GoTo再開時に向けて、東京都民がGoTo適用時に目指した観光地、目的地選びの変化を振り返る -トラベルボイスLIVEレポート

感染者数の拡大で、年末年始はGoToトラベル事業(GoTo)は全国的に一時停止となった。そして、2度目の緊急事態宣言が発出された今、観光産業の打ち手は限定されている。今後も感染状況は小康期と拡大期の波が繰り返され、波の大きさは違っても、その都度、需要喚起と自粛が繰り返されることが想定される。旅行者が動き出す感染の小康期に向け、送客する旅行関係者と誘致する地域の事業者やDMOは、いま何ができるのか。

トラベルボイスは、昨年12月初めにナビタイムジャパンと共催でオンラインセミナー「トラベルボイスLIVE」を開催。「GoTo東京追加で都民はどこを目指したか。そして今、誘致するDMOがすべきこととは?」をテーマに、昨夏のGoTo開始時に除外となった東京都民が、GoTo適用後に関心を寄せた旅行先とその旅行形態を分析した。

都道府県で最大の人口を持つ東京がGoTo追加になったことのインパクトを探る目的で開催したウェビナーだが、コロナ禍の旅行者行動を分析したという点で、今後の対策の参考になるはずだ。

この機会に「今まで行っていなかったところに行く」

11月24日に感染の再拡大が先行した大阪市と札幌市のGoTo適用除外が発表され、LIVEが開催された12月3日、4日の頃には、外出自粛の傾向が出始めた。ナビタイムジャパン、インバウンド事業部部長の藤澤政志氏によると、その時点で全体として前週比約30%程度の移動の減少がリアルタイムで見えていたという。

では、GoTo適用除外からGoTo開始を経験した東京都民の移動は、どう変わっていったのか。

藤澤氏は、ナビタイムが提供する消費者向けサービスの目的地検索数の推移から、コロナ以降は自転車の検索数が前年比50%超の推移が続き、自動車も前年レベルに戻ってきたが、公共交通機関は前年割れが続く厳しい状況にあると説明。その上で、東京都内から他の道府県に行く場合の移動手段となる自動車と公共交通機関について、検索結果の変化を発表した。

双方とも共通しているのは、都道府県別では全般的に東京から比較的近い関東近郊の県への訪問が多く、なかでも温泉地への訪問が人気であること。検索数を10月の最初の週末と前月同期を比べた増加率のランキングでは、より移動手段の特性が表れ、自動車では京都府(1.57倍)以外では、福島県(1.48倍)、群馬県(1.38倍)、栃木県(1.29倍)、長野県(1.22倍)など、北関東や甲信地域の近郊県の増加が顕著だった。

スポット別でみると、1位国営ひたち海浜公園(茨城県)、2位日光東照宮(栃木県)、3位草津温泉(群馬県)など、屋外で自然の景色を楽しめる観光地や温泉地を訪れる傾向が増えた。

当日のスライド:ナビタイム発表資料

一方、公共交通での検索の増加率では、石川県(1.57倍)、京都府(1.46倍)、長崎県(1.40倍)、福井県(1.38倍)など、自動車より遠方の府県が増加。さらに訪問先での行動を深堀してみると、1位の石川県内のスポット検索数は1位和倉温泉、2位兼六園、2位金沢21世紀美術館の順で、能登半島の北部の方にも観光に出かけている傾向がみられた。「新幹線で金沢駅まで行き、さらにその先へ、公共交通機関で足を延ばしていた傾向がある」(藤澤氏)という。

当日のスライド:ナビタイム発表資料

京都府や長崎県、福井県でのスポット検索では、ハウステンボス(長崎県)や恐竜博物館(福井県)、清水寺(京都府)などの人気の定番観光地が上位に並んだ。こうした結果に藤澤氏は、「京都は人が少ない今こそ、人気のスポットに行く。長崎県や福井県は(GoToで補助のある)この機会に、今まで行っていなかったところに行こうという感情も出たのではないか」と説明。これらを踏まえ、GoTo解禁後は、「アクセスのよい観光地のさらにその先と、今まで行ったことのない旅行先の定番観光地が伸びている」という。

目的地選びの変化にも注目

さらに藤澤氏は外部調査の結果を踏まえ、目的地選びの段階で変化が生じていることを指摘した。

その1つが、旅行の下調べの実施時期。ヤフーが発表した「箱根・熱海・軽井沢、GoTo注目地域から見る行動変化レポート」では、観光地の天気を検索した時期について、19年度は出発日の約2週間前から調べる人が増えるが、20年度のコロナ禍では約1週間前からになっており、この結果を藤澤氏は「出発日に対してプランニングが間際になっている。今週末の計画や、今日ここに行くなど、直前に行く場所を決めている」と解説した。

この傾向はエクスペディアが発表した予約データにも表れており、全体の15%が0~3日以内で宿泊期間を指定。モバイル経由の国内旅行予約に限ると、宿泊当日~6日前までの直前予約が全体の5割に達しており、行くと決めてから予約をして実際に旅行をするまでのタイミングが非常に近くなっているという。これらを踏まえ、藤澤氏は観光地やホテルなどの地域の誘客側がすべきこととして、「これまで以上にリアルタイムの情報が求められている。感染対策と同時に、現地発の観光情報もリアルタイムで配信する必要がある」と提言した。

さらに藤澤氏は、消費者の情報感度の変化も指摘。TikTokが発表したユーザー白書「回答から回遊へ興味で突破する時代の再来」では、消費者の最近の情報検索の仕方について、「特定のワードを調べるより自分にあった情報や自分にとって未知なことを漠然と調べる傾向が増えている」(藤澤氏)という。

これはどういうことか。藤澤氏は、「直接的な回答を鵜呑みにするのではなく、様々な回答の中から取捨選択する傾向になっている。検索でヒットしない情報にこそ発見があり、シャットアウトされて、なかなかリーチできない情報ほど価値が高いと考えるようになった」と解説。そこで生まれた興味関心が購買欲を刺激し、瞬発的な消費を引き起こしているという。

藤澤氏は、「観光地の情報を求める際にも、この傾向が高まっていると思う。定番の観光地だけではなく、地元に何があるのかを検索する時代になってきた」とし、「そこで生まれた興味関心から一気に『行く』ことを決める。これも予約のタイミングの速さに繋がっているのではないか」と話した。

GoToを契機とする需要を獲得するために

これらの話を踏まえ、トラベルボイス鶴本は、まず東京都民がGoTo適用開始になった10月1日から、「すぐに動き、近距離に足を延ばして動いていたことがデータにも表れていたことが興味深かった」と指摘。また、長崎県や福井県などが増加したことについては「いつか行ってみたいと思っている場所が多いのでは」と述べ、「この動きは、GoToの補助の影響もあると思うか」と藤澤氏に質問した。藤澤氏はGoToの補助のない9月と適用になった10月の検索結果の比較であることから、「間違いなく影響があったと思う」と答えた。

さらに、鶴本は「未知への興味への検索傾向も非常に面白い」として、それを踏まえると「今までのマーケティングが変わってくる」と指摘した。藤澤氏も「今まではピンポイントで狙い澄ましたターゲットだったが、リコメンドされた情報ではなく選ぶ時代になってきた」と説明。これまで、目的地となる観光地の周辺情報は直接的な興味関心になると思われていなかったが、今後は「面での情報配信が重要になってきた」(藤澤氏)と誘致側に変化を促した。

ナビタイム藤澤氏(左)とトラベルボイス鶴本(右)

トラベルボイスLIVEでは毎回、視聴者にアンケートを行っている。今回はテーマに沿って「GoTo東京追加でビジネスに変化がありましたか?」を質問。すると、「とても良くなった」が28%、「まあまあ良くなった」が35%で、6割以上がGoTo東京追加後のビジネスは改善したと回答した。現在、感染拡大期の我慢の状況にあるが、出かけても大丈夫という判断の時期が来れば、需要はすぐに反応する。その時に備え、準備をしておきたい。

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