
民泊エアビーアンドビー(Airbnb)は、ホストに対するサービス手数料の仕組みを変更する。これまでのゲストとホストが両者で分担する形式から、ホストが単独で負担する形式に移行。現在、ホストの大多数は3%のサービス手数料料をエアビーに払っている。
2025年10月末には、宿泊管理システム(PMS)を利用しているホストから自動的に新たな手数料方式に移行を開始。手数料は15.5%になる。エアビーは「この取り組みによって、より透明性を高め、より正確で競争力のある料金を目指す」とコメントしている。
GuestCentricのペドロ・コラコCEOは、この変更は、エアビーが進めてきた「コミュニティモデルを実質的に放棄するもの」と指摘する。構造的にはブッキング・ドットコムやエクスペディアなどOTAと同じになる。コラコ氏は「つまり、ホストが流通コストの全額を負担することになる」と話す。
エアビーは短期宿泊賃貸(STR)だけでなく、ホテルなどの宿泊施設も重視している。同社ブライアン・チャスキーCEOは第2四半期決算説明会で「ホテルは、エアビーの心臓部である宿泊施設を補完する素晴らしい存在」と明言した。
そのホテル側から見ると、エアビーは大手OTAと「互換性」を持つことになる。エアビーはホテルパートナーに対して、「我々はブッキング・ドットコムなどと同じ。ただ、エアビーの方がブランド力が強く、UXが優れている」と明確なメッセージを送っている。
サービス料を定額にすることで、規制当局の監視対象となるいわゆる「ジャンク料金」と呼ばれるものを回避することもできる。Knokxの共同創業者でありVilla Marketersの創業者であるジェイ・ウィリアム氏は、「このモデルは明確な価格をゲストに提示し、手数料は非公開で受け取るべきだというもの。消費者に見えないものを規制することはできない」と話す。
定額のサービス手数料は、消費者の期待にも応える。旅行者は、OTAでは「提示料金」でホテルを予約することに慣れている。コラコ氏は「戦略的に言えば、この変更は既存のホストを満足させるというよりも、ホテルの在庫を増やしていくことの方が重要ということだ」と話す。
今後の展開は?
そのうえで、コラコ氏は今後の展開を予想。「リピーターを増やすためのロイヤルティ・プログラムの創設、18~20%への手数料の段階的な値上げ、そして航空券とのセット販売などだ」と話す。
一方、ホストには価格の正当性を示す責任が肩にのしかかる。ホストが値上げをすれば、新たなコストを負担していることを理解しないゲストは、単に料金を値上げしているだけだと誤解する可能性がある。ウィリアム氏は「エアビーは価格設定を再構築しただけでなく、ホストの独立性を無力化した」と指摘する。
コラコ氏は「ホストにとっては、価格設定を見直さないと、大きなコスト増になる。ゲストにとっては、サービス料が内包されるため透明性が失われる」と話す。
マーケット・ムーバーズ共同創業者兼最高マーケティング責任者であるサラ・スタール氏は、「この動きは、むしろ逆効果になる恐れがある」という。「サービス手数料が上昇すると、販売可能な客室1室あたりの収益(RevPAR)は下がり、ホテルは代替手段、特に直接予約を積極的に模索し始めるだろう。エアビーはOTA同様の体制を取ろうとする一方で、供給を失うリスクも負っている」と指摘した。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:AIRBNB SEEMS SET UP FOR HOTEL EXPANSION, COMPETITION WITH OTAS