
フランス観光開発機構(アトゥーフランス)は、毎年恒例の旅行業界向けワークショップ「SAKIDORI FRANCE」を開催した。
東京では、フランスから初参加も含めて35団体が出展。日本からは旅行会社128人の申し込みがあり、フランス1団体あたり18件、全体では630件の商談が組まれた。また、大阪では日本の旅行会社70人が参加。さらに、フランスの参加団体は、個別に旅行会社へのセールスコールを実施したほか、日本旅行業協会(JATA)のセミナーに参加した。
リピーターを中心に日本人旅行者数は堅実に回復
アトゥーフランス日本およびASEAN代表のジャン=クリストフ・アラン氏は、フランスからの参加団体が昨年と同等の規模になったことについて、「日本人旅行者の需要の戻りが遅れるなかでも、日本市場への期待は大きいことが分かった」と評価した。
日本からフランスへの旅行には依然として課題が多い。航空便数の回復が遅れるなか、日本へのインバウンドが好調なことから、日本発のアウトバウンドの座席が取りにくい状況が続いている。ウクライナ戦争の影響によるフライトの長時間化や円安、現地のコスト高などの経済的要因も回復の足枷になっている。
アラン氏によると、フランスの旅行業界でも、その状況は理解しており、アトゥーフランスとしては「回復は遅れているが、堅実に前に進んでいると説明している」という。
2025年1月~3月の渡仏日本人数は前年比で増加。フランス銀行のデータによると、同期間の日本人の観光消費額は前年比17%増加。2019年同期比では3%減にまで回復しているという。インフレによる影響はあるものの、「リピーターを中心に日本人旅行者数が回復していることを示すもの」と見ている。
そのなかで、アラン氏は、日本人旅行者の旅行スタイルの変化について言及。「特にリピーターの間では、テーマ性を持った旅程が好まれるようになっている」と指摘した。そのうえで、「各地方観光局も、1本のストーリー性を持ったプロダクトのなかで、お互いの地域に観光客を送客する施策が必要になってくる」との認識を示した。
テーマについては、2026年は印象派クロード・モネ没後100周年にも期待をかける。現在、本局では「関連地域を巻き込むようなプロモーションを検討している」と明かす。また、ニースを舞台にした恋愛リアリティシリーズ「オフライン ラブ」がネットフリックスで放映されていることから、新たな重要喚起のきっかけにしていきたい考えだ。
アラン氏は「観光施策とは別のところで、フランスを語るコンテンツが出てくる。それらとの連携する形で観光プロモーションも進めていきたい」と話す。
2024年のフランスへのインバウンド旅行者数は1億人を超えた。フランスとしては、今後は旅行者の数よりも質を求めていく方針。アラン氏は、「日本人旅行者の現地での振る舞いやテーマ性を求める旅行スタイルは、フランスの観光政策の方向性と一致している」と話し、日本人旅行者の本格的な回復に期待を寄せた。
アトゥーフランス日本およびASEAN代表のジャン=クリストフ・アラン氏
新たに生まれ変わったエッフェル塔、満足度も上昇
今年の「SAKIDORI FRANCE」には、パリのランドマークの一つである「エッフェル塔」からの参加もあった。エッフェル塔は昨年、パリ五輪の開催にあたって、10年に及んだ改装工事が完了したところ。塗装を塗り替え、エレベーターも付け替え、各階にスペースも設けた。エッフェル塔公社会長のジャン=フランソワ・マルタン氏は「新しいエッフェル塔に生まれ変わった。来場者の満足度も向上している」と自信を示す。
マルタン氏によると、2024年の有料来場者数は約630万人。昨年は「五輪効果がプラスに働いた年だった」(マルタン氏)が、通常に戻った今年も1月~4月までの統計では前年比10%増となっているという。直近のデータでは、1日のチケット購入者は約2万8000人。
また、写真撮影などでエッフェル塔周辺に集まる人は年間2000万人を超えるという。マルタン氏は「世界のどのモニュメントでも同じだろうが、実際に入館してもらうかが課題」と話す。入館者数は2015年が約670万人。エレベーターなどのキャパシティなどを考慮すると、最大受け入れ可能人数は720万人~740万人だという。
一方で、満足度も重視。改装工事に合わせて、チケット購入のオンライン化も進め、待ち時間の短縮にも取り組んだ。塔内では、エッフェル塔限定のピエール・エルメのマカロンを提供するなど商品ラインアップの質を上げたほか、2022年にはミシュラン2つ星シェフの「マダム・ブラッスリー」が開業した。
その結果、来場者への調査によると、2024年の満足度は96%で、2023年から8%上昇したという。マルタン氏は、「スタッフのおもてなし、清潔さ、安全性などが高く評価された」と自信を示す。
このほか、マルタン氏は、日本の旅行会社に向けて、チケット購入について認定エージェントあるいはエッフェル塔公団からの直接購入を呼びかけた。
エッフェル塔公社会長のジャン=フランソワ・マルタン氏