スノーピークが推進する観光事業とは? キャンプの境界超えた関係人口の創出につながる取り組みと、本社に新設するリゾートを取材した

アウトドア製品の開発・販売を行うスノーピーク社は、新潟県三条市の新潟本社で、同社パートナー向けに「Snow Peak LIFE EXPO 2021」を開催、「Snow Peak 未来構想プロジェクト」を発表した。イベントには、小泉進次郎環境大臣もオンラインで参加。観光事業や地域DMOの設立など地方創生事業を積極的に行う同社の展開を取材してきた。

スノーピークは、「衣・食・住・働・遊」の5つテーマでライフバリューフィールドの実現を目指している。その第1弾として、本社敷地を従来の5万坪から15万坪に拡大。従来のキャンビング施設に加えて、2022年春に温浴複合リゾート「FIELD SUITE SPA HEADQUARTER(フィールド・スイート・スパ・ヘッドクォーターズ)」を開業する。

この施設は、隈研吾氏が設計。日本三百名山に数えられる栗ケ岳を望む全面ガラス張りとし、それぞれの場所から景観を楽しめる雁行配置で設計された。また、インテリアのコンセプトはスノーピークの伝統である「ハート・オブ・キャンピング」。地元の木材を活用し、薪のイメージを大事にした(隈氏)。

露天風呂は広い外気浴のデッキを備え、サウナでは焚き火を囲むような感覚で楽しめる空間を創出する。また、地産地消のレストランのほか、宿泊施設として、スノーピーク独自のモバイルハウス「住箱」に加えて、2ベットルーム2棟、4ベッドルーム1棟のヴィラタイプも整備。冬には豪雪と一体となるような設計で建設される。

開放的な設計のヴィラ(報道資料より)隈氏は、「コロナは建築の歴史の折り返し地点。都市から自然への大きな時代の節目にある。FIELD SUITE SPA は、コロナ後の新しいライフスタイルを体現した施設になる」と話し、新施設の特徴を説明した。

FIELD SUITE SPA HEADQUARTERの設計コンセプトを説明する隈氏新潟本社の敷地はキャンプフィールドとしても運営されているが、今後は、あらゆる人が楽しめる空間へと進化させるとともに、世界中からクリエイターやパートナー企業が集まり、新しいモノやコトを生み出す研究開発の拠点にしていく。

EXPOで同社社長の山井梨沙氏は、「あらゆるライフシーンに関わるブランドに進化し、すべてを可視化したライフバリューフィールドを新潟本社で構築していく」と今後の事業展開を説明した。同社は、「未来は、自然の方にある。」を基本コンセプトに、野遊びによる人間性の回復を追求。「ライフ・ビオトープ」という新たな取組みを通じて、パートナー企業との新しい生態系を築き、「境界を設けず、新しい価値を提案していく」(山井社長)ことで、未来構想プロジェクトの実現を目指す。

また、現在、日本のキャンプ人口は約7%に過ぎないことから、残りの93%のキャンプ未経験者に向けて、衣・食・住・働・遊のテーマで新しい価値を提案することで、自然回帰への重要性を訴えるとともに、キャンプ人口の増加にもつなげていきたい考えだ。

(左から)山井太会長、山井梨沙社長、新潟県花角英世知事。「コロナは、人と人、人と自然との共生を見つめ直す機会になっている」(花角知事)地域創生事業を積極展開、キャンプの境界を超えて関係人口の創出も

「Snow Peak LIFE EXPO 2021」では、衣・食・住・働・遊でテントブースを設け、それぞれの取り組みを展示。参加したパートナー企業や自治体に向けて、同社が進める事業を紹介した。

スノーピークでは、5つのテーマに加えて、それぞれを横軸として、地方創生事業も積極的に推進している。2017年には「スノーピーク地域創生コンサルティング」を設立。全国各地で野遊び拠点を直営およびフランチャイズで展開し、コンサルティングのほか、地域の体験開発、製品開発、モニタリングキャンプなどで地域活性化を支援している。

たとえば、北海道帯広市では、同社が出資し地域DMO「デスティネーション十勝」を設立。冬季の集客に課題があったことから、ウィンターグランピングツアーなどを企画・実施した。また、大分県日田市では、老朽化したキャンプ場を自然資源を生かした複合型レジャー施設に改修するコンサルティングを実施。地域事業者との連携で、特産品の「日田下駄」をブランド化し、海外への販路も開拓した。

EXPOでは地方創生事業の展示もこのほか、スノーピーク独自のツーリズム事業も2018年から展開している。その土地に根づいた労働と作業着の関係を追体験する「ローカル・ウェア・ツーリズム」地域の食文化に焦点を当てた「ローカル・フード・ツーリズム」、地域の風土や生活を体験する「ローカル・ライフ・ツーリズム」。すべて自社オペレーションで催行している。

ツーリズム事業について、山井氏は「リピーターが多いのに驚いている」と発言。地域との関係人口の創出につながる動きに手応えを示す。また、「一社だけでは、こうしたツアーはできない。地域のパートナーや自治体と協力して、将来的には地域での自走を目指して、広げていきたい」と、ツーリズムによる地方創生に意欲を示した。

「焚き火トーク」では参加者がテーマごとに意見交換。ネットワーキングの機会にも。小泉環境大臣、「世界クラスの国立公園をつくっていきたい」

EXPOには、小泉進次郎環境大臣もオンラインで参加。山井氏とトークセッションを行った。そのなかで、小泉大臣は、今年4月の通常国会で「自然公園法の一部を改正する法律案」が可決されたことについて触れ、「これまでは自然保護の一本足打法だったが、この改正により、保護と利活用の両輪で好循環を生み出していくことが可能になる」と説明した。

そのうえで、国立公園の利用について、「最近ではワーケーションなどの需要も高まっている。今後も国立公園の新たに価値を考えて、自然との接点を増やすことで、気候変動などの環境問題への理解を深めてもらえれば」との考えを示し、国立公園のオフィシャルパートナーシップ企業となっているスノーピークの取り組みに期待を寄せた。

また、「『明日の日本を支える観光ビジョン』に基づいて、国立公園満喫プロジェクトを推進し、世界クラスの国立公園をつくっていきたい」と意欲を示すとともに、将来的には入域料なども視野に入れていくべきとの考えも明らかにした。

小泉大臣「環境大臣になって、いかに環境に負荷かがかる生活をしていたかを知った。今、それを変えているところ。それが楽しい」

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