フィリピン観光局、日本でMICE商談会を開催、アクセスの良さやコスパ、ホテル開発を強みに誘致を強化

フィリピン観光局(TPBフィリピン)は、日本からのMICE誘致を強化する。2025年8月に東京と大阪で「フィリピンMICE商談会2025」を開催。フィリピンからDMO、DMC、宿泊施設など16団体・事業者が参加した。

東京の商談会で、フィリピン観光局MICE部門シニア・コンベンション・サービス・オフィサーのシェアドル・バヨナ氏は、フィリピンのMICE開催地の強みとして、自然環境や文化的背景に加えて、公用語が英語であること、ホスピタリティ、コストパフォーマンスを挙げた。また、現在、札幌、羽田、成田、名古屋、大阪、福岡からマニラ、セブ、クラークに直行便が運航されており、日本各地から送客が可能なことや、時差が1時間であることもアピールしていく考えだ。

さらに、バヨナ氏は、これまでフィリピンでAPEC会議、世界経済フォーラムなど国際的な大規模イベントを開催してきた実績を紹介。今年も9月からは「バレーボール男子世界選手権」がマニラで開催され、2026年はASEANの議長国として、国内各地で様々な会合が予定されることなどから、MICE受け入れ能力に自信を示した。

バヨナ氏は、受け入れ体制の強化についても言及。新たなホテル開発も進んでおり、2028年までには新たに1万5000室が追加され、現在も多くの開発計画が進んでいるという。また、2026年のASEANサミット開催に合わせて、フィリピン国際会議センター(PICC)も改修・拡張される。

このほか、バヨナ氏は観光局が展開しているMICEサポートについても触れ、会議、インセンティブ、展示会など開催形態に合わせて、プランニング支援、飲食ケータリング、文化エンターテイメント、VIP対応、ウェルカムバナーなどさまざまなサポートを用意していると説明した。

個別の商談会で情報交換国内各都市で観光開発、一方で課題も

フィリピンの各都市でも観光およびMICEの誘致に向けて積極的な取り組みを進めている。

ルソン島の中央に位置するクラーク市では、2019年に「東南アジア競技大会(SEA Games)」など様々な大会の開催地となったことを受けて、観光・MICEへの投資を拡大。クラーク開発公社観光推進部マネージャーのエレニタ・ロレンソ氏によると、今後3年以内に新たに2000室が加わる予定で、「受け入れ体制がさらに拡充する」という。

2024年のクラーク市への日本人訪問者数は約3000人。2025年は上半期だけですでに約4300人が訪れた。ロレンソ氏は、日本からの直行便があること、市内ではコンパクトな移動が可能なこと、多彩な食体験が揃うこと、安全性などをクラーク市の強みとして挙げ、「日本からは、インセンティブや中小規模のビジネスミーティングの誘致に力を入れていきたい」と意欲を示した。

南部ミンダナオ島のダバオ市は、2023年にフィリピンのMICEカンファレンス「MICECON」のホストシティを務めた。ダバオ市MICEボード代表のラヤン・アラオ氏は、「予想を超える来場者となったが、しっかりと受け入れることができた」と実績をアピール。市内には、国際チェーンのホテルも多く、大小宴会場なども整っているという。

今後については、豊かな自然や日本とも関係の深い文化などをセールスポイントとして、「インセンティブ旅行を中心とした団体の受け入れを進めていきたい」と話した。また、現在、日本からダバオへのアクセスはマニラ経由かセブ経由になるが、「MICEをはじめ日本人旅行者が増えることで、将来的には直行便の開設も期待したい」と続けた。

(左から)クラーク市のロレンソ氏、フィリピン・コンベンション・エキシビジョン主催者サプライヤー協会のタン氏、ダバオ氏のアラオ氏

一方、フィリピン・コンベンション・エキシビジョン主催者サプライヤー協会会長のパトリック・ローレンス・タン氏は、「日本からのMICE誘致には多くの課題がある」と話す。そのなかでも「日本と同等の基準の安全性とクオリティを求めていかなければならない」との認識を示した。フィリピンの国民性が表れるホスピタリティはフィリピンの大きな魅力だが、MICEの受け入れでは「事前準備やトレーニングがもっと必要」だという。

また、今回のMICE商談会の目的の一つとして、「日本市場のニーズを知ること」を挙げた。そのうえで、タン氏は「大事なことは、参加者にはフィリピンでいい経験をして帰国してもらうこと。それがリピーターにつながる」と強調した。

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