ポルシェが日本で開業した新たな観光施設、その販売戦略を聞いてきた、本物のドライブ体験でインバウンドやMICEを狙う

ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京 (PEC東京)が2021年10月1日、千葉県木更津市にオープンした。広大な土地に1周2.1kmのコースを含めて運転スキルを磨く6ヶ所のドライビングモジュールを展開。ドライビング体験を通じて、ポルシェの世界観を体感できる「大人のテーマパーク」を目指す。世界的な高級車で知られる同社が日本のタビナカ市場で挑む、新たな観光施設を取材した。

市販車ポルシェでドライビング技術を習得

ポルシェ・エクスペリエンスセンターは、英国シルバーストンで開業して以降、世界各地の都市に展開。PEC東京は世界で9番目のポルシェ体験施設となる。ポルシェは、2030年までの中期計画のなかで「感動体験」「製品体験」「ブランド体験」を消費者に提供していくことを掲げており、ポルシェ・エクスペリエンスセンターはその一角を担う施設に位置づけられている。

PEC東京副所長の関本清人氏は「ポルシェオーナーも、そうでない人も、ポルシェを実際に運転することで、その製品技術を体験してもらうとともに、ドライビング技術を磨いてもらえる施設」と説明する。

PEC東京の特徴は、メインとなる1周2.1kmのハンドリングトラックに加えて、5ヶ所のドライバー育成モジュールが設けられているところ。たとえば、「ドリフトサークル」では、実際にドリフトを体験することで、ポルシェのアンダーステアやオーバーステアの特性を学ぶ。「ローフリクション・ハンドリング・コース」では摩擦の少ない路面でスリップ時のハンドリングを体験し、「ダイナミック・エリア」では適切なブレーキング技術を磨く。

関本氏は、各モジュールについて、「ポルシェの優秀な技術を知ってもらうだけでなく、公道ではできないドライビングテクニックを体験することで、日常の運転にも役立ててもらう場所」と話す。使用するポルシェは、ナンバープレート付きの市販車だ。

体験は90分のセッション。経験豊富なインストラクターが同乗し、アドバイスを受けながら、各モジュールで実践していく。

PEC東京副所長の関本氏「ポルシェをみんなに愛されるブランドに」MICEのユニークベニューとしての活用も視野に

PEC東京のもうひとつの特徴は、オフ・ザ・トラックの施設も充実しているところ。格子柄で日本文化を表現したセンター内には、PEC東京のコースに加えて、「ル・マン」「デイトナ」「モナコ」など世界有数のレーストラックを再現するシュミレーター5台を設置。プロのレーシングドライバーも使用する本格的なもので、リアルなドライビング挙動を体験することができるという。

シュミレーター体験は30分と60分コース

また、ダイニングでは2階に本格的な「レストラン906」と1階に「956カフェ」を併設。ミーティングルームや会議室も用意しており、企業のチームビルディングや研修などMICEのユニークベニューとしての活用も見据えている。1階のポルシェ展示スペースでは、パーティーなどのイベント企画も可能だという。

「レストラン906」は一般でも利用することが可能大規模会議室のほかミーティングルームも完備

このほか、関本氏は環境への配慮も強調する。総面積43ヘクタールのうちPEC東京では19ヘクタールを使用。開業にあたっては。千葉県と「環境保全協定」を締結した。「里山の自然を残し、多くの山桜をそのまま生かした。山からの水を循環させる仕組みを作るなど、環境と共存する施設にこだわった」と説明する。

開業月の予約は7~8割、企業研修の貸切も

オープンに向けて、予約は7月29日から受付を開始。「反響は大きく」(関本氏)、コロナ禍にありながらも9月中旬段階で10月の予約は7~8割となった。企業研修のための貸切予約もあると明かす。

ドライビングプログラムは車種ごとに予約をするが、一番人気はやはり名車として名高い「ポルシェ911カレラ」だという。予約には会員登録が必要だが、ポルシェオーナーと非オーナーとの割合は半々。会員登録のみも含めると開業前ですでに4000人に達した。関本氏は「リピーターを増やしていくために、会員向けにいろいろな仕掛けをしていきたい」と意欲を示す。

ポルシェは敷居が高いと思われがちだが、「富裕層だけでなく、みんなに愛されるブランドとして、ファンを増やしていく」(関本氏)。現在は関東近郊が主要市場だが、成田空港から1時間、羽田空港から30分というロケーションを強みに、地方そして将来的にインバウンド需要の取り込みも視野に入れる。2022年度の集客目標は1万人だ。

その目標に向けて、今後はデジタルツールを中心にPRやメディア露出を増やしていくほか、販売では直販に加えて、OTAとの連携も検討していく。さらに、高級ホテルやエアラインなどとは共通の価値観を持つ顧客層を抱えているとの考えから、異業種とのタイアップも積極的に展開していきたい意向だ。

「大人のテーマパークにしていきたい」と関本氏。PEC東京は、レジャーからMICEまで、ポルシェのブランド力を全面に木更津から新しい感動体験を提供していく。

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