観光・宿泊・飲食産業のDXを一体的に推進する「第1回ホスピタリティテックEXPO」の開催発表会がおこなわれた。
同展示会は、これまでの観光・宿泊業界向け「観光DX・マーケティングEXPO」と、飲食業界向け「飲食業界向けイノベーションWeek」を統合してリニューアルするもの。2026年12月2〜4日、有明GYM-EXで来場者1万人を見込む。
展示会を新たに立ち上げるRX Japanエグゼクティブマネージャーの細野圭氏は、新たな展示会の企画に至った理由を、業界構造の変化や現場の課題に即して整理し、「いま、ホスピタリティ産業には、テクノロジーを軸にした新しい接点が必要だ」と強調した。
今、新たな展示会を立ち上げる理由とは?
展示会は「観光DX」「宿泊DX」「飲食DX」「ホスピタリティマネジメント」「人手不足・インバウンド対策」の五つのエリアで構成。細野氏は「業種ごとに分断されてきた展示会を、ホスピタリティという共通軸で再編する」と話し、来場者と出展社の双方にとって、より実務的な商談の場を提供する考えを示した。
その背景については「出展者・来場者からの強い要望」「深刻な人手不足」「デジタル化の遅れ」「急拡大する観光マーケット」という課題があったと説明する。
まず、観光・宿泊向けの「観光DX・マーケティングEXPO」と、飲食業界向けの「飲食業界イノベーションWeek」は、これまで別個に展開されてきた。しかし、現場では宿泊施設が飲食部門を併設し、観光施設が飲食サービスを提供するなど、業界の垣根は急速に低くなっている。細野氏は、「分野横断で提案できる場が必要だという要望が、出展社・来場者の双方から寄せられていた」と説明。こうした声を受け、ホスピタリティ領域に特化した新展示会として再構築する決断に至ったという。
2つ目の理由としてあげたのが、人手不足の深刻さだ。宿泊・飲食業の欠員率は全産業の中でも突出して高く、有効求人倍率も接客・給仕職で採用が極めて難しい状況にある。離職率も全産業平均11.5%に対して約18.1%に達し、休日数や有休休暇取得日数も少ないなど、労働環境の課題が複合的に絡み合っている。
3つ目に、デジタル化の遅れがある。細野氏は、宿泊業における業務デジタル化の進捗を示すデータを示し、「従業員100人以下の企業の多くが、デジタル化進捗50%未満にとどまっている」と説明した。
一方、訪日客数・消費額は急拡大しており、特にインバウンド消費の大部分は宿泊・飲食に費やされている。この点を4つ目の理由としてあげ、細野氏は、供給と需要のギャップを埋めるためにも、産業横断のDX推進の場が求められていたとし、「インバウンドに加え、国内需要も底上げされており、ホスピタリティ市場は確実に拡大している。だからこそ、いまテクノロジーを活用した競争力強化が不可欠だ」と語った。
最後に、細野氏は「皆さまにビジネスチャンスを提供したいと同時に、ホスピタリティ産業の発展と活性化に貢献したい」と語り、展示会を単なる製品紹介の場ではなく、課題解決と成長戦略を共有する場として位置づけた。ホスピタリティテックEXPOは、こうした考えのもと、商談に特化した展示構成とする方針で、2026年12月の初開催に向けて準備が進められている。
イベントの後援団体には、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本観光振興協会、日本飲食団体連合会など主要組織が並ぶ。商談特化型の展示会として設計され、カンファレンスも約30講演を予定している。
宿泊施設の現状と課題、現場のリアル
発表会では、ホテル三日月代表取締役社長CEOの満間信樹氏が、ホテル・旅館におけるテクノロジー活用の現状と課題について語った。同社でも清掃、レストラン、フロントなど多くの部門で人材確保が課題となっている。その対応として、すでに入館自動システムの導入などテクノロジー導入を進めている。2026年以降も清掃ロボットや購買システムの入れ替えなど、具体的な検討が複数進めているという。
満間氏は、宿泊施設のテクノロジー活用やDXについて、施設ごとに異なる部屋数、価格との合理性を検討のうえ、補助金の活用などの準備がポイントになると指摘。従業員の働きやすさと顧客価値を高め、現場負荷を軽減しつつサービス品質を維持する取り組みの重要性を強調した。
ホテル三日月代表取締役社長CEOの満間信樹氏
続いて、リクルート「ホットペッパーグルメ外食総研」の田中直樹氏が登壇。田中氏は、飲食シーンにおけるデジタル受容度の変化をデータに基づいて解説した。
同社による調査では、「人でなくても良い」と感じるサービスとして最も多かったのが「注文」で、「会計」、「片付け」が続いた。また、若年層ほどデジタルに抵抗がなく、女性も同様に高い受容度を示すという。人によるサービスを好む理由として挙がる「温かみ」「相談しやすさ」「交流」といった価値は、この3年で低下傾向にあり、消費者のコミュニケーションへの期待が変化している実態を紹介した。
リクルート「ホットペッパーグルメ外食総研」田中直樹氏
