世界の観光事業者の56%が「値上げ」実施、サステナブル旅行の値上げ許容範囲は「10%まで」が最多 ―ユーロモニター分析

英市場調査会社のユーロモニターインターナショナルがこのほど発表した世界の観光産業の調査では、急激なインフレ、労働力不足、サプライチェーンの混乱が、旅行マーケットへのインパクトが大きい要因として多く挙がった。2022年のインフレ率は9%に達し、来年は少し下回るものの依然として6%になると予測している。

ユーロモニターが作成した「トラベル&ホスピタリティ・グローバル展望&イノベーション・ガイド」によると、最も多くの旅行事業者が「過去12カ月間の旅行ビジネスへの影響」が大きかった要因に挙げたのは「インフレ」で全体の6割以上。次いで「交通/輸送の混乱」「生産/流通コストの上昇」が続き、「原料コストの上昇」も5割以上を占めた。

こうしたなか、旅行事業者の回答者56%は値上げしているほか、「BNPL方式(後払い)など、様々な決済手法を検討」(約24%)するなど、ビジネスモデルや業務の改革による競争力維持に取り組んでいる様子が明らかになった。ユーロモニターでは「顧客ファーストの戦略に注力することが、今後の安定成長につながる」と指摘し、2つのカギとして、テクノロジーとサステナビリティを挙げた。

テクノロジーによる「顧客ロイヤルティ醸成」に期待

テクノロジー分野では、顧客体験をよりシームレスにする技術への関心が高いようだ。

「今後5年間、旅行ビジネスに大きな影響を与えそうなテクノロジー」を問う質問では、「ビッグデータ解析」が最多(65%以上)で、ユーザー体験のカスタマイズや、ターゲティング・マーケティングによる顧客ロイヤルティ醸成への効果が期待されている。

次いで多かったのは「AI(人工知能)」(49%)となり、トップ1~2位は2021年調査と同じ項目が並んだ。3位は「AR/VR(拡張現実/仮想現実)」(39%)となり、前回3位だった「IoT」は4位に後退した。5位は「クラウド」。

同調査では、「AR、VR活用により、購入前に、ホテル客室やデスティネーションをお試し体験することが可能になる」とし、その発展上にあるメタバース空間についても、「今はまだ初期段階だが、将来的には人々が集い、買い物や様々な体験を楽しむ場を作り出すために中心的な役割を果たすようになる」(ユーロモニター)との見方を示した。

「旅行の管理ができる自社アプリを提供している」と答えた旅行事業者は全体の45%、「AIなどの新技術を採用している」は33%だった。

また、消費者向け調査の回答からは、ミレニアル世代の50%がメタバースでのバーチャル体験への参加について「コンサートやスポーツ・イベントに参加するのと同じ」感覚で捉えていることが伺える。「VRヘッドセットを装着して、各地を旅行する」ことに肯定的な人は、消費者全体の44%を占めた。

ユーロモニターでは「メタバースやNFT(非代替性トークン)は今後、ツーリズムの在り方を大きく変えることになるだろう。物理的な世界と仮想世界が融合するなか、デスティネーション・マーケティングやロイヤルティ・プログラムでも新ツールの活用が進む」としている。

とはいえ、消費者の76%は「リアルな体験をすることは非常に重要」だと回答。「オンラインでのバーチャル体験」を支持した人は49%、「自分の嗜好に合わせてくれるテイラーメイドな体験」を挙げた人は58%だった。

「サステナブルな商品・サービスには高価格でも購入される」傾向に

また、今回の調査結果では、よりグリーンな旅行への関心の高まりもうかがえる。持続可能性に関する項目を少なくとも1つ選んだ消費者は全体の60%以上となった。一方、パッケージツアーやショッピング型デスティネーションなどマス・マーケット向けの項目も、同75%と多くの回答者から支持されているが、その差が縮まりつつあることに留意すべきだとしている。

「エコ・フレンドリーであることが理由であれば、価格が高くても支払う」とする消費者は増えており、旅行事業者の58%が自社顧客について「サステナブルな商品やサービスにはより多く払う傾向がある」と答えた。

顧客に受け入れてもらえる具体的な値上げ幅について、同調査では「10%まで」が最多で全体の3割弱。次いで「5%まで」(25%強)、「値上げは受け入れてもらえない」(25%弱)となった。

「SDGsに取り組んでいる」との回答は世界の旅行事業者の56%、「サステナブルな商品やオペレーションに投資している」は48%。

持続可能性に対する消費者意識の高まりは、旅行事業者の値上げを正当化する一因になり、2030年までのSDGs達成や2050年までの排出ガス「ネット・ゼロ」達成にも追い風になりそうだ。だが同時に、消費者の信頼を継続的に勝ち得るためには、マーケティングにおける透明性を担保できるかどうかも問われている。

ユーロモニターでは2022年春に実施した旅行産業および消費者向けの調査結果と、世界210カ国を網羅する独自の市場調査データベース「パスポート」をもとに、旅行・ホスピタリティ産業の現状や将来展望を予測・分析している。

トラベル&ホスピタリティ・グローバル展望&イノベーション・ガイド

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