ロンドンに学ぶオリンピック「遺産」の活かし方、持続可能な都市開発のヒントを聞いてきた

ロンドンのアイコンのひとつタワー・ブリッジ(イメージ)

2012年のロンドン五輪のメイン会場となったイーストロンドン。オリンピック開催前から現在、そして未来に向かって、長期ビジョンのもと再開発を進めている。その中心となる考え方は「レガシー(遺産)」。後世に続く持続可能な街づくりだ。さまざまな五輪資源を遺産としてどのように引き継いでいくのか。

個人宅宿泊のairbnb(エアビーアンドビー)を取材しながら、ロンドン五輪の足跡を訪れ、2020年の東京五輪を考えてみた。


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▼ゴミ捨て場から環境都市へ

ロンドンが取り組むビッグチャレンジ

かつてロンドンの「巨大なゴミ捨て場」と呼ばれていたイーストロンドンのストラットフォード地区。2005年のロンドン五輪開催決定を機に、ロンドンの「レガシー(遺産)」にするべくこの地区の再開発が開始され、2012年の五輪メイン会場として整備され後も、長期的なビジョンのもと、新しい街づくりを進めている。

五輪閉幕後、「クィーン・エリザベス・オリンピック・パーク」と改称。持続可能なレガシーとして内外でその取り組みは高く評価されている。

開発が進むクィーン・エリザベス・オリンピック・パーク。中央は新たなアイコンとなったオービットタワー。

このプロジェクトで中心的な役割を果たしているロンドン・レガシー・ディベロップメント・コーポレーションのコミュニティーズ&ビジネス責任者エマ・フロスト氏は、再開発の目的として、教育や経済も含めた地域社会の育成、重工業からホスピタリティー産業への転換による新たなメトロポリタンの構築、環境に配慮した先進的な都市開発の3項目を挙げる。

「いずれも、地域の人々が未来にわたって関わっていく仕組みが大切」。貧困、低教育、土壌汚染をはじめとする環境破壊に苦しんできた地域のクオリティー・オブ・ライフの向上に力を入れている。

ロンドン・レガシー・ディベロップメント・コーポレーションのコミュニティーズ&ビジネス責任者エマ・フロスト氏

新たにIT産業や教育機関を誘致するとともに、慢性的な住宅不足を解消するために、五輪で使われた選手村に加えて、新たな住宅地区も整備。巨大なショッピングモールのほか、敷地内に8つのホテルを誘致することで、MICEを含めた観光素材の開発も進めている。

フロスト氏はプロジェクトのキーワードのひとつとして「シェアという概念」を挙げ、「子供からお年寄りまで、すべての人が参加できるコミュニティーをつくり上げることを重視している」と話す。シェアリングエコノミーと地域の活性化。この関係性はairbnbのコンセプトに通底するもの。「ホストをすることで、自分の街が好きになる」(airbnb広報部APAC統括責任者のレーナ・ズニッセン氏)という考え方は、「自らが地域に関わる」という点で新しいコミュニティー形成のヒントになるかもしれない。

今後の計画としては、ビクトリア&アルバート博物館やロンドン芸術大学などと協力し、新たな学術センター「オリンピコホリス(仮)」が2021年にオープンする。最寄りのストラットフォード・インターナショナル駅には近い将来ユーロスターも乗り入れる予定。イーストロンドンの進化はまだ道半ばだ。

オリンピック・パークには巨大ショッピングモールも。

▼「日本人の当たり前を世界に」

地元の盛り上がりはインバウンドにも波及

「『謙虚さ』は日本人の美徳だが、それは時には受け身の姿勢になってしまう。2020年の東京五輪に向けて、日本人があたりまえ前と思っていることを、もっと世界に伝えていくべきだと思う」。そう話すのは、Seven46CEOのニック・バーリー氏。ロンドン、リオデジャネイロ、そして東京、3大会連続で招致を成功させた立役者。東京五輪招致では、あの「O・MO・TE・NA・SHI」を立案した人物だ。

「ロンドンと東京のレガシーは違う。東京は東京のユニークさ(個性的な部分)を打ち出していくべきだろう」。東京と日本を調べあげ、2013年9月の歓喜につなげたバーリー氏の言葉だけに重みがある。

東京五輪招致の立役者Seven46CEOのニック・バーリー氏。

バーリー氏と同様に「日本の独自性を全面に出すべき」と強調するのは、グレーター・ロンドン・オーソリティー(GLA)でカルチャー・ツーリズム・オフィサーを務めるマイク・クリューリー氏。ロンドン五輪の際、ロンドンを世界にアピールするさまざまなイベントを仕掛けた。「伝統だけでなく、モダンな文化も交えながら『これが日本だ』と伝えることが大切だと思う。特に若者を巻き込むことが重要だろう」。

五輪の成功は地元の盛り上がりが欠かせない。GLAでは、ロンドンの文化の多様性を世界に発信するため、ストーンヘンジやトラファルガー広場でのダンスイベントなどさまざまなイベントを仕掛けた。キーワードはアート&カルチャー。「ロンドンの人たちに『五輪は一生に一度の特別なこと』と伝える」(クリューリー氏)ことで、地元の熱気を創りだし、その様子をさまざまなメディアを利用して世界に発信した。

GLAカルチャー・ツーリズム・オフィサーのマイク・クリューリー氏。

その効果は、五輪期間中だけでなくその後も続いている。五輪の翌年2013年、イギリスを訪問した外国人旅行者は前年比6%増のおよそ3,300万人。そのうちロンドンへはおよそ1,600万人が訪れた。五輪のプロモーションは、そのままインバウンド旅行のプロモーションにもうまくつながり、英国経済の活性化に一役買った。

  • 取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹
  • 編集:トラベルボイス編集部

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