EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、移住、二拠点居住促進に関する調査レポート「地域との関係性を深めるにはどうしたらよいのか?~移住、二拠点居住促進に向けた考え方」を発表した。
このレポートは、全国47都道府県の18~69歳、約1万人を対象に実施したオンラインアンケート結果をもとに、観光をきっかけとした人の流れが、地域との継続的な関わりや定住につながる可能性を探り、地域政策の再構築に向けた視点を提示したもの。交流人口や関係人口から「二拠点居住」や「移住」につながるプロセスを分析した。
二拠点居住先の選定理由トップは「旅行先でとてもよかった」
まず、「二拠点居住」への関心度について調査。すでに実施・経験者が8.7%、関心層が25.8%と、全体の約3割が関心を示す結果となり、決して小さくない市場になっていることがわかった。
また、年収が高い層ほど二拠点居住者への関心は高く、年代別に見ると、18~29歳では実施経験の割合が高く、「今後実施予定である」の割合は4.6%で世代別で最も高くなった。
報道資料より移住・二拠点居住先の選定理由としては「旅行先でとてもよかった場所」が42.5%で最も高く、「これまで何度も訪問している場所」が19.0%で続いた。このことから、EYストラテジー・アンド・コンサルティング・ストラテジックインパクトパートナーの平林知高氏は説明会で「観光体験が地域への愛着形成に寄与し、定住意向へとつながる傾向が見られる。このことから、観光政策と定住促進施策の連携が求められる」と分析した。
二拠点居住の実施に当たり重視することについては、最も回答多かった「自分がリラックスできる環境」(35.2%)に次いで、「現在の居住地から90分圏内」(17.3%)。居住地からの距離が重要な要素になっていることがわかった。年代別に見ると、18~29歳でその傾向は強く(23.4%)、一方、60~69歳では「リラックスできる環境」が最も高くなった(43.7%)。
二拠点居住先で過ごす時間については、若年層ほど長い時間を過ごす傾向にあることもわかった。18~29歳では全体の25~50%を過ごす割合は33.2%、50~75%も21.7%となった。平林氏は「(受け入れ地域においては)若年層への取り組み次第で、消費の拡大につながる可能性が高まる」と指摘した。
二拠点居住から移住・定住へ、住民票移転検討は4割に
レポートでは、二拠点居住から移住・定住に移るプロセスについても考察。住民票移転についての調査では、「すでに移した/移す予定」が6.3%、「検討中」が39.0%と比較的高い割合となった。18~29歳では「すでに移した/移す予定」の割合は12.0%と平均を大きく上回っている。
移住に関心がある割合は約3割。二拠点居住と同様に、年収が高いほど、また若年層ほど移住への興味が高い傾向にあることがわかった。また、「子どもの成長や定年後等の生活に向けて、興味・関心はある」の割合が1割程度あることから、平林氏は「この層にどのようにアプローチしていくかが重要なポイントになる」と話した。
移住先については、二拠点居住と同様に、「旅行先でよかった場所」(42.1%)「何度も訪問している場所」(17.7%)が多くなっているものの、二拠点居住より「行ったことがない場所」(20.1%)の割合が高くなった。
EYは二拠点居住の実施で重要となってくるリモートワークについても調査。その結果によると、旅先からでもリモートワークができる環境にあり、暦上の休暇に縛られず自由に旅ができている人は全体の1割にすぎないことがわかった。平林氏は「企業の理解や環境整備が進むことで、働き方の柔軟性が高まり、観光をきっかけとした地域との関わりが深まる可能性がある。Wi-Fi環境やコワーキングスペースの充実に加え、地域での『場づくり』が求められる」とした。
ツーリズム政策として一気通貫で検討を
今回の調査結果を受けて、平林氏は「二拠点居住は、マジョリティとしては旅の延長線上というのが非常に大きい。しかし、ターゲット層によって、求めるものが異なっている。そういう細かいところのターゲットの設定によって、施策の効果というものも変わってくる」と指摘する。
そのうえで、自治体では二拠点居住や移住の政策を実施する部署と交流人口や関係人口の増加を促進する部署とは異なるケースが多いことを指摘。「移住や二拠点居住をそれぞれバラバラに考えるのではなく、ツーリズム政策として一気通貫に考え、政策検討、施策を実行していく必要性がある」と提言した。
報道資料より
