ワーケーションで成功している企業の取り組みとは? ユニリーバの事例から見る効果と課題、地域に求めること

地域活性化の新たな切り口として注目されているワーケーションを、制度として導入する企業も増えている。ワーケーションを利用する企業側はどんなことを求め、地域側はどのように受け入れればいいのか。2020年10月28日にJTBが主催したオンラインセミナーで、ワーケーションを積極的に導入しているユニリーバ・ジャパンの人事総務本部長が企業の立場から見たワーケーションの効果について語り、同社が連携する福井県高浜町での受け入れ事例が紹介された。

社員の7割がポジティブな変化を実感、生産性は平均30%向上

洗剤やヘアケアなどの日用品メーカーの日本法人、ユニリーバ・ジャパンでは働く場所と時間を、社員がフレキシブルに選べる「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」制度を2016年7月から導入している。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長 島田由香氏ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田由香取締役・人事総務本部長は「働き方のこれからのあたりまえ ― ワーケーション」と題したプレゼンテーションをおこなった。島田氏は、WAA制度を導入した背景として「社員自身が時間や場所に縛られずに働き、心身ともに良い状態で結果を出すことが大事」と述べ、この延長線上としてワーケーションが積極的に推進されていることを明かした。

WAAの効果について島田氏は「社員の68%が毎日の生活にポジティブな変化を、75%が生産性の向上を実感しており、生産性が下がったと感じる社員は5.5%にとどまっている。実際、WAA導入以前よりも以後の方が、生産性が平均30%向上しており、30%の社員が、労働時間が短くなったと感じている」と具対的なデータを挙げた。

島田氏も、今年の夏に和歌山県の南紀白浜でワーケーションを2週間おこない、「朝8時半から夜7〜8時頃までオンラインで仕事をおこない、朝晩は温泉に入ることで、非常にリフレッシュできた」と感想を述べた。

「在宅のリモートワークと全く同じ勤務形態だが、パソコンから少し目をあげると海が一望でき、自宅よりも効率的に仕事が進んだ。仕事中に緑や海などの自然風景が視野に入ることは、想像以上にポジティブな効果が大きいと感じた」(島田氏)

社員が地域課題に取り組み、地域が仕事場や宿泊代金を支援する取り組みも

ユニリーバ・ジャパンでは、2019年から日本の地方自治体と提携をおこない、ワーケーションと地域創生を組み合わせた「地域de WAA」という取り組みをおこなっている。「WAA制度をスタートした後、この仕組みは地方創生と親和性が高いのではと考え、積極的に地域との連携を考えるようになった」(島田氏)。

ユニリーバから各地域に依頼するのは、社員がいつでも使えるコワーキング・スペースの貸与と宿泊代金へのサポート。地域に滞在する社員はそれぞれの知識や経験、労働力を使って地域の課題解決に関わり、その対価として滞在への支援を受けるという仕組みだ。

現在、北海道下川町、宮城県女川町、山形県酒田市、静岡県掛川市、山口県長門市、宮崎県新富町、福井県高浜町の7地方自治体と提携している。「日本全国の地方自治体から、提携についてたくさんリクエストをいただいている」と島田氏は述べ、この取り組みに対する関心が高いことを明らかにした。

子育て世代は学校が課題 地域と都市のデュアルスクールも視野に

最も新しい「地域de WAA」の提携地域である福井県高浜町から、ワーケーションを担当する総合政策課の野村つとむ氏が登壇し、島田氏との対談がおこなわれた。福井県の最西端に位置する高浜町は美しい海岸線に恵まれ、ビーチの国際環境認証「ブルーフラッグ」を日本及びアジアで初めて取得している。

高浜町がユニリーバ・ジャパンから提携先として打診を受けたのは2019年12月で、野村氏がワーケーションという言葉を耳にしたのは島田氏と初めて会ったこの時が初めてだった。その2ヶ月後の2020年2月に、高浜町は同社と正式に提携契約を結び、そのスピード感には島田氏も驚いたという。

ユニリーバ・ジャパン島田由香氏(左)と福井県高浜町の野村つとむ氏

野村氏は「ワーケーションという言葉は初めて聞いたが、これまでも大学生が滞在して、地域課題を解決するという取り組みがおこなわれてきた。それを企業と一緒におこなうということで、今までの取り組みの延長線上にある。今あるものを応用しながら、これをきっかけに実現できていないことができると思った」。町からも迅速にOKが出たといい、「今後はさまざまな地域で、都市の社会人や企業が地域課題に取り組むケースが増えるのでは」との見解を語った。

野村氏が今後の課題として挙げたのが、子育て世代の家族によるワーケーションの受け入れだ。「子供の学校があるので、ワーケーションに行けないという家族も多い。地域の学校と都市部の学校が連携して、子供を欠席扱いにせず、継続して学習できる環境が整ってくれば、家族でのワーケーションが可能になると思う」。

この野村氏の意見に対し、自らも息子を育てる子育て世代の島田氏は強く賛同。「大人だけでなく、都市部と地域の子供が交流することは、お互いにとっていい効果を生む。一部の地域で導入されているデュアルスクールが、ワーケーションをきっかけに拡大することを望む」との考えだ。

企業版ふるさと納税の仕組みでワーケーションを

このセミナーでは、カルティブ社の企業版ふるさと納税コンサルタント、小坪拓也氏から、企業版ふるさと納税についての説明もおこなわれた。企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附をおこなった場合、その約6割を法人関係税から税額控除できる仕組みだ。

小坪氏は、2016年からの2018年までの3年間で納税額が約4.6倍に増加し、約800社におこなったアンケートで、50%以上が「企業版ふるさと納税の活用を検討したい」と回答したデータを挙げ、「企業との連携による地方活性化のため、今後はワーケーションを軸とした企業版ふるさと納税の活用がより拡大するだろう」と述べた。

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