地域と旅行者つなぐ「観光案内所」、リピーターを呼び込む敏腕スタッフが実践する、ファンづくりと満足度向上への活動とは?

地域と旅行者をつなぎ、タビナカのタッチポイントとして満足度向上に寄与する観光案内所。インバウンドの本格回復に期待が高まり、個人旅行化がすすむいま、その重要性があらためて見直されている。先ごろ、日本政府観光局(JNTO)が開催した「JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム」では、リピーターが多い別府市と新富士駅にある認定案内所のベテランスタッフが、案内所活用方法や運営の課題などを語った。

JNTOは「外国人観光案内所の設置・運営のあり方 方針」に基づき、外国人観光案内所の認定(カテゴリー1~3、パートナー施設)をしている。現在、JNTO認定外国人観光案内所は、全国に1500カ所以上。ネットでさまざまな情報が瞬時に得られるようになったいま、観光案内所には何が求められているのだろうか。

富士山が見えない日もある

「観光案内所は、聞かれることに答える場所から、シティプロモーションする場所へと進化しなければなりません」と話すのは、東海道新幹線の新富士駅内にある新富士観光案内所(カテゴリー2/JNTO認定案内所)の鈴木ちづる氏だ。

周辺に観光地や商店街がほとんどないにもかかわらず、“富士山に一番近い新幹線の駅”という立地を活かして活動。JRバスを待ち、降り立つ外国人観光客向けに、富士山が見られるポイントを紹介した英文パンフレット、職員が実走した日英併記サイクリングコース作成などを用意し、旅の相談に乗る。観光客が求める体験のノウハウを伝えるのはもちろん、ガイドブックにない体験を求める観光客に新たな提案も行っている。

新富士駅観光所ならではのユニークなおもてなしが、富士山が見えなかった日に発行している「男前証明書・べっぴん証明書」だ。富士山観光のトップシーズンである夏は、富士山が雲に隠れて見えないことが多い。一方で、外国人旅行者にとって「富士山を見る」という体験は、旅の大きな目的のひとつでもある。

そこで、わざわざ訪れた人に少しでも思い出を持ち帰ってもらおうと、「日本一の美女である富士山は、あなたが男前すぎるから、ぺっぴんすぎるから恥ずかしがって雲隠れしてしまった」という説明をしながら日英併記の証明書を発行。残念な思いだけで帰らせないという思いのサービスに、多くの旅行者が笑顔になるという。

新富士駅観光案内所のおもてなし

立ち寄らなければ出会えなかったローカル情報

すべての訪日外国人が観光案内所に立ち寄ることを計画しているわけではない。別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK(カテゴリー2/JNTO認定案内所)の稲積京子氏は、「前を通りかかっただけのお客様に、どれだけ別府の良さを伝えられるかがスタッフの腕の見せどころ」と力を込める。

店頭には、スタッフが実際に足を運んで見つけてきたおすすめスポットをコメントと写真付きで掲載した大人の身長大のボードを設置。ふと目をとめた観光客には、「お客様、今日はどちらへ行かれるご予定ですか?」「温泉はお好きですか?」と積極的に話しかける。特に、地元市民がよく訪れる温泉銭湯などの情報は、「観光案内所に立ち寄ったからこそ聞くことができた」などと喜ばれるそうだ。

別府駅の周辺マップ、地元スタッフが歩いて選んだおすすめスポットをボードにいまや現地を訪れる外国人の国籍・言語は多種多様。“Today’s available Languages”として、”English”、”日本語”、”Korea”、”Thai”などと、店頭に当日案内できる言語を掲示している取り組みも、安心して案内所に入ってきてもらうための仕掛けだ。

旅行者の限られた時間を大切に

目の前の旅行者に向き合い続けてきたことがうかがえる、別府市、新富士駅の観光所の取り組み。鈴木氏、稲積氏がともに強調したのが、「お客様の時間を大切にすること」だ。

鈴木氏は、「外国人旅行者は限られた時間で日本の旅を楽しんでくれている。無駄に案内所に留まらせず、的確な案内で送り出せるよう心がけている。もちろん、要望があれば、富士山に向けてJRバスが出発するギリギリまでコミュニケーションをとっている」と話す。

稲積氏も、「限られた時間を活かせるよう、たくさん時間をかけておもてなしの準備をしている」と同様の意見だ。これまでの旅行者の質問の蓄積から、わかりやすいタイムテーブル、無駄ないようスタッフのおすすめだけを載せたマップを用意。そして、旅につきもののトラブル、たとえばバス内での忘れ物などについても、外国人はその日に別府から移動してしまうことが少なくない。バスのルート、車体番号は事前に調べ上げており、すぐ対応できるようバス会社と連携している。

そして、両案内所にはリピーターが存在するという共通点も。地域を訪れるたびにお土産を持参して来所するリピーターも多いという。観光情報の提供とともに、トラブルや不安の解消など様々な相談に真摯に対応することで人と人とのつながりが構築され、結果としてリピーター化につながった。

短い時間で端的に旅行者の要望に応えるとともに、地域の看板としてファンづくりに努めている観光案内所。こうした活動が、訪日客の地域に対する満足度に与える影響は大きい。

そして、観光案内所が蓄積する数多くの旅行者のコミュニケーションや経験には、地域が推進する誘客活動や観光コンテンツの高付加価値化へのヒントがつまっていそうだ。

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