Googleトラベル、ホテル検索結果にバケーションレンタル(民泊)も追加、世界的な需要増加を背景に【外電】

グーグルが、ホテルと民泊の検索結果の表示で境界線を取り払い、まとめて扱う方向へと進んでいる。

検索最大手の同社によると、2020年の検索数では「beach rentals(ビーチの賃貸物件)」と「staycations(ステイケーション)」が世界全体で100%以上増加しているという。そこで、こうした傾向に対応できるよう、同じデスティネーションにあるバケーションレンタル(民泊)とホテルを一度の検索結果でまとめて表示できるようにする考えだ。

※編集部・注:「バケーションレンタル」とは、個人が所有している高級別荘を、使用していない期間は旅行者に貸し出すビジネスのこと。日本語では「民泊」という言葉が使われているが、総じてワンランク上の別荘がメインとなっている。

第一弾として、グーグル・トラベル(google.com/travel)では2021年5月27日から、一部地域で、ホテルと民泊の検索結果が一緒に表示されるようになった。

同サイトの検索フィルターに「vacation rentals/バケーションレンタル(民泊)」という項目が加わったのは2019年から。ここでの検索では、引き続き、ホテル以外の宿泊施設だけが対象になる。一方、同フィルターを選択しないで検索をかけると、ホテルとバケーションレンタルの両方を対象とした検索結果がデフォルトで表示されるようになる。

検索結果の並び順はオーガニック方式、つまり検索条件により近いところから上位に表示されるとしている。検索対象になるサプライヤーの詳細は不明だが、同サイトで検索してみると、トリップアドバイザーの他、Vacasa、Red Awning、Sonder、Rentals Unitedなどの社名が出てくる。

一方、過去2年ほど検索対象だったエクスペディア・グループのバケーションレンタルサイト「バーボ」は見当たらない。今年2月の決算会見時、ピーター・カーン最高経営責任者(CEO)は(グーグル・バケーションから)すでに撤退したことを明らかにしており、その理由として「投資額に見合うほどの販売拡大にはつながっていないと判断した。顧客体験においても、特段の価値は見いだせなかった。ちょうどバーボに直接、アクセスしてくる利用者が増えるタイミングだったことも一因だろう。結果として別の方法、私に言わせれば、より収益率の高い集客方法に切り替えた」と説明している。

なお現時点でブッキングドットコム、エアビーアンドビーがグーグルの「民泊」検索に参画しているのかどうかは不明だ。

グーグルでは、2021年5月27日に開催したオンライン・イベント「グーグル・マーケティング・ライブ」で、ホテルと民泊が一括検索ができる今回の新サービスを発表した。

「パンデミック発生以降、民泊への関心がどんどん高くなっており、こうしたユーザーの嗜好に合うプロダクト改良に取り組んできた。(グーグル・トラベルで)宿泊先を探す時に、ホテルと民泊の両方を一緒に検索し、まとめて結果を表示できるようになったのは、今回が初めて」と同社広報は説明している。

業界側の反応

確かにグーグルでは初めてだが、すでにOTA各社では、ホテルとレンタル物件をまとめて検索し、結果を表示できるようになって久しい。ブッキングドットコムによると、同社が取り扱う非ホテル宿泊施設は600万軒を超えた。エクスペディア・グループでは、傘下の各OTAサイトで、バーボのアピールに力を入れている。

「グーグルがやっていることは、もはや改革ではなく、ただの模倣」と話すのは、ホスピタリティー・旅行テクノロジーを専門とするコンサルタント、マックス・スターコフ氏だ。

「エアビーやバーボを含む民泊ブランドが宿泊需要に占めるシェアは、2020年は29%に拡大した。ちなみに2019年は19%。それでとうとうグーグルまでがこの分野に進出してきた」。

ミライ社のパブロ・デルガド最高経営責任者(CEO)も同様に「目新しさはないし、破壊的でもない」。とはいえ「民泊施設にとっては需要拡大の大きなチャンスになる。現在、グーグルを利用している消費者のほとんどはホテルを探している人なので。重要になるのはインクリメンタリティ(増分割合効果)。その分、ホテルの需要は減り、短期的にはマイナス影響を被るだろう」。

一方、グーグルのパートナーになっているRed Awning社のCEO、ティム・チョート氏は、レンタル物件とホテルをまとめる方針への転換は、変わりゆく消費者意識を反映する動きだと評する。

「宿泊施設において、民泊が選択肢の中の一つではなく、今や主役の座にあることを示唆している」との考えだ。

「実際、レジャー目的の旅行では、民泊を希望する人が多くなっており、条件に合う物件が見つからない時の“代替案”がホテルというのが現状。こうしたユーザー動向を業界の誰よりもよく見ているのがグーグルなので、民泊が主流になったことを裏付ける展開だ」(同氏)。

スターコフ氏は、既存のホテルがこうしたニーズの一部を取り込むことも可能だと話す。「週や月単位の料金を設定したり、スイートや家族向けの客室キャンペーンをやったり。清掃管理が行き届いていることや、1泊当たり75~350ドルものクリーニング手数料がない(レンタル物件により様々な設定あり)ことを宣伝すれば、地域を代表する人気施設になるかもしれない」。

ますます多彩になるレンタル物件

グーグルでは日々、民泊関連の検索サービスが進化を続けており、今回の変更もその一部にすぎない。

同社が最初に民泊の取扱いを開始したのは2019年3月で、「vacation rentals(民泊)」のフィルターをグーグル・トラベルのホテル検索ページに追加した。同時に「vacation rentals in Boston(ボストンの民泊)」などの検索に対して、民泊の結果を表示するようになった。

続いて2020年夏のシステム刷新では、同フィルターを利用すると、グーグル・トラベル内に新設された「vacation rentals(民泊)」のタブに誘導されるようになった。もちろん直接、検索することもできる。そして今回、グーグル・トラベルで宿泊を検索すると、その対象に民泊も含まれるようになった。

グーグルにおける民泊関連の検索データ結果からは、他と同じようなトレンドが浮き彫りになる。過去一年間、エアビーやバーボなどの需要が急増しており、プライベート利用できて、ソーシャルディスタンスが確保できる宿泊施設が求められていることが伺える。

デロイトが5月下旬に発表した調査結果では、旅行者の4分の1以上(28%)がパンデミック中に初めて民泊に滞在、またはこの夏に滞在を予定している。また2021年夏の休暇でこうしたレンタル物件を選んだ人のうち10人中8人は、今後の旅行で、少なくとも半分はレンタル物件を利用するだろうと答えている。

消費者の多くは、ホテルと民泊の両方を比較検討しているので、グーグルの新しい検索方式は歓迎されることになりそうだ。

またデロイトの調査では、民泊に滞在する旅行者の方が、クロス・ショッピングする傾向が高く、同53%はホテルも比較検討していると回答。これに対し、ホテル利用者のうち、レンタル物件も検討した人は15%にとどまった。

グーグルでは、今回の民泊検索のアップデートに加えて、検索テキスト広告のエクステンション(拡張機能)内で、ホテル・アドのフィードを自動的に表示していく予定だ。

これにより、広告を出すホテルは、ランディングページ、ホテル情報、料金と空室状況などのデータを既存のフィードから取り出し、検索キャンペーンで活用できるようになる。グーグルによると、現時点でエクステンション対応できるのは一部の広告主に限られるが、数週間以内に対象を拡大する計画だ。

そのほか、2020年6月から導入した宿泊分のみを対象とするコミッション制(pay-per-stay)プログラムもアップデートしており、出稿するパートナー企業のキャンセル・リスク軽減を目指す。

具体的には、運用面での煩雑さを減らすため、グーグル・アドで予約毎のレポートを作成し、ホテル側が、キャンセルになった予約と、実際に宿泊があったものを確認するのに役立ててもらう。キャンセル発生後のパフォーマンス指標も提供する。

(なお、フォーカスワイヤではエアビー、バーボ、ブッキングドットコムにコメントを求めたが、回答はなかった。)

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(Phocuswire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Google Travel adds vacation rentals alongside hotels in search results

著者:ミトラ・ソレルズ氏

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