グーグル(Google)は、AIエージェントによるホテルの自動予約に向けて、誰もが見える形で着々と準備を進めてきた。そして、ついに、2026年5月19日、同社の「ユニバーサル・コマース・プロトコル(UCP)」の次なる適用領域としてホテル予約を位置づけ、AIエージェントによる購買インフラ(エージェンティック・コマース)を旅行分野へ拡張することを公に発表した。
この発表は、同社の年次開発者会議「Google I/O」で発表された一連のショッピング機能のアップデートに合わせ、広告・コマース担当副社長兼ゼネラルマネージャーのヴィディア・スリニヴァサン氏のブログ投稿を通じて行われた。
UCPは、グーグルの検索やチャット(AIモード)のインターフェース内でAIエージェントが購入手続きを処理できるようにするシステムだ。情報の検索から購入、決済までを一気通貫で実行するためのグーグルの共通規格。いわば「AIが人間の代わりに取引を行うための標準言語」だ。スリニヴァサン氏は、このUCPを「間もなく開始されるホテル予約や地域のフードデリバリーをはじめ、さらに多くの垂直領域(バーティカル)へと拡張する」と記している。
グーグルはまた、今後数ヶ月のうちに「エージェント・ペイメント・プロトコル(AP2)」を各製品に導入することも発表した。AP2は、AIエージェントが消費者に代わって購入を完了できるように設計されている。一方で、AIエージェントが実際の行動を起こす前に、ユーザーが支出制限やブランドの好みをコントロールできるよう配慮されている。
AP2は、まず、今回発表された新しい個人向けAIエージェント「Gemini Spark(ジェミニ・スパーク)」から開始する。Google公式発表によると、Gemini Sparkは、最新モデル「Gemini 3.5 Flash」と新アーキテクチャ「Google Antigravity」上で動作する。ユーザーがスマホをロックしている間も裏で24時間体制で動き続け、旅行のリサーチや空室の監視を自律的に行う能力がある。
これこそが、AIエージェントによるホテルの自動予約を機能させるための「決済レイヤー」となる。実質的にグーグルは、単に「次はホテルだ」と言っているだけでなく、AIエージェントが実際にホテルを予約するために必要な決済インフラ自体をリリースしようとしているのだ。
グーグルは、この決済インフラとして「Universal Cart(ユニバーサル・カート)」機能を発表。ユーザーは検索やGeminiを横断して複数店舗の商品を一つのカートにまとめ、Googleウォレットで数タップで一括決済できる。この強力な物販用システムが、ホテル予約へも横展開されるとしているが、具体的な実現の時期は未だ不透明だ。グーグルは「間もなく開始」という以上のタイムラインは示していない。
何が変わり、何が変わっていないのか
グーグルのマーチャントセンターのドキュメントでは、旅行パッケージは依然としてUCP決済の「対象外」としてリストアップされており、名前の明かされていない「旅行システム(travel rails)」という例外枠が設けられている状態だ。
この技術プロトコルの公開ドキュメントは、以前から今回の動きを示唆しており、計画中の領域として「旅行」を挙げ、その例として航空会社やホテルチェーンを掲載していた。
独立系デベロッパーたちは、グーグルが門戸を開く前からもUCPを旅行のユースケースに適応させようと試みていた。これは需要の高さを示す一方で、このプロトコルがもともと旅行用に構築されたものではないという事実を物語っている。UCPは製品の小売り(物販)向けに設計されたものであり、ホテルの在庫確保(仮押さえ)といった旅行特有の課題を処理するようには作られていなかったのだ。
グーグルの動きは、取引に至るまでの複数の検索、日程、宿泊施設にまたがる価格や空室状況といったリアルタイムデータの課題を、UCPによって解決できるという自信の表れと考えられる。
Google検索担当副社長のリズ・リード氏は、Google I/Oのステージでその壮大な野心を次のようにのぞかせた。
「見つけたい、買いたい、あるいは予約したい。それが何であれ、検索(Search)がその実現をサポートします」
今回のグーグルの動きは、2026年初めにChatGPT内での直接取引から手を引いたオープンAI(OpenAI)との差をさらに広げることになる。
ホテル企業にとって、もはや「グーグルに自動予約を導入する意思があるかどうか」を疑う段階は終わった。今や重要なのは、「それがいつ到来してもいいように、どれだけ迅速に準備を整えられるか」である。
※編集部注:この記事は、米·観光専門ニュースメディア「スキフト」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳·編集したものです。
オリジナル記事:Google Names Hotels as Next Vertical for Agentic Shopping
筆者:Adriana Lee氏





