近畿日本ツーリスト、 抜本改革の詳細を読み解いてみた - クラツーはシニアでない顧客開拓、個人旅行はアバター接客へ

コロナ禍での生き残りを賭けて、店頭3分の2閉鎖、募集型企画旅行「メイト」「ホリデイ」販売終了などに踏み切ることを明らかにしたKNT-CTホールディングス。抜本的な事業構造改革のなかで、個人旅行の中核にすえるのがクラブツーリズム、ウェブ販売だ。近ツーはどう変わろうとしているのか。2020月11月11日に開催された記者会見での発表を軸に探ってみる。

クラツー、「新・クラブ1000事業」と「シニア以外の客層」拡大へ

現在、約700万人の会員を抱えるクラブツーリズム(クラツー)。会員組織を軸にしたダイレクトマーケティング型の個人旅行事業を展開しており、ひとり旅、山旅といった独創的な企画力に基づくテーマ旅行でファンをコミュニティ化し、高い収益力を維持しているのが特徴だ。

事業構造改革におけるクラツー再構築の中核は「新・クラブ1000事業」。従来、同社のテーマ旅行の源ともなっているさまざまな趣味・嗜好のクラブ(コミュニティ)は、リアルな場での交流が中心となっていたが、今後はオンライン上で集える機会を拡大する。クラツーの会員はネット弱者とも言われるシニアが中心だが、会見の場でKNT-CTホールディングス代表取締役専務の小山佳延氏は、「クラツーのウェブ販売比率が約4割に上昇しているのに加え、今後はシニア以外の客層を増やす事業にしたい」と強調した。

各クラブでは専門性、希少性のある趣味の講座、座談会、イベントなどを一部有料で提供。特定の趣味の顧客をターゲットとする企業に、クラブへの商品企画や宣伝広告を行える機会を提供し、新たな収益化を目指す。事業をフランチャイズ化し、DMOなどと連携することでより特色ある着地型商品の開発、近ツーの法人事業とも連携して企業とのアライアンスを強化し、協業による新しい領域でのクラブ創設も図る。「新・クラブ1000事業」は2021年の6月に開始する予定で、2024年度までに有料会員数100万人の獲得を目標に掲げる。

ネット販売強化、アバターのオンライン接客に移行

一方、長年、店頭販売の主力だった国内旅行「メイト」、海外旅行「ホリデイ」ブランドを2021年3月末に終了してダイナミックパッケージに移行。KNT個人旅行店舗数を現在の138店舗から2022年3月末までに約3分の1に縮小するなど、大きく転換するKNTの個人旅行はどうなるのか。改革の背景について、KNT-CTホールディングス代表取締役社長の米田昭正氏は、「コロナ禍収束後も、旅行販売がさらにウェブにシフトし、交通・宿泊機関の直販化、ダイナミックプライシングの加速が進む」と話す。

ダイナミックパッケージなどウェブ販売への集中とともに、新たな接客サービスとして導入するのは旅の専門家「旅のコンシェルジュ」によるアドバイザリーサービスである。従来の「旅のコンシェルジュ」は店舗にテレビ電話窓口を設置。長時間待たずに接客が受けられること、特にコロナ禍では3密回避対策としても提案していたが、今後は店舗ではなくウェブ上に開設する。

アバターによるオンライン接客へと全般的に移行するもので、ダイナミックパッケージの購入についてもヒューマンタッチなリモート接客の提供を強みとしたい考えだ。

ただ、近ツーは従来からメイト、ホリデイの販売を主流にしてきた地方の提携販売店も多数抱える。この点について代表取締役社長の米田氏は、「メイト、ホリデイの販売終了は、紙のパンフレット中心の販売体制から脱却するという意味もある。新しいダイナミックパッケージの募集型企画旅行はウェブからスタートするが、(置かれた環境が異なる)提携店には紙媒体での送付も行っていく」との方針を明らかにした。

2020年4~9月は168億の純損失

コロナ禍であえぐ旅行業界の中で、いち早く改革に乗り出したKNT-CTホールディングス。新型コロナの影響が直撃した2021年3月期第2四半期連結累計期間(2020年4月1日~9月30日)の業績は、売上高が前年同期比92.6%減の158億6500万円、経費削減、雇用調整助成金などで補ったものの、純利益は168億4600万円の赤字(前年同期は20億5500万円の黒字)と著しく落ち込んだ。従業員の痛みをも伴う施策を果敢に進めることで、再び成長軌道に乗せることができるか、真価が問われようとしている。

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