現地発着ツアー最大手「ベルトラ」永島代表が語る、アクティビティの商機と今後の展開

旅行中のアクティビティをオンライン上で販売する事業を展開するベルトラ。事業開始は2004年と、近年注目される現地ツアー予約サイトとしてはパイオニア的存在だ。

2015年1月末現在の取扱エリアは、日本を含め101カ国281都市。会員数は69万超、アクティビティ数は9000件超と、日々増える取扱いだが、代表取締役社長の永島徹三氏は「(将来的には)すべての国を取り扱いたい」と語る。さらなる拡大を目指す事業の方向性とはーー?

旅行者の旅行中の時間(タビナカ)が秘めるアクティビティ市場のポテンシャルと事業の方向性を聞いた。


▼創業から10年、ブレない事業目的

アクティビティ(体験)を第一目的とする旅の創出を

永島氏は、1990年代に自動車メーカーでマーケティング部門を指揮。旅行業界とは全く異なる環境から、“アクティビティ”に商機を見出しベルトラの創業メンバーとして参画した。そんな同氏の目線には、10年前から“アクティビティ”の大きなポテンシャルが見えていたという。

「事業目的は10年前の創業時からまったくブレていないーー」。永島氏はそう話し、パイオニアとしての挟持を示す。ベルトラが創業時から掲げてきた事業目的は、「グローバルな旅行者と世界のアクティビティが出会うオンライン・マーケットプレイスを開発し、アクティビティを第一目的とする旅行者のための市場を創造する」というもの。創業時から一言一句変わっていないという事業目的の文言の中でも、永島氏は後段の「アクティビティを第一目的とする旅行者のための市場を創造する」にこだわりがあると話す。

永島氏は、創業当時を「大手旅行会社がハワイで扱っていたオプショナルツアーは50ほどだった。それがリアル(対面販売)で売る限界だったのかもしれない。しかし、調べてみると現地には1000ほどのアクティビティがある。桁違いの規模だった」と振り返る。「そこで“オプショナルツアー”という言葉を否定して、“アクティビティ”という言葉で事業を考え始めた」。

一昔前は“アクティビティ”という表現は一般的でなく、旅行会社はパッケージに追加可能な“オプション”として現地ツアーを扱っていた。それは、付随商品的なイメージが強く、それ自体が旅の主体として考えられていないところがあった。しかし、同社は「パッケージはあくまでデスティネーション・オリエンテッドな旅行。それをアクティビティ・オリエンテッドな旅行にする(永島氏)」ことに主眼を置き、「本来の旅行者の目的は現地で何をするか」の命題を設定。その命題のもとに、パッケージ旅行からさらに成熟していく日本の旅行市場を見据えて、アクティビティにビジネスの焦点を当てた。

旅の命題を「現地で何をするか」とすれば、ハワイに行くことが目的にはならない。ベルトラの事業は「たとえば、イルカを見たいという目的があれば、世界中のイルカが見られるアクティビティを紹介していく。そこから旅が始まる(永島氏)」という発想の転換からスタートしている。そこには、成熟した市場に対するデスティネーション主体の提案でない新たな市場拡大の可能性を秘めた旅の提案がある。


▼アクティビティ1本で勝負

目標は地球上の「すべての国を取り扱う」

IMG_7542創業10年を迎え、旅行会社の経営陣だけではなく、「究極のFIT」(永島氏)である担当レベルの間でもベルトラの認知度は上がってきた。しかし、課題もまだある。

アクティビティ・オリエンテッドを目指しながら、ベルトラのサイト構成はデスティネーションが入口になっている。また、アクティビティという表現にこだわりを見せながらも、サイトの導入には「海外現地オプショナルツアー予約専門サイト」とうたっている。インターネットの検索では、まだデスティネーションが主流となっており、SEO(検索結果への最適化)対策のためだ。

1964年の海外旅行自由化からこれまで、旅行業では格安航空券、パッケージツアーなど数々のイノベーションが起こってきた。“アクティビティ”という旅行中のコンテンツが旅の動機付けになる動きをひとつの変遷とみれば、ベルトラは10年前の早い段階で新しい提案を始めたといえる。“一歩先”の提案だったといえるだろう。

アクティビティだけを取り扱うのには、それぞれの単価が低いため、薄利多売をしなければならない経営的な課題もある。そのなかで、永島氏は「さまざまな誘惑があった」と明かす。ほかの旅行サイトでも見られるように、たとえば、ホテルや航空会社の広告あるいはパッケージ情報の掲載など収益を補完する機会もあるが、「ベルトラのビジョンから外れてしまう」ことから、現在でもアクティビティ一本で勝負している。

ただ、例外として、日本人渡航者数が少ない潜在需要が隠れている国・地域との共同プロモーションには積極的に取り組んでいる。最初に手がけたのはアイルランドだ。アクティビティ・オリエンテッドなマーケットを創っていくうえで、「知られていない国も紹介していくことは我々の使命」と永島氏。たとえば、一ヶ月に一人でも日本人が行くデスティネーションでも対象にしていく。アフリカのある地域など治安上の問題がある国は除き「すべての国を取り扱う」のが目標だ。


▼変化する市場・旅行者

旅行出発前の予約が多い日本人、テクノロジーで新たな提案も

アクティビティを扱う点で旅行会社とは競合関係になるが、永島氏はベルトラの強みとして「アクティビティに特化しているところ」を挙げる。「我々はカスタマー目線で品揃えを追求していける。カスタマーセントリックを考えれば、たとえばイギリスだけでなくアイルランドもやっていくべきだろう」と話し、既存の旅行会社との違いを説明する。

旅行会社は、日本人がよく行くデスティネーションという枠組みでビジネスモデルができているためだ。ベルトラは「はじめからそこから解き放たれている」(永島氏)。だから、アルバニアやボスニア・ヘルツェゴビナやコソボのアクティビティも取り扱える。

「旅行者もここ10年で変わってきた」と永島氏。以前は出発前にアクティビティ(オプション)を予約することは少なく、ホテルのコンシェルジュやアクティビティデスク、現地での旅行会社のブリーフィングで予約が入るケースが多かった。現在では、出発前の予約は「もしかしたら世界中で日本人が一番多いかもしれない」という。それは、日本人の旅行期間が一般的に短いのが要因かもしれない。逆にアメリカ人は現地で予約を入れる比率が高いという。

今後はテクノロジーの進化にともなって、「行く前、行った後に関係なく、思いついた時にブッキングする傾向になるのではないか」と予測する。ベルトラでは、インフラやデバイスの進化にあわせて、新しいサービスも提供していきたい考えだ。


IMG_7545訪日外国人市場については、すでに英語サイトで日本のアクティビティを紹介している。立ち上げたのは2011年の東日本大震災の直後だ。日本への外国人旅行者が激減するなか、「今だからこそ日本をやろう」と発起した。当時は期待できなかったが、今ではツアー数も257(2014年12月25日現在)。予約もまとまって入るようになったという。人気は、舞妓芸者など日本のユニーク体験。英語圏以外の国からも予約が入る。

サイトの言語は日本語と英語だが、視線はグローバル。事業目的の前段「グローバルな旅行者と世界のアクティビティが出会う」もブレていない。

聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫

文:トラベルライター 山田友樹

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