米国の旅行市場は、2022年の総予約高が前年比51％増の4222億ドル（約63兆円）と見事な回復ぶりだ。フォーカスライトがまとめた最新調査「米国オンライン旅行会社（OTA）マーケットレポート2022-2026」によると、オンラインでもオフラインでも米国の旅行市場は大幅に拡大しているが、流通チャネルについては、パンデミック中と比べて、動きに変化が見られる。
オンライン経由の予約は、2021年には全体の65％まで増加したものの、2022年は63％とわずかながら縮小。その分、オフライン経由の予約がシェアを取り戻した。また、OTAが米国の旅行市場に占めるシェアが22％となる一方、航空会社やホテルなどのサプライヤーによるオンライン直販のシェアは41％を占めた。
総予約高（＄）と流通チャネル別のシェア（％）：フォーカスライトより
旅行市場全体では、今後、数年間は安定しつつも成長ペースは緩やかになると予測。とはいえ、前年比ではプラス成長が続くとの見方を示した。今回の調査から浮き彫りになった4つの注目ポイントは以下の通り。
1. 主戦場は顧客ロイヤルティ
大多数の人にとって、旅行に行く頻度は年に数えるほど。行先や利用サービスを決める最大の要因は価格だ。こうしたなかで、顧客との関係を維持し続けること、リピーターになってもらうことは容易ではない。OTA各社は皆、顧客ロイヤルティ獲得に力を入れているが、アプローチ手法は様々だ。引き続き、ここが主戦場になるだろう。
2. 改めてアプリに注目
米国で「価格凍結」で人気をあげた「ホッパー（Hopper）」や当日のホテル予約「ホテルトゥナイト（Hotel tonight）」など一部のOTAは、常にアプリ展開のみ、またはアプリを最優先してきたが、大手のOTAにとって、モバイルは構成要素の一つに過ぎなかった。
だが、グーグル依存やマーケティング経費を減らしたいとの思惑や、ファーストパーティ・データを取得する必要性が増したことなど、複数の理由により、自社サイトやアプリ経由で顧客と直接やりとりし、関係を構築することが以前より重要になっている。
これまでのフォーカスライト調査から、消費者が旅行サービスを購入する際、いくつものサイトをチェックし、数ドルの差でも安いものを探していることは明らかだ。では、割引やリワードを使えば、自社にリピートしてくれる顧客になるのか？アプリを使えば、顧客との関係が近くなるのか？ロイヤルティとアプリの動向は、今後も注視すべきだ。
3. B2B事業の活況
OTAといえば、消費者向け事業の成長が注目されがちだが、B2B事業も着実に拡大しており、パートナー企業向けの様々なサービスや、ホワイトレーベル（顧客のブランド名で展開する）プラットフォームも展開している。
当初、旅行サプライヤーにとってOTAは、主力事業を補完するパートナーだった。だが最近では、金融サービスなど非旅行系の企業がOTAと組み、旅行サービスを扱う動きが活発だ。その狙いは、売上の拡大よりも、顧客を囲い込み、自社カードの利用を増やすこと（ポイントが溜まるほど、これを活用するようになる）。OTA側にとっては、高い収益性が魅力だ。
4. 短期賃貸型宿泊（STR）、いわゆる民泊
民泊の領域では、エアビーアンドビー（Airbnb）の存在感が大きい領域だが、ブッキングドットコム（Booking.com）やエクスペディア（Expedia）など大手OTAにとっても重要なビジネスになっている。
ブッキングのSTR取扱高は、2022年の宿泊数ベースで56％増となり、同社の宿泊取扱全体の30％を占めた。同社では、物件所有者や運営者向けの新しいサービスや規約作りにも力を入れ始めた。例えば、ダメージ対応の規則、賠償責任保険、予約問い合わせ機能など。ブッキングがSTRを重視していることは、第57回スーパーボウルで披露したメリッサ・マッカーシー起用の広告からも垣間見える。
一方、エクスペディアでは2023年、同社のバケーションレンタル予約「バーボ（Vrbo）を他の主要ブランドと同じプラットフォームに統合。新しいロイヤルティ・プログラム「ワン・キー（One Key）」では、STR利用者も対象に加えることで、さらなる成長を目指している。
※ドル円換算は1ドル149円でトラベルボイス編集部が算出
同レポートでは、米国のOTAについて、詳細なマーケット規模、2026年までの予測、流通トレンド、注目すべき新しい動きなどを取り上げている。最新のレポートは以下から参照できる。
U.S. Online Travel Agency Market Report 2022-2026
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスライト（Phocuswright）」から届いた英文記事を、同社との正規提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事：4 things to know about the future of the U.S. OTA market
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