世界最大級の観光産業見本市「ITBベルリン2026」開幕、創設60周年で観光の未来を提示、6000社が集結、AIとサステナビリティを軸に

世界最大級の観光産業見本市/カンファレンス「ITBベルリン2026」が2026年3月3日、ドイツ・ベルリンで開幕した。今年は1966年の創設から60周年という大きな節目。会場のメッセ・ベルリンには、世界約160か国・地域から約6000の出展者が集まり、活発な議論や商談が繰り広げられている。

開会にあたり、メッセ・ベルリンCEOのマリオ・トビアス氏は「1966年の創設以来、ITBは小さな展示会から、旅行・観光分野における世界有数のB2Bプラットフォームへと成長した」と振り返った。そして、「私たちはこの60年の成果を祝うだけでなく、観光の未来を形づくる存在でありたい」と、過去と未来を同時に見据える場としてのITBの意義を語った。

※写真:開幕に先立っておこなわれた開会の記者会見の模様

1966年創設から世界最大級へ、ITBの60年

ITBベルリンは1966年、当時は東西ドイツに分断されていた西ベルリンで創設された。当初は比較的小規模な展示会であったが、冷戦下にあっても国際交流の場として存在感を高め、次第に欧州最大級の観光見本市へと成長した。

この60年の間、航空自由化、LCCの台頭、オンライン旅行会社の成長、モバイルシフト、データドリブン経営の浸透、そして近年のAIの急速な進展など、観光産業は幾度も構造転換を経験してきた。ITBはその都度、出展カテゴリーやコンベンションのテーマを進化させ、業界の変化を映す鏡であり続けてきた。

近年は、展示規模の拡大とともに、単なる商談の場から、政策対話、テクノロジー発信、スタートアップ支援、人的ネットワーク構築を包括するエコシステムへと進化している。

トビアス氏は「ITBは世界中の人々、デスティネーション、イノベーター、意思決定者を結びつけてきた」と語り、グローバルなハブとしての役割を改めて強調した。

60周年を記念し、会場では過去のキャンペーンポスター展示など、歴史を振り返る企画も展開。1960年代の紙媒体中心のプロモーションから、デジタル主導の現在まで、観光マーケティングの変遷そのものがITBの歴史に重なる。

約6000社が集結、世界観光の現在地

今年のITBベルリンには、約160か国・地域から約6000の出展者が参加し、メッセ・ベルリンの全ホールが満床となった。

クルーズ分野は依然として主要な成長領域として注目され、トラベルテックは第6ホールのワンフロアを占める規模で展開。AI、決済、ホテルテックなど最先端技術が前面に押し出された。

トビアス氏は「AIや決済、ホテルテックなどの最先端イノベーションが、業界を今そして将来にわたって再形成している」と語る。

医療・ヘルスツーリズムではウェルネスやロングジェビティ(長寿)をテーマとした展示が拡充。ラグジュアリー分野、MICE・ビジネストラベル分野も存在感を示した。

アドベンチャーツーリズムは今年の重要テーマの一つであり、27か国から50以上の出展者が参加。エコツーリズム、野生動物観察、サイクリング観光、アクセシブルツーリズムなど、多様な体験型商品が紹介された。

有力バイヤーのみが参加できるバイヤーサークルには63か国から数千人の有力バイヤーが参加。その40%以上が新規コンタクトである点は、ITBのネットワーキング機能の進化を示している。

欧州、アフリカ、アジア太平洋、北アフリカ、南北アメリカの各地域が強い存在感を示し、タイは最大出展国として第26ホールを彩った。

メッセ・ベルリンCEOのマリオ・トビアス氏

コンベンションで議論する「バランスある成長」

ITBコンベンション2026のテーマは「Leading tourism with balance」。持続可能な成長と自然生態系保全の両立を軸に据えた。

カンファレンス部門も、17トラック、約200セッション、400人以上の専門家が登壇。オーバーツーリズム、気候変動、データ、AI、レジリエンス、インクルーシブツーリズム、シームレストラベルなど、幅広い議題が並ぶ。

新フォーマットとして「ITB Tech Time」「ITB Deep Dives」「ITB Transition Lab」を導入。Transition Labでは、持続可能性に向けたデータドリブンな実行計画と実装戦略が議論される。

約20か国の観光大臣が参加する国連観光大臣サミットも開催され、観光成長を支えるガバナンスや人材育成がテーマとなる。

トビアス氏は「困難な時代にこそ、つながりが重要だ」と述べ、「ITBは対話と相互理解の場である」と改めて強調した。

次の10年へ、テクノロジーと責任の両立

ITBベルリン2026では、24時間対応のチャットボットやITBナビゲーターアプリなど、来場者体験の高度化も進められた。

また、CSRパートナーの導入や責任ある観光への取り組みも強化。ITBは単なる商談の場ではなく、観光産業の社会的責任を再定義する場へと進化している。

トビアス氏は最後に「テクノロジー、サステナビリティ、変化する旅行者の期待が、今後も業界を形づくる」と述べ、「ITBは家族のような集いの場として、今後も本質的なつながりを築いていく」と語った。

60年の歴史を経て、ITBベルリンは単なる展示会の枠を超え、観光産業の未来を設計するグローバルプラットフォームとしての存在感をさらに強めている。

取材・文: 鶴本浩司

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