アラスカ州の小さな村「カクトヴィク」は、北極圏国立野生生物保護区内にある唯一の集落で、巨大なホッキョクグマが集まる場所として知られている。現在、気候変動が進むなか、壮大な景色や生き物を目にすることができる「最後のチャンス」とも言われている。
ホッキョクグマがアザラシを狩る際に利用する海氷が溶け始めており、今世紀末までに、ほとんどのホッキョクグマが姿を消す可能性があると話す科学者もいる。
パンデミック時は観光客の受入れ停止
1980年代初頭までは、カクトヴィクではボートを持ち、海域に精通している人なら誰でも観光客を連れて、ホッキョクグマ観察ツアーをおこなうことができた。
2008年に連邦政府がホッキョクグマを「絶滅のおそれがある種」に指定して以来、カクトヴィクの観光は急成長した。その後、観光客の急増に伴って、連邦政府はツアーオペレーターに許可証と保険の取得を義務付ける規制を導入。しかし、これによって、村外の大手オペレーターが進出することになり、6週間のホッキョクグマ観察シーズンに人口約250人の村に多くの観光客が押し寄せる結果となった。
大手オペレーターは、フェアバンクスやアンカレッジから飛行機で日帰りツアーを催行することで、村内のホテルやレストランは使われなくなり、地元住民は限られた航空座席を観光客と奪い合う事態となった。
この状況のなか、カクトヴィクはパンデミックが発生すると観光客の受け入れを一時停止。そして、ホッキョクグマを管理する連邦政府は2021年、観光客がクマの行動に及ぼす影響や町への観光客の流入を懸念し、ボートツアーを中止した。
観光客受け入れ再開に向けて
しかし、カクトヴィクの指導者たちは、現在、こうした懸念に対処しながら、早ければ2027年にも観光産業を再開させようと米国魚類野生生物局と協議を進めている。
彼らは、村の生活様式とクマ自身を守るためのガイドラインを策定できれば、地域経済に数百万ドルの利益をもたらし、住民の新たな収入源となる可能性があるとの見解を示している。
カクトヴィクの指導者たちが求めている変更点の一つは、ホッキョクグマの近くでボートが停泊できる時間を制限すること。停泊時間が長すぎるとクマが人間に慣れてしまい、クマが餌を求めて町に迷い込んだ際に危険な状況が生じる可能性があるからだ。
カクトヴィクでのボートツアーが中止されて以降、クマは再び人間を恐れるようになったという。
アメリカ先住民観光協会のシェリー・ルパートCEOは、カクトヴィクを2泊3日の体験型観光地として売り出すことを提案した。「観光客に来てもらい、学び、私たちの人々、生活様式、文化への理解を深めて帰ってほしい」とルパート氏は話す。
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。



