JTB決算、2期連続で売上高1兆円超、戦略的投資で減益、山北社長「グローバル領域で圧倒的ポジショニングを」

JTBは2025年3月期連結決算(2024年4月1日~2025年3月31日)で、売上高が前期比1%減の1兆733億円となり、2期連続で1兆円超となった。ただし、成長に向けた積極投資を継続し、営業経費を前期比108億円増加した結果、営業利益は51%減の149億円に半減。当期純利益は61%減の86億円となった。

決算会見で、JTB代表取締役社長の山北栄二郎氏は、営業利益は計画比で28%増であることを説明。当期の投資は、グローバル人材や高度専門人材の確保、システム刷新やDX推進、イノベーション創出など、構造改革に向けた計画通りのものであり、「当社グループの未来を築く上で不可欠。成長の原動力になると確信している」と強調した。

当期は、世界的な人流の増加を捉え、グローバルでの事業が成長。旅行部門では海外、訪日旅行、グローバルDMCを含む第三国間旅行(海外発・海外着)がいずれも増収増益となり、特に第三国間旅行の売上総利益は前期比29.6%増の233億円と過去最高となった。

さらに、パリ五輪や大阪・関西万博など、国内外の国際イベントにおける関連事業や第三国間の取り扱いが拡大。旅行外事業も旅行需要に付随し、商事部門は宿泊施設の消耗品・装備品販売が好調に推移したほか、決済領域では各種決済サービスにおける決済額が過去最高となった。MICE事業も、コロナ後に高まっている国内外の企業イベントやコンベンション需要を獲得し、売上高が2019年度比12%増の780億円にまで拡大した。

一方、国内旅行は物価高による購買の慎重化の影響を受け、減収減益に。また、コロナ対策関連の受託事業の減少が、ツーリズム領域やビジネスソリューション領域の売上高の減少に影響した。

このほか、訪日旅行の売上高は、2024年度の訪日旅行(前年同期比35%増の3885万人)ほど伸びなかった。これは、2023年度には世界水泳やバスケットボールのワールドカップなど、日本での大きな国際イベントがあり、その反動も影響しているという。

各部門、事業・領域別の売上高は以下の通り。

旅行部門合計:8343億円(9%増)

  • 国内旅行:4360億円(6%減)
  • 海外旅行:2243億円(41%増)
  • 訪日旅行:622億円(14%増)
  • 第三国間旅行(日本発着以外の旅行):1118億円(27%増)

旅行外事業合計(MICE・BPO、商事、出版等):2390億円(25%減)

事業・領域別の売上高

  • ツーリズム:6758億円(7.1%減)
  • エリアソリューション:988億円(5.3%増)
  • ビジネスソリューション:1287億円(7.9%減)
  • グローバル領域:2591億円(33.5%増)

2025年度通期は売上高20%増の1.3兆円へ、将来に向けた投資を加速

2025年度通期は、売上高1兆2980億円(2024年度比21%増)、営業利益120億円(同20%減)を目指す。当期はJTBの中期経営計画におけるフェーズ3「成長・飛躍」の初年度であり、山北氏は「売り上げを大きく伸ばす。一方で、事業構造改革と人材投資、DXの実装化など、将来に向けた先行投資を続け、事業拡大を加速させる」と説明。

特に人件費に関しては、グローバル事業の人員の増強のほか、2025年4月に平均5%の賃上げや臨時手当の設定などを実施した。2026年春に予定する本社移転にあわせたスマートワークの整備をはじめとするシステム投資も予定する。

「グローバル領域で圧倒的ポジショニングを作る」

JTBでは、今後の成長戦略の主要な取り組みの1つとして、グローバル事業を強化する。山北氏は、「3つの主要戦略を持って、圧倒的なポジショニングを作っていきたい」と意気込んだ。

事業の柱は(1)シートインコーチ(SIC:周遊バス事業)、(2)グローバルDMC、(3)ホスピタリティの3分野。

例えば、(1)SICでは、欧州とカナダでの利用者数1位を目指す。現在、欧州では、2014年に取得したヨーロッパムンドバケーションズ社が年間約17万人を扱う。2019年に取得したカナダのカルガリーツアーズ社は、ロッキー地域で高いシェアを占める。山北氏は「シートインコーチ事業では、すでに世界ナンバーワンだと思っている」と自信を示した。今後、両社の事業を拡大させ、旅行先を欧州以外の日本や東アジア、中近東などに広げる方針だ。

このほか、(2)グローバルDMCでは、欧州最大のDMCと自認するクオニイツムラーレ社とシンガポール拠点のツアーイースト社、日本のJTBグローバルマーケティング&トラベル(GMT)の3社を連携させ、欧米豪発アジア着を中心とした世界規模の取り扱いを拡大していく方針。(3)のホスピタリティ事業では、ハワイのMC&A社で米国での取り扱いトップ3を目標に据えた。JTBがグローバルで目指すポジショニングは「各セグメントでキラッと光る位置づけをとる」(山北氏)との考えだ。

JTBは現在、海外に72の連結対象会社を有する。コロナ禍は売上高は減少したが、2024年度の営業利益は過去最高の56億円となり、全営業利益の38%を占めている。

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