パリの老舗ホテル「ル ブリストル パリ」は、2025年に創業100周年を迎えた。その記念イベントの一環として、年末にフランス国外で初の「美食コラボレーション」イベントを東京で開催した。ル ブリストル パリは、5つ星以上の最高級ホテルにのみ与えられる「パラス」の称号を最初に受けたホテルの一つ。その最高級ホテルが東京でイベントを開催した理由、同ホテルが考える富裕層旅行者について営業・マーケティング責任者のカトリーヌ・オドゥール=ボードリー氏に聞いた。
パラスホテルとは、フランス政府が5つ星より上の最高位として認定する称号。歴史的な建築美、最高水準のサービス、卓越した美食といった厳しい基準をクリアした、フランスを象徴する稀少なホテルのみに贈られる格付けだ。
日仏シェフによる食のコラボレーション
東京で開催されたイベントは、同ホテルの3つ星レストラン「エピキュール」のエグゼクティブシェフであるアルノー・ファイ氏と東京銀座のフレンチレストラン「ロオジエ」のエグゼクティブシェフであるオリヴィエ・シェニョン氏による4日間限定のコラボレーションによるもの。ファイ氏は、フランスの国家最優秀職人章(M.O.F.)を受章した名シェフだ。
イベントでは、両シェフが大切にする「味覚への敬意」「技術の継承」「職人技の美しさ」をテーマに構成された特別料理と、一流のサービスチームによるおもてなしを提供。ランチは7万円、ディナーは10万円と高額ながら、発売から3日で完売したという。
ボードリー氏によると、このイベントの準備にかけた時間は2年間。そのうえで、「ル ブリストル パリは、日本市場と長年にわたって良好な関係を築いてきた。日本人は、フランス人と同様に食(ガストロノミー)に対する関心が高く、敬意も払っている」と話し、東京でイベントを開催した背景を説明する。また、コロナ禍後、日本市場が緩やかな回復にとどまっていることから、「このイベントを回復を加速させる機会にしたい」という思いもあった。ボードリー氏は、日本滞在中、大手旅行会社やクレジットカード会社を訪れ、情報交換をおこなったという。
「ロオジエ」のオリヴィエ・シェニョン氏(中央左)と「ル ブリストル パリ」のアルノー・ファイ氏(中央右)(報道資料より)
ル ブリストル パリとは?
ル ブリストル パリは、18世紀の貴族の邸宅を改装し、1925年にホテルとして開業した。オーナーは、ドイツの富豪であるオトカー家。世界屈指のラグジュアリーホテル・コレクション「オトカー・コレクション(Oetker Collection)」の旗艦ホテルと位置付けられている。パリの中心部、高級ブランドが立ち並ぶフォーブル・サントノーレ通りに位置し、客室は190室。全てインテリアは異なり、調度品やファブリックなどはオーナーのオトカー夫人のセンスが生かされているという。
100周年を迎えるにあたってリノベーションも実施。新たなシグネチャースイートも登場した。
常連客にはフランス国内外のセレブリティも多い。ボードリー氏は「ル ブリストル パリは、個人の邸宅のようなホテルで、宿泊客もその家族のように滞在している」と話す。現地でも100周年を祝うイベントを開催したが、老舗ホテルながら、盛大なものではなく、家族の誕生日パーティーのようだったという。
ル ブリストル パリ営業・マーケティング責任者のカトリーヌ・オドゥール=ボードリー氏
パラスホテルに宿泊する富裕層
「パラス」ホテルであるル ブリストル パリの宿泊客の中心は富裕層。その富裕層の特徴の一つとして、ボードリー氏は「控えめ」と表現する。「彼らは、ル ブリストル パリに『静かなラグジュアリー滞在』を求めてくる」と話す。
そのうえで、「彼らは煌びやかな装飾などは求めていない。彼らが価値を見出すのは『本物』」と強調した。ル ブリストル パリの各部屋にはオトカー夫人の審美眼にかなった家具や調度品が備えられ、各部屋ごとにそれぞれ異なる空間が創り出されている。ボードリー氏は「ル ブリストル パリはホテルチェーンではない。それぞれの部屋で異なる体験が評価されている」という。
また、リピーターが多いことにも触れ、その理由として「ホテルスタッフのおもてなし」を挙げた。加えて、スタッフはル ブリストル パリで働くことを誇りに思っており、「それが家族を迎えるようなおもてなしを生み出している」という。そして、ホテルの住人として看板猫の「ソクラテス」が暮らしていることも、リピーターにとっては帰省するような感覚を持つ要因になっていると付け加えた。
ターゲットについては、「狙っているのはマスではなく、ニッチなマーケット。経済的に余裕のある富裕層は、世界経済の状況に関わらず、いつも旅をする」と話す。彼らは、単なる物見遊山でパリに訪れるのではなく、ル ブリストル パリでガストロノミーを楽しみ、庭園やスパ、プールなど過ごし、「静かなラグジュアリー滞在」を満喫する高品質な旅行者だ。
トラベルジャーナリスト 山田友樹



