外国人の所得税、課税範囲の基準となる「居住者」と「非居住者」とは?

旅行・観光ビジネスで役立つ税知識(11)

こんにちは。税理士の菊池美菜です。


グローバル化が進む昨今、旅行・観光ビジネスに携わる読者の皆さんの周りでも外国人を雇用したり、業務委託として仕事を依頼することが増えているのではないでしょうか。今回は、日本国内で外国人に仕事を依頼し、その報酬を支払った場合の所得税について整理します。

所得税は、日本の「居住者」か「非居住者」で課税範囲が異なっています。「居住者」とは、1年以上、日本に住んでいる人のことを言います。国籍は関係ありませんし、住民票の有無も関係ありません。生活の本拠地、現実に居住している場所が日本国内にあるかどうかです。極端に言えば、ホテル住まいでも1年以上日本で暮らしていれば「居住者」になります。

居住者は、「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に分かれています。「非永住者」は、日本国籍がなくて、かつ過去10年間のうち、日本に住んでいた期間の合計が5年以下の人です。「非居住者」は、居住者以外の人を言います。

「非永住者以外の居住者」は、全世界の所得について、日本の所得税が課せられます。外国の所得(国外源泉所得)について、その国の税金が課されている場合は、外国税額控除という制度があり、一定の金額を日本の所得税から差し引くことができます。

「非永住者」は、国内の所得(国内源泉所得)と、国外の所得のうち、国内払いまたは国内に送金されたものについて課税されます。「非居住者」は国内の所得についてだけ課税されます。

事例をご紹介しましょう。毎月、前月16日~当月15日までの給料を、当月25日に支払うことにしている会社の支払い対象となる外国人が出国する場合です。


4月20日に、海外支店に転勤のため出国したAさんに支払う給料の課税はどのようになりますか?

給料の支払い日である25日には、Aさんは非居住者です。25日に支払われる給料は、Aさんの3月16日~4月15日の勤務に対する給料なので国内源泉所得になります。非居住者でも、国内での所得については、日本の所得税が課税されます。非居住者に対する所得税の計算は、通常と異なる税率なので注意が必要です。


4月10日に、海外支店に転勤のため出国したBさんに支払う給料の課税はどのようになりますか?

給料の支払い日である25日には、Bさんは非居住者です。25日に支払われる給料のうち、3月16日~4月10日までの分は国内の勤務に対する給料ですが、4月11日~15日までの分は国外の勤務に対するものになります。非居住者は、国内の勤務に対する分は課税され、国外の勤務に対する給料は日本での課税はされません。

ただし、今回のケースのように、給料の計算期間の途中で非居住者になり、国内勤務と国外勤務が両方ある場合には、全体を国外勤務としてよいという規定があります。そのためBさんの4月25日の給料は、すべて国外勤務分となり、日本での課税はありません。

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