
英・ロンドン市は、街の地下に張り巡らされたトンネル網に、英国軍事情報博物館、第二次世界大戦の体験型慰霊碑、世界最深部のバーを建設する計画を承認した。民間企業のロンドン・トンネルズが新たな観光コンテンツとして、2028年の開業を目指す。
この地下壕はロンドンのホルボーン地区にあるロンドン地下鉄セントラル線の真下にある。1940年、イギリスがナチス・ドイツの侵攻を恐れていた頃、トンネルの掘削作業を秘密裏に開始。幅5メートル、長さ400メートルの2本の平行トンネルに、最大8000人を収容できるように設計された。
トンネルは、ロンドン大空襲の後、1942年に完成。結局、避難目的で利用されることはなかったが、政府の通信センターとなり、特殊作戦執行部の基地となった。この地下本部は、007ジェームズ・ボンドが着想された場所と言われている。
戦後、この複合施設には、さらに多くのトンネルが増設され、電話交換所も設置された。1950年代半ばには最初の大西洋横断海底電話ケーブルの終点となり、1962年のキューバ危機で世界が核戦争の瀬戸際に立たされると、ペンタゴンとクレムリンを結ぶ「赤い電話」ホットラインがここを経由して設置された。
ブリティッシュ・テレコムは2023年に、ロンドン・トンネルズのアンガス・マレー最高経営責任者の投資会社にトンネルを売却。それまでは、ほとんど表舞台に出ることはなかった。
計画では、現在、ロンドン北部の軍事基地内にあり一般の立ち入りが制限されている英国軍事情報博物館も併設される。博物館はすでに、300年以上の歴史を網羅するコレクションをトンネルに移設することで合意しているという。博物館には、特殊作戦執行部(SOE)の戦時中の活動の様子、物資、武器、破壊工作用具などが展示される予定。
ロンドン・トンネルズは、年間最大420万人の観光客を見込んでいる。
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。