【年頭所感】エクスペディア・グループ リテール日本統括ディレクター/代表取締役 木村奈津子氏 ―AI活用で最適な選択肢を提供

エクスペディア・グループのリテール日本統括ディレクター/代表取締役である木村奈津子氏が、2024年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

木村氏は、旅行者を対象に実施した調査結果から、2024年に予測される旅行トレンドとして、「ロケ地巡り旅」「音楽ツアー旅行」などを紹介。「when the traveler wins, we all win」という信念で、常に膨大なデータを分析して、様々な情報と対応策を宿泊施設に提供していると説明した。

さらに2024年は旅行予約において、「生成AI世代」がより一層AIを活用すると予想。同社を「旅行会社である以上にテクノロジー会社である」とも述べ、AIを活用して旅行者と宿泊施設に最適な選択肢を提供していく意欲を述べている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2024 年を迎えるにあたっての年頭あいさつ

2024年の展望:旅行者の新たなニーズに応えるための継続的な取り組みを強化

この1年、日本国内外共に旅行需要は大きく回復しました。パンデミックの際に今まで当たり前に様々な国へ渡航できていたのが難しくなったことで、旅行の価値や意義を再認識するきっかけになり、より多くの人々が今まで以上に旅行を重視するようになったと思います。渡航制限がほとんどの国において解除された昨年、逼塞時に求めていた海外への憧れを満たすリベンジ旅行だけでなく、旅行形態や目的にも多様性が広がってきているようです。

当グループが最近実施した「2024年の世界の旅行トレンド」調査では、いくつかの新たな旅行需要が明らかになりました。例えば「ロケ地巡り旅」のトレンドでは、世界、日本共通して旅行先を選定する際にテレビ番組や映画がソーシャルメディア以上に影響を与えていることがわかりました。このトレンドを受け、2024年に公開されるドラマや映画の影響で、タイ、パリなどへの旅行が増加することが予想されます。世界では、好きなアーティストを追う「音楽ツアー旅行」も2024年にさらに盛り上がりを見せると予測しています。調査結果によると、旅行者の7割近くが「好きなアーティストのコンサートのために遠征したい」と回答し、4割を超える人が「コンサート遠征を今まで行ったことがない場所へ旅行する口実としたい」と答えています。これらのトレンドに加えて、2024年は旅行中の飲酒量を減らす、もしくは全くアルコールを飲まない「ノンアル旅」も注目されるでしょう。

昨年10月に日本でも入国制限が解除され、日本は海外からの旅行者にとって人気の旅行先となっています。海外から日本への渡航者数は市場全体でも2019年レベル近くまで回復しており、当社もアジアからだけでなくアメリカを中心とする欧米諸国がその4割を占めるなど遠方からのインバウンドも好調を維持しています。また、日本から海外への渡航もアジアを中心に需要が回復しており、比較的旅慣れた旅行者が過去に旅行した馴染みのある地域に戻っている傾向が見受けられます。2023年の年末旅行においては、ハワイ、グアム、シドニーなどアジア以外の暖かい国の検索も急上昇しており、来年はさらなる需要の増加が期待できると確信しています。エクスペディア・グループとして2023年の取り組みを振り返り、2024年に旅行者の新たなニーズにどのように応えていくことができるかをパートナーの皆様と共に考えてみたいと思います。

旅行者の体験をビジネスの中核に据える

一生の思い出に残る、多くても年に数回の旅行は、予約するまでに調べなければならないこと、考えなければいけないことが膨大にあります。” 充実した旅にしたい” という思いも強いため、旅の計画から予約段階、旅行中、帰国するまでそれぞれのステップにおいて、楽しい時間を過ごす一方でそれなりのストレスを抱えることになります。そのため、旅をサポートする当社には、旅の計画段階から帰国まで、シームレスで満足のいく体験をお客様に提供していくことが求められます。例えば、個々人の希望によりあった航空券や宿泊施設を最適な価格で簡単に探せる機能の提供、旅先での質問に迅速に答えるサポート体制、移動中の機内や宿泊施設における質の高いサービスの提供、顧客が宿泊先で不満を感じることがあればそのフィードバックを即座にパートナー施設にご連絡して改善する仕組みなどです。エクスペディア・グループは、常に旅行者を中心に据え、旅行者の皆さまに当社を旅行に欠かせないパートナーと見て頂けるように、中長期的な信頼関係構築を念頭に、旅行全体のカスタマーエクスペリエンス向上を目的としたマーケットプレイスの構築に今後一層力をいれて参ります。

その一例として、当社はお客様によりよい経験を提供して下さったパートナー施設をマーケットプレイスで優遇することにしております。例えば、単なる在庫の有無や価格だけではなく、旅行者のレビューや滞在中のフィードバック、リロケーション頻度など旅行者の宿泊施設に対する満足度に直結する項目で体験スコアが計算され、それが検索順位に影響します。より包括的に良い体験を提供されるパートナー施設をお勧めすることにより、満足していただける旅行者が増えマーケットプレイスへの信頼が高まることになります。

また、ロイヤリティプログラムにおいては、新たに、エクスペディア(Expedia)、ホテルズドットコム(Hotels.com)、バーボ(Vrbo)の3つの主力ブランドにて共通してご利用いただける「One Key」を2023年7月に米国でローンチし、2024年にはさらに多くの市場に拡大する計画です。この3つのブランドは世界の多くの国々で展開し、認知度も高く、会員数は合算して1億6千万人の規模となります。これまでは別々のロイヤリティプログラムであったため、ステータスやポイントをグループ内のブランド間で共有や変換することはできませんでしたが、「One Key」の誕生により、旅行者はどのブランドで予約してもポイントがたまり、より多くのポイントを獲得できるためより早く上位ステータスに到達することが可能になりました。例えば、エクスペディアで航空券を購入し、ホテルズドットコムやバーボで宿泊施設を予約すると、合算した予約内容に基づきポイントやステータスが付与されます。このように、新たなロイヤリティプログラムはシンプルで柔軟性が高いため、より多くの旅行者に当社のマーケットプレイスをご利用いただくことが期待されます。

当社の目指す”旅行者を中心に据えたマーケットプレイス構築”のために、エクスペディア・グループでは膨大なデータを常に分析し、旅行者が予約時から旅の途中に直面した問題点に関しても迅速に改善できるように、様々な情報と対応策をパートナー施設にも提供しています。当社、そしてパートナー様のそれぞれが十分な情報に基づいた意思決定を行い、より良い旅行者体験をマーケットプレイス全体としてご提供できるように貢献したいと思います。旅行者への揺るぎないフォーカスは、旅行者が良い体験をすれば、私たち全員も勝利する 「when the traveler wins, we all win」という信念に集約されています。

AI活用で旅行者とパートナーにより最適な選択肢を

エクスペディア・グループは旅行会社でありますが、それ以上にテクノロジー会社でありテクノロジー投資は当社のDNA中核となっています。特に、AI分野の開発、活用に非常に重点をおいており、当社のサイトでは8千億以上のAIがプロセスされています。旅行者に対する機能提供の例として、アプリ内で航空券の価格上下の動向をお知らせする航空券プライストラッカー、最大5つまでホテルを比較基準項目と共に一元化して比較できるスマートショッピング、複数人での宿泊施設選びを投票やコメント機能で円滑に行えるトリップボードなどがあげられます。

また、当社はAIの技術をパートナー様にも提供しており、パートナー施設専用の管理画面「Partner Central」では、同地域の競合とみなされる施設の在庫や価格状況から、マーケットの需要予測などのデータを活用し、個々の状況に合わせた収益拡大施策を提案しています。

当社は「2024年の世界の旅行トレンド」調査の結果をふまえ、今年は「生成AI世代」が旅行予約においても一層、生成AIを最大限活用していくようになるだろうと予測しています。この調査によると、世界の旅行者の半数が今後の旅行計画に生成AIを使用する意欲を示し、3人に1人が旅程のプランニングに役に立つと回答するなど、大きな関心があることを示しました。特に最適な宿泊施設探しに活用したいと考えている旅行者が多いようです。

エクスペディア・グループでは、今後も定期的に旅行者を対象とした調査を行うことにより、旅行者のニーズやトレンドをいち早くつかみ、お客様とパートナー施設の皆様にとって常に最適なソリューションをご提供できるようサポートして参ります。また、日本語での24時間の電話サポートを導入するなど、日本の旅行者においても継続的に顧客サービスの改善を行って参ります。

エクスペディア・グループを代表し、すべてのパートナー施設、政府機関、業界関係者の皆様に対し、昨年1年間の多大なるご支援とご協力に感謝を申し上げると共に、新しい年のご繁栄および皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

エクスペディア・グループ

リテール日本統括ディレクター/代表取締役

木村奈津子

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…