世界の主要ブランドの競争力を示す指標として注目されるのが、ブランドコンサルティング会社インターブランドが毎年発表する「Best Global Brands」だ。
1974年設立のインターブランドは、ブランド価値評価のパイオニアとして国際的に高い権威を持ち、財務実績、消費者選択におけるブランドの役割、ブランド強度の三つを基準に算定をおこなっている。評価には、グローバル展開や公開財務データの十分性など厳格な条件が課され、世界規模で実効性を持つブランドのみが選ばれる。
ランキングは単なる知名度を競うものではなく、ブランドが収益力や市場選好にどれほど貢献しているかを数値化する点に特徴がある。観光産業でもブランド力の重要性は増しており、訪問先の選択から消費行動に至るまで、ブランドが果たす役割は大きくなっている。
そのなかで、最新のランキング「Best Global Brands 2025」トップ100に入った旅行関連ブランドは2社にとどまった。32位のBooking.com(ブッキング・ドットコム)と45位のAirbnb(エアビーアンドビー)である。旅行系ブランドの少なさは、観光・旅行産業が他分野に比べてブランド価値化で依然として挑戦の途上にあることを示す。自動車、IT、ラグジュアリーといった産業が上位を占めるなか、旅行ブランドがトップ100に入るには、選ばれる理由の明確化と収益モデルの強化が求められる。
Booking.comは多言語・多地域に対応したグローバル予約プラットフォームとして成長し、宿泊に加え交通・体験などサービス拡張を進めてきた点が評価につながっている。
一方、Airbnbは旅先での暮らしや地域との接点を価値として位置づけ、新しい旅体験をブランドとして確立させた。両者に共通するのは、旅の予約や滞在を単なるサービスではなく「体験価値」としてブランド化し、利用者の記憶や生活文脈に入り込んでいる点である。
世界の「ブランド価値力」トップ10は以下の通り。なお、日本勢は6位にトヨタ自動車、29位にホンダ(本田技研工業)、34位にソニー、47位にユニクロ、53位にニンテンドー(任天堂)、82位にニッサン(日産自動車)がランクインしており、自動車産業の世界的なブランド価値の高さが浮き彫りになっている。
- Apple
- Microsoft
- Amazon
- Samsung
- Toyota
- Coca-Cola
- McDonald’s
- Mercedes-Benz
文:鶴本浩司
