JTB連結決算、増収増益で純利益121億円、訪日・第三国間旅行が2桁成長、グローバル投資を加速 ー2026年3月期

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JTBグループが発表した2026年3月期(2025年4月1日~2026年3月31日)連結決算は、売上高が前年度比5.6%増の1兆1333億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同40.6%増の121億円となり、増収・最終増益を達成した。売上高が1兆円を上回るのは3年連続となる。日本発着以外の第三国間旅行や訪日などのグローバル旅行がともに2桁増で牽引したほか、MICEを中心とする旅行以外のセグメントも同9%増と高い伸びをみせた。

同グループは現在、2035年を見据えた長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」の実行フェーズにあり、当期はグローバル戦略の加速に向けた大型M&AやDX投資を相次いで実行。固定資産合計は前期末の1755億円から2593億円へと約838億円増加した。

会見で代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏は、純資産が1623億円に達しコロナ禍前の水準(2020年3月期末:1572億円)を超えて回復したことにふれ、「先行投資を実行できたのは、財務基盤の回復があったからこそ。今後はこの強固な土台を維持しながら、中長期的な成長に舵を切る」などと述べ、変革への強い意欲を見せた。

増収増益を受け、経営基盤強化に向けた次の戦略を語る代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏

訪日・第三国間が2桁成長、国内は価格高騰で足踏み

セグメント別の売上高では、旅行においてグローバル旅行の第三国間と訪日の売上高がそれぞれ同15%増の1286億円、同21%増の752億円と躍進。一方、国内旅行については、円安や物価高に伴う宿泊価格の上昇、インバウンド急増に伴う供給制約など影響し、同3%減の4246億円と前年度割れとなった。海外旅行は同9%増の2439億円だった。

旅行外では、MICE事業が9%増の860億円と高成長を維持。大阪・関西万博関連でも、入場券販売や関西方面の旅行企画、要人対応などでJTBグループの総合力で大きな事業規模へと成長した。

また、事業・領域別の売上高では、主力のツーリズム事業が同1%増の6829億円、エリアソリューション事業が同2%増の908億円、ビジネスソリューション事業が同10%増の1524億円、グローバル領域が10%増の2848億円だった。

当期のトピックスでは、ツーリズム事業の個人領域でCRM強化により、JTBトラベルメンバーが100万人増の2270万人に増加。エリアソリューション事業ではインバウンド活況を受け、アクティビティ予約プラットフォーム「JTB BÓKUN」の販売流通額が過去最高を記録した。ビジネスソリューション事業では、データ活用によるABM戦略を高度化したほか、MICE領域でベンダーマネジメントを担う部署を新設した。グローバル領域については、アジア発・欧州行きのグローバルインバウンド事業が堅調でDMC事業をけん引したほか、MICEで取扱件数・売上を伸ばした。

グローバルとデータへの集中投資、変革支えるのは人財

同グループは、長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」に向けたポートフォリオ変革の一環として、2025年度は24%だったグローバル比率を2035年度に50%に引き上げる計画を掲げている。当期は将来の成長エンジンとして3社のM&Aを完了させた。

具体的には、観光産業向け世界最大級のB2BメディアグループNorthstar Travel Groupを買収。130万人超の専門家ネットワークを活用し、グローバルマーケティング力を強化する。北米の企業イベント戦略制作会社Imprint Events Groupの買収では、イベント需要が活況な北米市場でのポジション確立をねらう。人流データ分析に強みを持つナイトレイはデータ分析スキルの内製化により、提案の可視化と収益性向上を図る考えがあり、データドリブン経営への転換を明確化した。

山北氏は、これら戦略の推進と並行し、IT・AI・デザインなどの高度専門職人財の採用を強化している点にふれ、「長期ビジョンの変革を支えるのは人材。AIと人が共存しつつ、人間の価値を改めて再定義し、新たな価値を創出していく」と強調した。

なお、当期の営業利益は同2.2%減の145億円となったが、当初計画の120億円を25億円以上、上回る着地となった。これについて、JTB取締役 常務執行役員 財務担当の沖本哲氏は、「グローバル戦略に伴うM&Aや賃金水準の上昇、新会計システム導入といった将来への先行投資を積極的に実行した」と説明する。これら戦略的なコスト増を、目的型旅行を好む価格上昇の影響を受けにくい高付加価値旅行層の旺盛な旅行意欲と、2桁成長を記録した訪日・第三国間旅行の収益が力強く下支えした格好だ。

2026年度は売上高1.2兆円超へ、中東情勢下でも高付加価値層が下支え

2026年度(2027年3月期)の通期計画は、売上高1兆2450億円(前年度比10%増)、営業利益165億円(同14%増)の増収増益を目指す。長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」に向けて、世界的な人流拡大の潮流をとらえ、高付加価値なソリューション提案による収益性の向上をねらう方針だ。

懸念される市場環境のリスクについて、山北氏は中東情勢の影響にも言及した。中東を経由する欧州方面へのフライト供給だけでなく、東南アジアをはじめとする世界各地から中東、欧州への第三国間旅行、現地での企業営業の遅れといった影響が出ているものの、「今年度予算の中にこれらを見込んでいる」と説明。長期化による追加影響は注視しつつも、現状は対応可能な範囲内であるとした。

また、燃油サーチャージや物価高についても、レジャー志向の廉価商品を好む層には旅行控えが見られる一方、目的型旅行や高価格帯の層の動きは依然として堅調だという。山北氏は、「全体として需要が大きく崩れる状況ではない」とし、ターゲットに応じた商品構成の最適化で収益を確保する考えを示した。

ストック型ビジネス比率3割へ、AIと共創する新たな産業地位

将来的な収益構造の転換も急ぐ。同グループは2035年に向けて、従来のフロー型ビジネスに加え、情報・データや会員基盤を軸としたストック型ビジネス比率を2025年度の15%から30%に増やす意向を示している。旅行業の枠を超えた収益の柱を育てることで、市況変動に強い経営体質の構築を図る。

会見の締めくくりに山北氏は、AI時代の到来における「人間」の役割について改めてこう語った。「AIと協働で人間の力をさらに高める。これが基盤として最も重要であり、人間の価値を再定義して価値を創出していく」

この変革の根底には、日本のツーリズム全体の生産性を向上させ、世界における産業としての地位を確立したいという強い想いがある。Northstar Travel Groupやナイトレイの買収で得た知性と、長年培った人の力を融合させ、JTBは持続可能な「交流創造」のトップランナーとして、日本のプレゼンス強化にも取り組む構えだ。

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