2025年12月26日、政府は令和8年度(2026年度)予算案を閣議決定した。観光庁関連予算は前年度比で約2.4倍となる1383億4500万円を計上。このうち1300億円は、2026年度中に引き上げられる国際観光旅客税(出国税)が充当された。東日本大震災からの「復興枠」を含めると、1390億1000万円となる。
2026年度の具体的な施策の大きな柱は「インバウンドの受入れと 住民生活の質の確保との両立」「地方誘客の推進による需要分散」「観光産業の活性化」。このうち、観光産業の活性化では、日本人の海外旅行(アウトバウンド)促進を含めた「双方向交流の拡大に向けた環境整備」として、前年度比25倍となる5億円を計上した。
また、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする 観光地の受入環境整備の促進」が同8.34倍の100億円と大きく増額された。
出国税については、概算要求の段階で700億円を計上していたが、7月1日以降に引き上げる方針が示されたことで上積みされた。その使途については、特に新規性・緊急性の高い施策・事業に充てるとしている。具体的には、オーバーツーリズム対策、多様な国・地域からの誘客、世界水準の受入環境整備、地域資源を活用した新たな観光コンテンツの拡充、出入国手続などの高度化、日本人旅行者の安全安心な海外旅行環境の整備があげられている。
なお、出国税は、訪日旅行者だけでなく日本人が出国する際にも対象となるため、「日本人旅行者の安全・安心な海外旅行環境の整備」をはじめとした日本人旅行者に配慮した施策も含まれる。
地方誘客の推進では交通対策の新規施策目立つ
施策の大きな柱となる「地方誘客の推進による需要分散」では、新規施策が増加した。
地方の観光地の魅力向上・地方誘客では、新たに「ウポポイを通じた海外へのアイヌ文化の発信とインバウンド需要の創出」(1億円)を支援。訪日外国人観光客数の増加に向けて、情報発信やPRの強化などを行う。
地方への交通ネットワークの機能強化では、「ボトルネック解消に向けた空港機能の抜本的強化事業」(28億8300万円)として、地方誘客に向けて、空港ターミナルビルの機能強化 、空港アクセスの改善 、グランドハンドリングなどの業務効率化・職場環境改善・ 生産性向上を支援する。
また、「天候トラブル時の空港への旅客滞留・混雑防止対策事業」(10億円)では、滑走路や航空機の雪対策を支援。「空港アクセス鉄道の整備・機能強化への支援」(5億2500万円)では、空港アクセス鉄道の輸送力増強や速達性向上、混雑緩和に関する経費を補助する。
さらに、「パーク&レールライドによる観光地の混雑緩和事業」(8億7500万円)では、駐車場の整備や利用促進に要する経費を支援する。このほか、「ローカル鉄道観光資源活用促進事業」(46億円)では、インバウンドの地方誘客を推進するため、ローカル鉄道の持続可能性を高めるとともに、観光資源として活用する地域での取組を支援する。
観光産業の活性化では「GREEN×EXPO2027」関連も
観光産業の活性化では、双方向交流の拡大に向けた環境整備の予算が大幅増となった。
具体的には、「日米交流関係強化を通じた地方誘客促進等事業」(3億円)として、米国に向けた地方誘客や誘客コンテンツの発信やイベントへの出展を行うとともに、日米の青少年の交流を進めていく。
また、新規で「万博レガシー事業」(2億5000万円)を計上。大阪や京都に集中している観光客の関西エリア全域への分散、関西・大阪万博のレガシーを活用した観光需要創出の取組みを支援する。2027年3月から横浜市で開催される「GREEN×EXPO2027」に向けた予算も新規で計上し、「インバウンド促進事業」(2億5700万円)も進めていく。
「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」(10億円)では、温泉街の中心地などで廃旅館などを撤去・減築し、 新たな旅館の再生を行う事業に対して支援。「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」(5億円)も計上した。
安全・安心な海外旅行環境の整備で175億円
そのほか、新規で「日本人旅行者の安全・安心な海外旅行環境の整備」(174億9000万円)を計上。安全情報収集・発信、邦人からの相談対応、緊急時の邦人保護の拠点ともなる 在外公館施設の避難所機能などの強化、緊急時の邦人退避などに取り組み、安全・安心な海外旅行環境を整備する。
観光庁の予算概要の詳細は以下で確認できる。

