夏の万博での過ごし方を取材した、世界のこだわりグルメから、大阪・関西を楽しむパビリオンまで

2025年4月の開幕以降、盛り上がりを見せている大阪・関西万博。開幕から116日目の8月6日には、来場者数が累計1500万人を突破した。夏休みシーズンに入り、人気パビリオンには連日行列ができている。今回は、世界各国が集う万博だからこそ出会えるグルメを中心に、夏の会場を楽しむポイントを取材した。

※写真:シグニチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」。誰もが五感を通じた遊びを体験できるスペースで夏の日差しを避けて過ごすことができる。

各国パビリオンが工夫を凝らす夏のグルメ

万博の醍醐味のひとつは、普段は触れる機会が少ない、世界中の様々な美味しいものに出会えること。暑さをクールダウンしてくれる冷たいものなら、なおさら嬉しい。そんな来場者の心をしっかり捉えているのが、アフリカのブルンジ共和国だ。コモンズA内にある同国ブースでは、開幕以来、名産品のはちみつを使った冷たいスイーツやコーヒーが人気を博している。SNS映えを意識したビジュアルを工夫したことも勝因だろう。

ブルンジ出身で、日本で同国のプロモーションや名産品輸入を行っているエーアイジャパンCEOのDesire Nsengiyumva氏は、「自然豊かなブルンジの東部エリアで採れるはちみつは、美味しいのはもちろん、傷やのどの痛みにも効く」と自信を見せる。このはちみつのファンの一人、地元大阪・吹田市のパン屋「ラパン」の久保恵理副社長が、万博のテーマでもある「サステナブル」な食材を集めて考案したのが、ブルンジ産はちみつを使ったカヌレ・パフェだ。食物繊維、鉄分、たんぱく質が補充できる「エナジーパフェ」として、猛暑の万博会場内を歩き回って疲れた体を癒してくれる。価格は1600円から。

抹茶アイスクリームに赤いベリー、おからを使ったカヌレやグラノーラ、ブルンジ産はちみつがたっぷりブルンジを代表する特産品、アナエアロビコ(嫌気性発酵)製法のコーヒー豆でいれたアイスコーヒーも提供されている。ベリーや柑橘系のフルーティーさ、繊細な甘さが特徴だが、生産量が少なく「アフリカの小さな宝石」とも呼ばれる。価格は一杯600円から。正真正銘のブルンジ産コーヒーを手軽に試す、滅多にない機会となっている。

ブルンジのカフェ・スペース。お土産用のコーヒーやはちみつも販売している

猛暑の中、冷たいスイーツを提供する店やレストランには長蛇の列ができていた。イタリア館隣にある「カフェ&ジェラート」では、イタリアの食材にこだわった8種類のジェラートを用意している。人気のイタリア館とは別の列となるので、ジェラートだけを目当てに並ぶ来場者も多い。

ブラッドオレンジ&トマト、オリーブオイル&塩、シチリアのピスタチオやレモン、ヘーゼルナッツ入りのチョコレート「ジャンドゥイヤ」など、本場のジェラートが種類豊富でトリプル(1100円)を選ぶ人が多いのも納得できる。そのほか、フローズンドリンク「グラニータ」(900円)、トワイライトタイムにぴったりのカンパリソーダやネグローニ(各1450円)などアルコール入りの飲料も。列の待ち時間が120分におよぶこともあるほど人気で、暑さ対策を十分にしたうえで体力に余裕をもって訪れたい。

イタリア館隣にあるカフェ&ジェラート点に日傘など暑さ対策をして行列に並ぶ人々。会場内では、日傘の貸し出しもおこなわれている

日本初公開の彫刻「ファルネーゼのアトラス」など、美術館のような充実の展示が人気のイタリア館内部。数時間待ちはあたりまえとなっているが、館内でクールダウンできる

カラフルでやさしい味わいのアジアン・スイーツなら、フィリピン館へ。イタリア館と同様に、パビリオン内に入場しなくても利用できるカフェがある。豆や芋、果物、エッグカスタードなどのトッピングが楽しいかき氷「ハロハロ」(1900円)が、一瞬で体を冷やしてくれる。お菓子のデコレーション付きアイスクリーム(650円)は、ウベ(紫芋)、ジャックフルーツ、ドリアン、マカプノ(ココナツの果肉)など、南国フィリピンならではの珍しいフレーバーが揃う。

カラフルでヘルシーなトッピングが嬉しいフィリピンのかき氷「ハロハロ」

フィリピン館外観。1000枚以上の手編みのラタンパネルに覆われたバスケットのような構造がユニーク

開催地の大阪・関西を楽しむ

にぎやかな喧噪を離れて、和菓子と冷えた飲み物でひと息つくなら、関西パビリオン内の和歌山県ブースへ。県土の約76%を森林が占める「紀(木)の国」、和歌山のフードメニューは、「森を食す」がテーマだ。銀座FAROのシェフパティシエである加藤峰子氏が考案した、森の香りのする上生菓子「咲匂ふ杜」や桃と檜のドリンク「桃花源の森」などで構成された「Wakayamaの森と恵みのペアリングセット」(6000円)を提供している(予約が必要)。

白いんげん豆、南高梅、柚子、山椒など和の食材に、ハイビスカスやローズマリーなども加えた和菓子やドリンク、800年の歴史を誇る湯浅醤油のあられを、紀州材のカウンターテーブルとチェアで提供している。飲み物を一つ加えて、2人でシェアすることも可能だ。

万博のために考案された上生菓子の数々と、「森」づくしのおもてなし

大阪ムードが満喫できるのは、道頓堀商店街の飲食店が集まった「サステナブルフードコート大阪のれんめぐり」。たこ焼きや串かつ、ラーメン、餃子など大阪の定番メニューに並んで、タイ料理「クンテープ」が出店している。タイ政府による“本場の味”のお墨付き、「タイ・セレクト」認定店だが、万博店での一番人気は香辛料が効いたガパオライスと麺料理パッタイ、目玉焼きのセット「ガパオ・パッタイセット」(2280円)だという。 

人気メニュー「ガパオ・パッタイセット」の看板。青森ねぶた祭で大賞を受賞したねぶた師、北村麻子氏が制作を担当

万博を通じて、未来の食と文化を世界に発信しようと、関西を本拠地とする企業が集まったのが大阪ヘルスケア・パビリオンだ。目、髪、心血管など、7項目の測定データをもとに生成した25年後の姿のアバターに出会うことができる「リボーン体験」が人気で、8月9日には入場者数300万人を突破した。中小企業やスタートアップの技術力や魅力発信を行う「リボーンチャレンジ」のブースは、各企業が趣向を凝らした体験を提供しており、涼しい館内で1日中滞在していたくなるほど。このパビリオンで長時間過ごすのも夏の過ごし方のひとつかもしれない。存分に万博に来場した意義を感じられる。

関西を本拠地とする企業が集まったのが大阪ヘルスケア・パビリオン内部

「ミライの都市」ゾーンでは未来の暮らしを体験。個人の体調に合わせた運動やリラクゼーションのデモ体験ができる

夏は、「REBORN夜市」と銘打ったテラスを設け、「ミライの食と文化」ゾーン(フード・物販エリア)の営業時間を一部延長している。その一角に出展する六甲バターは、100%植物性のチーズ代替食レストラン「Q・B・Bこれもいいキッチン」を出店。同社では、「1キロのチーズをつくるのに排出されるCO2はおよそ21キロ」とも言われるなか、チーズ業界における脱炭素の取り組みの一つとして、植物由来のチーズ代替食品作りに挑戦している。動物性素材を一切使わなくても食べ応えのあるメニューを考案、万博を訪れる人々に「これもありだね」と言ってもらえるかを問う試みだ。 

パビリオン出口付近のリボーンテラスでは、アサヒグループのキッチンカーが、まだ食べられるのに使われないパンなどの食材をアップサイクルして製造したクラフトビールを販売していた。冷たいビールでリフレッシュしながら、未来の食についてしばし思いをはせる。知らなかった世界の味に触れたり、新しい挑戦に出会ったり。たくさんの体験が集まっているのが万博だ。

本記事で紹介した夏の万博での体験は、ほんの一部。大屋根リングの下で不思議な涼しさを感じたり、日中の日差しを避けて夕刻のイベント目当てに訪れるなど、それぞれの楽しみ方がみつかるはずだ。

アサヒグループのキッチンカー

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