基礎を築いた。

航空が2018年に排出した二酸化炭素の量は約9億トンで、世界全体の排出量の2.4%に相当(輸送関連全体の排出量の12%)することは広く知られていることだ。悲しいことに、この量は2050年までに現在の3倍の27億トン以上に増加すると予測されている。

航空会社は燃費効率を高めてきたが、航空機の1日の稼働時間が、燃費効率で得られるものよりも早く拡大したため、航空による排出量は劇的に増加している。

しかし、二酸化炭素の大部分が高度での飛行で排出されるため、専門家によると「実際の排出による影響」は、推定される量の2倍と考えられている。加えて、航空燃料の生産に必要なエネルギー量を加えると、その量はさらに増えることになる。

carbonindependent.org による調査によると、ボーイング737あるいはボーイング747が1時間飛行すると、乗客一人あたり約90キロの二酸化炭素を排出していることになるが、環境全体への影響は、1時間の飛行で乗客一人あたり250キロになると推計されるという。エアバスを支持している人たちは、エンジン技術の進化によって燃料生産プロセスも改善しているため、環境全体への影響は航空機の排出量と同じレベルだと主張しているが。

一方、ホテルでは1泊で1部屋が排出する二酸化炭素量は世界平均で約31.5キロと見られているが、もっと調査対象のホテルを広げ、彼らの貢献度を加味した場合、1ホテルあたりの排出量は実際のところまだよく分からなっていない。

最後に空港はどうだろう。世界の空港は二酸化炭素排出問題への取り組みを強化しており、2018年の出発旅客一人あたりの平均排出量は1.81キロと推定されている。もっとも、環境への取り組みには温度差があり、空港によって排出量はかなり違う。

こうした数値の影響を分かりやすく説明すると、年間で10万飛行時間、空港から5万回の出発、ホテルでの1万泊、それらをすべて合わせると二酸化炭素排出量は2万5,405トンとなる。これは、5万日の旅行日数をサンプル値とした場合、1日の旅行あたりの排出量は0.508トンとなる。

次に改善すべき基準を見ていく。

グリーントラベル・プログラムの定義

これからの10年にはまだ9年以上残っている。グリーントラベル・プログラムをこの10年の終わりまでにどのように有効に機能させるか。もっと積極的なターゲットを定義すべきだろう。以下、いくつかの提案をしたい。バイヤーもサプライヤーも含め旅行関係者が、この提案をについて考え、そして可能ならば何らかの行動を起こす契機になってもらえればと思う。

■旅行が生み出す1日、1ヶ月、四半期ごと、年間の二酸化炭素排出量の再定義

再定義のためには、推定される二酸化炭素排出量を測定する信頼性の高いデータが必要になるのは言うまでもない。新しいスタートアップがこうした測定サービスを創り出すことは大いにありうることだ。ある特定の旅行予約、搭乗する航空機、利用する航空会社、空港、ホテル、地上交通の運用で排出される正確な排出量を計測するサービス。私は、こうした新しいタイプのソリューションを「GTaaS(Green Travel as a Service)」と名付けたい。そして、2020年の終わりまでに、その最初の事例が見られることに期待している。

■価格よりも排出量で旅行サービスを選択

大部分の旅行者は価格で旅行サービスを検索している。しかし、今後グリーントラベルの重要度が増すにつれて、フライトや宿泊で実際に排出される二酸化炭素量にも基づいて、航空座席を検索したいと望む旅行者も増えてくるだろう。たとえば、ロンドンからニューヨークのフライトを検索するとき、1座席あたりの排出量が600キロ以下のフライトを探し、1泊1部屋あたり25キロ以下の宿泊を希望する旅行者を想像してほしい。そうなれば、検索エンジンには新しいタグや選択ワードが必要になってくるだろう。

■二酸化炭素排出を相殺するモデルの簡素化

航空会社の二酸化炭素排出を相殺するプロセスは複雑だ。そのために、大部分の旅行者がそのオプションから目を背けてしまう。そのオプションを購入しようと決めた数少ない旅行者も、実際に相殺される量の効果は低く、環境への影響に対していくら使われているのかを知ると、継続して購入することを止めてしまうかもしれない。今後、旅行者一人ひとりの相殺量の総計を組み込んだ新しい排出量相殺プロセスが求められるだろう。

■カーボン・トラベラー・プログラム

今後3年のうちに、旅行者の二酸化炭素排出量への意識を高めるために、新しいタイプのロイヤルティ・プログラムが出てくるかもしれない。このプログラムは、あらゆる旅行サプライヤーとシームレスに繋がるのではないか。効率的な二酸化炭素排出に貢献した旅行者には、ある特定のバッジが与えられ、搭乗券、ラゲージタグ、クレジットカード、あるいはロイヤルティ・プログラムで、そのステータスを表示できるようになるかもしれない。可能ならば、航空会社は機内でそうしたステータスを持っている乗客がどれほど搭乗しているのかをアナウンスすれば、二酸化炭素排出に意識の高いことはクールだと思わせることができるかもしれない。

■旅行者の行動の変化

二酸化炭素排出量の削減に直接つながるサービスを求める旅行者は今後増えていくだろう。たとえば、旅先では衣服をレンタルすることで手荷物を減らす。現地ではできるだけ電気自動車を利用する。持続可能な代替燃料を使用し、信頼できる排出量報告を行う航空会社を選ぶ。

■グリーン・エアポート

二酸化炭素排出の改善を進める空港をサポートしようとする旅行者は増えていくだろう。こうした取り組みにはAIが使われるかもしれない。定時出発率を高め、航空機の移動には電気トーイングカーを活用し、エプロンでのタクシング時間を最小限に抑える。また、再生可能エネルギーを利用した発電システムや効率的な廃棄物リサイクルも必要だろう。

■短距離旅行の回避

二酸化炭素排出を抑えるために、国内旅行や短距離旅行ではフライトを避けるという新しいトレンドが出てきた。科学的見地から、500マイル以下のフライトが、1時間の飛行で乗客一人あたりの二酸化炭素排出量が最も多いという。今後、政府が新しい税制を導入したり、あるいは航空会社に排出量の規制を課したりするかもしれない。そうした規制によって、90分以内のフライトがなくなることも考えられる。もっとも、その前に、旅行者の方が先に短距離フライトを避け始めるかもしれない。

そうした規制を導入することは可能だろうか。期間毎に90分未満のフライトの割合を測りながら旅行をすると、旅程やビジネスにどのような影響が起こるだろうか。

どのように始めるべきか

バイヤーであれ、サプライヤーであれ、すぐにできることは多くある。バイヤーであれば、2020年に排出される二酸化炭素量を計測する基本的なモデルを構築すること。サプライヤーであれば、顧客向けに信頼できるデータポイントを確立すること。

私は、この記事が気候変動対策に取り組むきっかけになればと思っている。この記事に対するコメントやフィードバックは大歓迎だ。私は旅行をすることをやめないが、今後10年、私自身の二酸化炭素排出を減らしていくことにもっと気を配っていこうと思っている。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Are you ready to create and manage a green travel policy?

著者:ジェレミー・ダイボール氏、アマデウス 決済業務担当責任者

寄稿者 Johnny Thorsen: Amex Digital Labs 旅行戦略・パートナシップ担当副社長

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